性犯罪の疑いで家族が逮捕されると、身体拘束された時から最大23日のあいだに、起訴するかどうかが決まります。この間、本人と会えるのは弁護士だけという状況が続くことがあります。ただし「性犯罪」という一語では、罪名も法定刑も手続の速さも決まりません。この記事は、いま家族に起きていること・何の罪の話なのか・手続がどう進むか・弁護人に何を頼めるか・見通しの何がわかって何がわからないか、これらを順に紹介します。
第1 いま、家族に何が起きているのか
まず確認していただきたいことは、家族が置かれている状況が「逮捕・任意の呼び出し・在宅」の3つのどれか、ということです。以降の手続と時間の速さは、このどれかで決まります。
逮捕された場合は、身体拘束された時から時計が動き始めます。逮捕手続きから48時間、警察が検察庁へ送致してから24時間の合計72時間の間に本人と自由に会えるのは弁護士だけです。警察からの連絡や本人の不在で事態を知り、連絡が取れないのは、この状況にあたることが多いといえます。
任意の呼び出しを受けた場合は、逮捕はされていません。警察から出頭を求める連絡(電話や置き手紙)が来ている段階です。日を指定されて話を聞かれますが、身体は拘束されていません。ただし、取調べの結果、その場で逮捕に切り替わることはあります。
在宅で捜査が進む場合は、逮捕も呼び出しもないまま、家宅捜索(ガサ)や事情聴取という形で捜査だけが動いていることになります。撮影・盗撮の疑いでは、まずスマートフォンなどの押収から始まることがあります。
3つのうち、時間の制約が厳しいのは逮捕です。ご家族が逮捕された場合に何ができるかは、家族が逮捕されたらで手続の全体を確認できます。この記事では、以降もこの逮捕された場合を軸に説明し、呼び出し・在宅の場合は必要な箇所で触れます。
第2 何の罪に問われているのか(性犯罪の罪名の特定)
性犯罪は、罪名ごとに条文も法定刑もまったく違います。見出しにある「性犯罪」だけでは、罪の重さも手続も決まりません。まず、どの罪名の話なのかを次の表で確かめてください。深掘りは各罪名の記事に譲り、ここでは全体を一覧できるように並べます。
これらの罪の多くは、令和5年(2023年)の刑法改正で再編されました。改正の核は、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という要件(困難性の要件)を軸に据えたことにあります。条文に並ぶ8つの類型(暴行・脅迫、心身の障害、アルコールや薬物、睡眠など)は、その状態を生む事情の例示であって、これだけに限られるものではありません。
| 罪名 | どんな行為か | 法定刑 |
|---|---|---|
| 不同意わいせつ罪(176条) | 8類型の事情で同意困難な状態にさせ、または乗じて、わいせつな行為をした場合 | 6月以上10年以下 |
| 不同意性交等罪(177条) | 同じ事情のもとで、性交等(挿入を伴う行為)をした場合 | 5年以上の有期 |
| 監護者わいせつ・監護者性交等罪(179条) | 18歳未満を現に監護する者が、その影響力に乗じて行った場合 | 176条・177条の例による |
| 公然わいせつ罪(174条) | 不特定または多数が認識し得る状態でわいせつな行為をした場合 | 6月以下(罰金・拘留・科料もあり) |
| 16歳未満面会要求等罪(182条) | わいせつ目的で16歳未満に面会を要求し、または映像送信を要求した場合 | 1年以下(項により異なる) |
| 撮影罪(撮影処罰法2条) | ひそかな盗撮など、性的な姿態を正当な理由なく撮影した場合 | 3年以下(または300万円以下の罰金) |
表を縦に見ると、法定刑の幅が罪名で大きく開いていることがわかります。不同意性交等罪は5年以上の有期拘禁刑という重い刑で、公然わいせつ罪や撮影罪とは重さの層が異なります。だからこそ、まずどの罪名なのかを確かめることが、見通しの出発点になります。
いくつか補足します。監護者わいせつ・監護者性交等罪は、18歳未満の相手を「現に監護する者」が、その影響力に乗じたことを要件とします。したがって、対象は親権者や養親などに限られ、教師やスポーツの指導者は、監護する者にあたらないため原則含まれません。
16歳未満面会要求等罪(182条)は、項ごとに刑が分かれます。わいせつ目的の面会要求が1年以下、実際に面会に至った場合が2年以下、映像の送信を要求した行為(いわゆる自画撮り要求)が1年以下です。令和5年の改正で新しく設けられた類型です。
撮影罪(撮影処罰法2条)が対象とするのは、性的な部位や下着など「性的姿態等」の撮影です。これも令和5年に施行された新しい法律です。着衣の上から触れる行為が迷惑防止条例違反にあたるのか、より重い罪にあたるのかは、行為の態様で分かれます。なお、これらの罪は未遂でも処罰され、被害者が特定されている必要もありません。
第3 これからどう進み、いつ会えるのか
逮捕された場合、起訴するか・しないかが決まるまでの時間には、条文で上限が定められています。まず、その時間の流れを条文に沿って確かめます。
警察は、逮捕したときは、身体を拘束した時から48時間以内に、書類や証拠物とともに被疑者を検察官に送る手続をとります(刑事訴訟法203条1項)。送致を受けた検察官は、被疑者の身柄を受け取った時から24時間以内に、裁判官に勾留を請求します。ただし、この時間は身体を拘束した時から72時間を超えることができません(同法205条1項・2項)。
勾留は、裁判官の決定で被疑者を留置する手続です。請求を受けた裁判官は、勾留の理由がないと認めれば勾留状を発せず、直ちに釈放を命じます(同法207条5項)。
勾留すると決まった場合、期間は勾留請求の日から原則10日間です。やむを得ない事由があると認められると、通じて10日を超えない範囲で延長されます(同法208条1項・2項)。ここまでを足すと、身体拘束から起訴・不起訴の判断まで、最大23日という長さになります。
勾留の要件は、条文で定められています。罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、次の①から③のいずれかにあたることです(同法60条1項)。①住居が定まっていない、②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある、③逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある、の3つです。定まった住居があり、被害者と面識のない事件では、②と③が主な争点になります。
この期間、家族との面会が止まることがあります。裁判所は、逃亡や罪証隠滅を疑う相当な理由があるとき、勾留されている本人と一定の範囲の人との接見を禁じることができます(同法81条)。これが接見等禁止の決定で、性犯罪でも付くことがあります。
ただし、条文は接見禁止の対象を「第三十九条第一項に規定する者以外の者」と定めています。弁護人はこの39条1項に規定する者にあたるため、接見禁止の決定があっても、弁護人は本人に会えます。
身体事件の流れそのものは身柄事件の流れで、勾留の中身は勾留で、接見禁止の詳細は接見禁止で、それぞれさらに確認できます。
第4 この段階で弁護人ができること
前の章で見たとおり、接見禁止の決定があっても、弁護人は本人に会えます。この立場を使って、弁護人はこの段階で主に3つのことを行います。結果を約束するものではなく、制度としてできることの説明です。
1つ目は、本人との接見です。身体の拘束を受けている本人は、弁護人と立会人なしで会うことができます(刑事訴訟法39条1項)。検察官などは、捜査のため必要があるときに接見の日時などを指定できます。ただし、それは本人が防御の準備をする権利を不当に制限するものであってはなりません(同法39条3項)。弁護人は、この接見を通じて本人の様子を確かめ、取調べへの対応を助言し、家族に状況を伝えます。逮捕直後の初回接見は、この最初の接触にあたります。
2つ目は、勾留を止める・短くするための働きかけです。勾留の要件は先に見た60条1項で、その中心は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の有無にあります。弁護人は、この要件を条文どおりに検討し、住居が定まっていること・証拠隠滅の現実的な可能性が乏しいことなどを、裁判官への意見書や面談で主張します。勾留の決定が出た後でも、その取消しや変更を求める不服申立て(準抗告)という手段があります。
3つ目は、被害者への対応の初動です。性犯罪では、被害者との示談が問題になることがあります。弁護人は、本人と相談したうえで、被害者側の意向を尊重しながら謝罪や被害弁償の申し入れを検討します。ただし、被害者の連絡先を捜査機関から得られるかどうか、応じてもらえるかどうかは、相手の意向によります。ここでの弁護活動は、本人が自分の責任にどう向き合うかを支える初動であって、結果を保証するものではありません。
弁護人への依頼にかかる費用は、弁護士費用で確認できます。
第5 見通しは立つのか
ここで区別していただきたいのは、量刑の「傾向」と、あなたの家族の「結論」は別物だということです。傾向は参考にできても、個別の結論は検察官・裁判官の判断であり、弁護士にも断定できません。
その傾向も、罪名ごとに分けて見る必要があります。第2で確かめた罪名を出発点に、量刑の見通しはその罪名の枠内で個別に検討します。罪名ごとの量刑の考え方は、順次、各罪名の記事で扱う予定です。
罪名ごとの法定刑は、第2で見たとおり条文で定まっています。ここは断定できる部分です。これに対し、実際にどの程度の刑になるか、起訴されるか・されないかは、事件ごとの事情によって決まります。被害の程度、本人が事実を認めているかどうか、被害者との示談ができているか、前科があるかといった事情が、その判断に影響します。
示談についていえば、被害の回復が全部できた場合に、実刑を避ける方向に働きうる事情のひとつとして扱われます。もっとも、示談の成立と不起訴とが、そのままつながる関係にあるわけではありません。
過去の裁判例の傾向を数値で示すことは、この記事ではしません。数値を出さない理由は、次の2点です。
① 令和5年の改正で罪名そのものが再編されたため、改正後の量刑がどう分布しているかを示す信頼できる統計が、まだ整っていません。改正前の罪名(強制わいせつ罪・強姦罪)を対象とした研究はあります。ただし、それを改正後の不同意わいせつ罪・不同意性交等罪にそのまま当てはめるのは、当てはめの範囲を超えます。
② 数字の出典の問題があります。法律事務所などが載せる「勾留率○%」といった数字の多くは、公的統計のどの表にあたるのかを確かめられません。そのため、当事務所ではこうした数字を使わないことにしています。
最終的な処分は、検察官・裁判官の判断にゆだねられます。ここから先は弁護士にも断定できない、というのが正直なところです。だからこそ、確かに定まっている条文の仕組みと、いま動いている時間を押さえたうえで、次の一手を決めることが出発点になります。
第6 よくある質問
前科はつきますか。
有罪の判決が確定すれば前科になりますが、不起訴や起訴猶予で終われば前科はつきません。どちらの結論になるかは検察官の判断によるもので、この記事から断定することはできません。前科そのものの意味や影響については、前科がつくとどうなるかで扱っています。
会社や家族に知られますか。
逮捕された事実が、自動的に勤務先へ通知される仕組みはありません。ただし、報道されたり、在宅捜査の態様によって周囲に伝わったりすることはあります。どう対応するかは、弁護人が本人と相談したうえで検討します。ここでも結果を約束できるものではありません。
本人は「やっていない」と言っています。否認したい場合はどうなりますか。
否認する事件でも、本人には黙秘権があり、弁護人は取調べにどう対応するかを助言します。事実を認めるか否認するかで初動は変わりますが、その先の対応は罪名や事件の内容によって異なります。事実がどうであったかの認定は、最終的に捜査機関・裁判所にゆだねられます。
家族の私が、本人に差し入れや面会をできますか。
接見禁止の決定が付いている場合、家族の面会や手紙のやり取りが制限されることがあります(刑事訴訟法81条)。もっとも、弁護人は接見できるため、弁護人を通じて本人の様子を確認できます。差し入れができるかどうかは、留置している施設や決定の内容によります。
第7 本記事の前提と更新
本記事は2026年7月時点の法令・運用に基づきます。判例・法改正に応じて随時更新します。
性犯罪に関するご相談は、当事務所でも受けています。相談の方法と費用は、弁護士費用のご案内をご覧ください。
参考文献
- 藤井敏明「『罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由』について」日本大学法科大学院「法務研究」第22号(2025年3月)21頁以下、全16頁
- 河原俊也「勾留の要件」別冊ジュリストNo.267『刑事訴訟法判例百選〔第11版〕』(有斐閣、2024年3月30日)14番
- 市川哲宏(愛知県弁護士会)「犯罪類型ごとの傾向分析」準抗告事例分析集 第1部第9章
- 城祐一郎『性犯罪捜査全書 理論と実務の詳解』(立花書房、2021年)
- 柴田守「性犯罪の刑期判断基準に関する定量的研究」「変数増減法を用いた性犯罪の執行猶予の選択基準に関する量刑予測モデル」
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