接見等禁止とは|家族が会えない時の解除手続を弁護士が解説
家族との面会を閉ざされたとき
ご家族が逮捕されたあと、勾留決定とともに「接見等禁止」が付されることがあります。決定が出ると、本人と会うことも、手紙や差入れも、原則としてできなくなります。
「警察署まで行ったのに、面会できないと言われた」「拘置所から戻された手紙が手元にある」――そうしたご相談を、当事務所でもよくいただきます。
接見等禁止は、最高裁の統計上、2024年には全勾留事件の約47%に付されており、過去20年で歴史的に高い水準にあります(日弁連『弁護士白書 2025年版』105頁による)。共犯事件や否認・黙秘の事案では半ば自動的に付される運用が続いており、家族の生活が突然遮断される事態は決して稀ではありません。
この記事では、刑事事件に注力する弁護士が、接見等禁止の条文構造、付される典型例、そして準抗告・一部解除・抗告という対抗手段を、家族目線で順に解説します。最後に、当事務所の弁護人としての考え方もお伝えします。
接見等禁止とは何か
刑事訴訟法81条の基本構造
接見等禁止は、刑事訴訟法81条を根拠とする裁判所の決定です。条文の趣旨を平易に整理すると、次のとおりです。
裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と弁護人以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
ポイントを噛み砕くと、次の3点になります。
- 対象は弁護人以外の者との接見――家族・友人・職場関係者などとの面会と書類授受が制限される
- 要件は「逃亡又は罪証隠滅のおそれ」――勾留と同じ要件のように見えるが、後述のとおり勾留より強度のおそれが必要と解されている
- 検察官の請求または裁判所の職権で発令される
なお、この条文は被告人(起訴後)について規定するものですが、被疑者段階(起訴前)にも刑事訴訟法207条1項を通じて準用されます。実務上は被疑者段階で付されるケースが圧倒的多数です。
弁護人との接見は対象外
ここが家族にとって重要な点です。接見等禁止は、弁護人(および弁護人になろうとする弁護士)との接見には及びません。刑事訴訟法39条1項が、弁護人と被疑者・被告人の接見交通権を独立に保障しているためです。
つまり、家族が会えない状況でも、弁護士は本人に会えます。手紙や書類のやり取りも、弁護人を介する限りでは自由に行えます。後述するように、これは家族にとって大きな意味を持ちます。
制限される行為の範囲
接見等禁止決定が出ると、決定文で個別に除外された人・物以外は、以下がすべてできなくなります。
- 面会(接見)――家族・親族・友人・恋人・職場関係者など
- 書類の授受――手紙、写真、メモ、書面など
- 物の授受――差入れ・宅下げの両方向
- 検閲――裁判所が書類等を確認し、不適切と判断したものを差し押さえることも可能
ただし、「糧食の授受」は除外できません(81条但書)。また、実務上は「書込みのない公刊された書籍・雑誌・新聞」が除外物として明記される定型運用が定着しています。
接見等禁止の現状と統計
接見等禁止が「どの程度の頻度で付されているか」を、最新の公的統計で確認しておきます。
決定数・決定率の推移
日弁連『弁護士白書 2025年版』105頁(資料2-1-1-11、2-1-1-12)に掲載された最高裁提供資料および各年『検察統計年報』をもとに、近年の数値を整理すると次のようになります。
| 年 | 接見等禁止決定数 | 勾留中の決定率 |
|---|---|---|
| 2004年 | 52,154件(ピーク) | 36.9% |
| 2009年 | 39,039件 | 32.5%(最低) |
| 2014年 | 36,178件 | 33.9% |
| 2019年 | 34,858件 | 38.6% |
| 2024年 | 42,883件 | 46.9%(歴史的高水準) |
出典:日弁連『弁護士白書 2025年版』105頁
この数字が示す3つの傾向
第一に、決定率は2009年の32.5%を底に、15年で約1.5倍まで上昇しています。件数自体は2004年がピークでしたが、これは勾留全体の母数が減ったためで、「勾留されたら接見等禁止が付く確率」は近年むしろ高まり続けています。
第二に、2019年から2024年の5年間で件数が約23%増、決定率が8.3ポイント上昇しました。直近の伸び方が際立っており、現場の弁護人としても体感と一致します。
第三に、諸外国との比較です。比較法的に見て、接見等禁止のような外部交通遮断を一般人に対して長期間行う制度は、世界的にも例が少ないとされています(『別冊判例タイムズ34号』220頁ほか)。ドイツ・フランス・イタリアには同様の条文がなく、韓国の類似規定も死文化していると報告されています。
地域差と運用の偏り
高裁管内別の決定人員にも相当な地域差があることが指摘されています(前掲・弁護士白書)。同じ罪名・同じ態様の事件でも、東京・大阪と地方とで運用の温度が違うことは、実務上もしばしば経験するところです。
数字だけを見れば、「接見等禁止は例外的に付されるもの」という条文の建付けと、「半数近くに付されている」という運用の実態には大きな乖離があります。ご家族が突然面会を遮断されたとき、それは決して特殊な事件に限られた話ではないということは、まず押さえておく必要があります。
接見等禁止が付される典型ケース
実務上、接見等禁止の請求は次のような事件類型でほぼ定型的になされています。
1. 共犯事件
共犯者がいる事件では、口裏合わせや証拠隠滅の懸念が類型的に指摘されます。覚醒剤事犯、組織的詐欺、住居侵入窃盗グループ、特殊詐欺の受け子・出し子事件など、共犯構造を持つ事件は実務上ほぼ自動的に請求されています。
2. 否認事件
被疑者が事実関係を否認している場合、捜査機関は「外部からの働きかけで証言を歪める恐れがある」として接見等禁止を求めます。冤罪を主張している被疑者にとって、家族との連絡まで断たれることは精神的負担が極めて大きくなります。
3. 黙秘事件
弁護人の助言を受けて完全黙秘を貫いている場合も、捜査側は同様の理由で接見等禁止を請求する傾向があります。黙秘自体は被疑者の正当な権利ですが、これを理由に接見等禁止が付されると、被疑者は心理的に追い込まれやすくなります。
4. 暴力団・組織犯罪関係事件
暴力団員・準構成員、半グレ組織、その他の組織犯罪関係者については、組織からの働きかけや指示が想定されることから、ほぼ例外なく接見等禁止が付されます。
5. 経済事犯
特別背任、業務上横領、大型詐欺などの経済事犯では、関係者が多岐にわたり証拠書類も大量に存在するため、接見等禁止が請求される傾向にあります。
6. 特捜事件
検察特捜部が手がける贈収賄、政治資金規正法違反、金融商品取引法違反等の事件では、関係者間の口裏合わせ防止を理由として、長期間の接見等禁止が継続されることが一般的です。
「ほぼ自動的に付される」運用への懸念
これらの類型では、検察官の請求があれば裁判官がほぼ自動的に決定する運用が定着しているとの指摘があります。本来、接見等禁止は「極めて慎重に、最小限度の運営にとどめるべき」と古い裁判例が明示していたものですが(大阪地決昭和34年2月17日下刑集1巻2号496頁)、近時の運用はその指摘から距離が生じてきました。
実務上の感覚としては、「勾留が決まったら、共犯がある事件なら接見等禁止もセットで付く」と整理せざるを得ない場面が多くあります。だからこそ、付された後にいかに早く対抗手段を組み立てるかが、家族目線では決定的な意味を持ちます。
起訴前と起訴後の運用
条文の建付け
接見等禁止は、本来「起訴前の捜査段階」に重点を置いた制度です。捜査が進行中で、証拠が確定していない段階での罪証隠滅を防ぐ趣旨があります。
これに対し、起訴後は理論上、接見等禁止の必要性は低下すると解されています。検察官が公訴を提起する以上、立証に必要な証拠は基本的に収集済みのはずだからです。学説でも、「起訴後の接見等禁止は、被疑者段階よりさらに強度の罪証隠滅のおそれが必要」と整理されています(『別冊判例タイムズ34号』222頁)。
罪証隠滅のおそれの「強度」
弁護人として準抗告等で争うときに核となるのが、刑事訴訟法81条の「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」の解釈です。同条の文言は刑事訴訟法60条1項2号の勾留要件と同一ですが、両者を同じ基準で運用すれば、勾留が許可されればほぼ自動的に接見等禁止も付くという結論になります。
学説および古い裁判例は、刑事訴訟法81条の罪証隠滅のおそれは「被疑者の身体を拘束しただけでは防止できない強度の罪証隠滅のおそれ」と解してきました(『新版令状基本問題』251~252頁ほか)。これは、勾留要件よりも一段高い基準を求めるという理解です。
最高裁も近年、最決平成31年3月13日集刑325号83頁において「接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれ」という表現を用い、罪証隠滅のおそれが具体的・実効的なものでなければならないことを示しました。同決定は接見等禁止の判断基準について重要な指針となっており、家族・関係者の接見が「実効的」な罪証隠滅をもたらすと言える具体的事情の有無が、現在の争点設定の中心になります。
実務上の継続運用
しかし実務では、起訴後も第1回公判期日までは接見等禁止が継続されることが多く見られます。さらに、第1回公判後にも引き続き付される事件、終期の限定がなく取消されるまで続くケース、控訴審段階で改めて付されるケースなど、運用は条文趣旨から離れる方向で広がってきました。
被告人が裁判の当事者として防御の準備をする権利、情状証人となる家族と打ち合わせる必要性、精神的安定の重要性などを考えると、起訴後の継続には慎重さが求められます。古くは大阪地決昭和34年2月17日下刑集1巻2号496頁が「極めて慎重に、最小限度の運営にとどめるべきことはいうまでもない」と判示しており、本来の運用イメージが端的に示されています。
接見等禁止決定への対抗手段
接見等禁止が付されてしまった後でも、家族が「もう何もできない」わけではありません。弁護人を通じて、複数の対抗手段を講じることができます。
対抗手段の全体像
| 手段 | 根拠条文 | 適用場面 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 準抗告 | 刑訴法429条1項2号 | 起訴前~第1回公判前 | 決定の違法性を裁判所に争う/理由付け必要 |
| 一部解除申立て | 刑訴法81条(職権発動促進) | いつでも | 職権発動を求めるもの/却下に不服申立て不可 |
| 抗告 | 刑訴法419条 | 第1回公判後 | 控訴審に準じた手続 |
| 特別抗告 | 刑訴法433条 | 準抗告・抗告の棄却後 | 憲法違反等を理由とする最後の手段 |
1. 準抗告(刑訴法429条1項2号)
準抗告は、勾留や接見等禁止に関する裁判官の決定の取消・変更を、合議体の裁判所に請求する手続です(刑事訴訟法429条1項2号)。
実務上、接見等禁止を争うときはまず準抗告を行うのが原則とされています。理由は、以下のような利点があるためです。
- 裁判所は決定に理由を付さねばならない
- 特別抗告の道が開かれる(後述)
- 主位的・予備的請求を組み合わせられる(例:主位的に全部取消、予備的に妻のみ解除)
- 文書差入れだけを求める準抗告など、柔軟な構成が可能
書面で「罪証隠滅のおそれが存在しないこと」「仮に存在しても勾留で足りること」「相当性を欠くこと」を具体的に主張し、決定後の事情変化も併せて指摘していきます。
2. 一部解除申立て
一部解除申立ては、決定全体を維持したまま、「妻だけ」「両親だけ」「特定の期日だけ」など、部分的な解除を裁判所に求めるものです。
ただし、これは法律上の不服申立てではなく、裁判所の職権発動を促す性質にとどまります。最決平成7年3月6日集刑265号461頁は、職権不発動に対する不服申立ては認められないとしています。却下されても理由は示されず、再度準抗告等で争うこともできません。
加えて、文書の一部解除を申し立てる場合は、文書の写しを添付する必要があり、これが検察官にも開示されてしまうという構造的問題があります。捜査側に手の内を晒すことになるため、文書の一部解除申立ては慎重に判断する場面が多くなります。
実務的には、一部解除は準抗告が棄却された後の補助的手段として、「妻について日時を限定して面会を認めてもらう」「期日指定で両親の面会を実現する」といった形で活用するのが現実的です。
3. 抗告(刑訴法419条)
第1回公判期日後に新たに接見等禁止が付された場合、または継続している決定を争う場合は、抗告(刑事訴訟法419条)の手続によります。準抗告と同様、決定の違法性・不当性を裁判所に争うものです。
裁判の進行状況を踏まえつつ、節目ごとに繰り返し申立てを検討する場面もあります。
4. 特別抗告(刑訴法433条)
準抗告や抗告が棄却された場合、最高裁に特別抗告を申し立てることができます(刑事訴訟法433条1項)。理由は、憲法違反または憲法解釈の誤りに限られます。
接見等禁止については、一般面会の自由が憲法21条・13条により保障される精神的自由であるとの議論があり(よど号ハイジャック記事抹消事件・最大判昭和58年6月22日民集37巻5号793頁の趣旨参照)、これに反する違憲・違法を主張する余地があります。
実際に、最決平成31年3月13日集刑325号83頁は、責任能力が争点となった傷害致死被告事件で、公判前整理手続中に弁護人が協力医との面会を求めた事案について、特別抗告を受けて原決定を破棄差戻ししました。同決定は、「連日的な集中審理の公判に向けた準備を行う必要性が高い」と防御権への配慮を示しており、その後の実務にも影響を与えています。
どの順序で打つか――戦略の考え方
家族目線で「どれから始めるべきか」を整理すると、次のような考え方が基本になります。
- 第一手は準抗告――決定理由を引き出し、特別抗告の道も残せる
- 準抗告で全部取消を狙う――主位的請求として組み立て、家族全員の解除を試みる
- 予備的に主要な家族の解除を求める――配偶者・実子・両親などの個別解除を併記
- 棄却された場合、一部解除を機動的に重ねる――期日指定で具体的な必要性を訴える
- 第1回公判後も継続するときは抗告――公判進行に応じた事情変化を主張
- 節目で特別抗告も検討――憲法上の主張を整理し、最高裁に問う
この順序は事件の重さや家族の事情で柔軟に組み替えますが、「最初に一部解除を出して様子を見る」より、「準抗告で全体を争いつつ予備的に解除を求める」方が、結果的に解除範囲が広がる傾向があります。
一部解除が認められやすいケース
準抗告で全部取消が難しい事件でも、特定の関係者・期日に限定した一部解除であれば認められやすい運用があります。家族目線で関心の高いケースを整理します。
1. 配偶者(妻・夫)
夫婦の一方が逮捕されたとき、配偶者との面会は、家族生活の維持や情状の観点で特別な意味を持ちます。経済的な相談、住居・子どもの問題、職場対応など、配偶者でなければ判断できない事項が多くあります。
実務上、共犯関係になく、事件への関与もない配偶者については、期日指定や時間指定付きで一部解除が認められる例が比較的多く見られます。
2. 実子(未成年の子)
被疑者・被告人に未成年の子がいる場合、子の精神的安定の観点から面会の必要性が高まります。とくに乳幼児や小学生の子については、長期にわたる父母不在が成長に与える影響を考慮した運用も見られます。
3. 両親(実父・実母)
高齢の両親が体調を崩している、入院している、危篤であるといった事情があるときは、一部解除が認められる可能性があります。診断書や入院証明書を添付して具体的に主張することが効果的です。
4. 期日指定の解除
「父親の○○のため、○月○日○時から1時間に限り」「祖父の葬儀のため、○月○日に限り」といった期日指定の一部解除は、事情が具体的かつ短期間に限定されることから、認められやすい類型です。
弁護人が裁判所に申し立てる際は、解除の必要性、対象範囲の限定性、罪証隠滅のおそれが及ばないことを、書面で具体的に示していきます。
5. 認められにくい類型
逆に、一部解除が認められにくいのは、次のような場合です。
- 共犯者と接触可能性のある人物――事件関係者と接点を持つ親族・友人など
- 被害者と接触可能性のある人物――示談交渉以外で被害者の周辺に近い関係者
- 事件への関与が疑われる人物――情報提供者、目撃者となり得る者など
- 本人と通じて口裏合わせができる人物――同種事件の経験者、組織関係者
これらの類型でも、関与の程度・接触の可能性・面会内容の限定性などを丁寧に主張すれば、検討の余地は残ります。「すべて駄目」ではなく、「この人については難しいが、別の人なら可能性がある」という整理を弁護人と相談しながら進めるのが現実的です。
補助的な手段:勾留理由開示の活用
接見等禁止が付されているなかで、勾留理由開示公判(刑事訴訟法82条以下)の請求も補助的に検討されます。勾留理由開示は公開の法廷で行われるため、傍聴席に家族が入ることで、本人と同じ法廷空間に身を置けます。直接の会話は許されないものの、姿を見て、声を聞く機会となり得ます。事件によっては、これが家族にとって大きな意味を持つこともあります。
弁護人の役割
接見等禁止が付された事件における弁護人の役割は、家族の方が想像される以上に幅広いものです。家族目線で重要なポイントを整理します。
1. 弁護人は接見等禁止の対象外
繰り返しになりますが、刑事訴訟法81条は「弁護人以外の者」との接見・授受を制限するものです。弁護人は本人にいつでも会え、書類・物の授受も自由です(同法39条1項)。
つまり、ご家族が直接面会できなくても、
- 弁護人を通じて本人の状況を聞くことができる
- 弁護人を通じて伝言を伝えることができる
- 弁護人を通じて手紙や写真を届けることができる(内容のスクリーニングは必要)
- 本人の体調や食事の様子を弁護人から把握できる
という形で、間接的にではあれ「つながり」を保つことができます。
2. 準抗告・一部解除の戦略立案
どのタイミングで準抗告を打つか、誰について一部解除を求めるか、どの期日を指定するか――これらは事件の進行状況、捜査機関の動き、本人の意向を踏まえた戦略判断が必要です。
「とりあえず一部解除」ではなく、準抗告で全体を争う方が筋が通る事件もあれば、現実的な一部解除を積み重ねるべき事件もあります。弁護人は事件全体を見渡したうえで、ご家族と相談しながら手段を組み立てます。
3. 職権発動の促進
裁判所に対し、罪証隠滅のおそれが減少した事情、家族関係の特殊性、本人の精神状態などを継続的に伝え、職権発動を促す活動も弁護人の重要な役割です。
書面の積み上げ、必要に応じた面談、捜査の進捗を踏まえた事情変化の指摘――こうした地道な活動が、最終的な解除につながることがあります。
4. 接見現場での対応
留置施設で文書授受が拒否された場合、弁護人がその場で抗議し、是正を求めることもあります。第2次大崎事件で評価されたのは、まさにこうした現場での粘り強い対応でした。
接見等禁止が付された事件こそ、弁護人の選任が早ければ早いほど、被疑者・被告人と家族の双方にとって大きな意味を持ちます。
弁護人を介する伝言の運用
弁護人が本人との接見で得た情報・家族からの伝言の取り扱いは、弁護士倫理および接見等禁止の趣旨を踏まえた整理が求められます。当事務所の運用として典型的に意識しているのは、次のような区分です。
| 内容 | 伝達可否 |
|---|---|
| 本人の体調・精神状態・食事の様子 | 家族へ伝達可 |
| 子どもの様子・家族の近況・生活情報 | 本人へ伝達可 |
| 仕事先・職場対応の必要事項 | 状況に応じて整理して伝達 |
| 事件の事実関係・証拠に関する事項 | 共犯者連絡や口裏合わせ媒介に当たる場合は遮断 |
| 被害者への謝罪意向 | 弁護人と相談のうえ、適切な経路で対応 |
「家族のつながりは保ちつつ、捜査の適正を害さない」――この線引きを、弁護人は事件ごとに丁寧に判断していきます。家族の側も「これは伝えても良いか」と弁護人に相談するのが安心です。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 接見等禁止が付くと、いつまで会えませんか
接見等禁止の終期は決定文に記載されます。多くは「第1回公判期日まで」とされますが、事件によっては起訴後も継続されたり、終期の限定がない決定もあります。準抗告や一部解除によって短縮・解除を目指すのが基本です。
Q2. 手紙も一切送れないのですか
接見等禁止が付されると、家族から本人への手紙、本人から家族への手紙の両方が、原則として制限されます。ただし、弁護人を介する書類・写真のやり取りは可能です。詳細は弁護人にご相談ください。
Q3. 差入れは何ができますか
「糧食の授受」と「書込みのない公刊された書籍・雑誌・新聞」は、決定文の定型運用で除外されていることが多くあります。下着・タオル・現金などは、決定の内容と施設の運用によります。施設で確認するか、弁護人を通じて取扱いを把握するのが確実です。
Q4. 接見等禁止は解除されますか
決定後の事情変化(捜査の進展、共犯者の取調状況、本人の供述態度の変化など)を踏まえ、準抗告や一部解除で解除に至る事件は実際にあります。とくに配偶者・実子・両親については、期日指定や時間指定での一部解除が認められやすい運用です。
Q5. 接見等禁止に対して家族から直接動けることはありますか
接見等禁止に対する不服申立ては、被疑者本人または弁護人が行います。家族が直接申立人となることは、制度上想定されていません。そのため、まずは弁護人を選任し、家族の事情・希望を弁護人を通じて裁判所に伝えてもらう流れが現実的です。
Q6. 国選弁護人でも準抗告はしてもらえますか
国選弁護人も私選弁護人と同様に、接見等禁止に対する準抗告・一部解除等を行う職責があります。ただし、対応の積極性や戦略の組み立て方は弁護人によって幅があります。事件の重要性に応じて、私選への切替えを検討する場面もあります。
Q7. 共犯がいる事件で家族が会える可能性はありますか
家族が共犯関係にない、事件関係者でない、事件内容について何ら知るところがないといった事情を具体的に示せれば、一部解除の余地はあります。家族が情状証人となる予定で、本人と打ち合わせる必要があるといった防御上の必要性も、有力な主張材料となります。
Q8. 弁護人を通じて本人に何を伝えられますか
一般論として、事件と無関係な家族の近況、健康状態、家計・住居の状況、子どもの様子などは伝言可能です。事件の証拠隠滅につながる内容や、共犯者との連絡を媒介する内容は、弁護士倫理上も弁護人が遮断します。本人の精神的安定に資する内容を中心に、弁護人と相談しながら伝言を組み立てていきます。
関連記事
接見等禁止について理解を深めていただくため、関連するレナトス法律事務所の解説記事もあわせてご参照ください。
- 逮捕から判決までの流れ ― 刑事手続全体の流れを把握する
- 初回接見|家族にできる最初の一歩 ― 弁護士による初回接見の意義と内容
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- 保釈 ― 起訴後の身柄解放手続
ご家族の時間を、もう一度動かすために
接見等禁止は、本人だけでなく、ご家族の時間も一緒に止めてしまう決定です。「会えない」「話せない」「何が起きているか分からない」という状態は、日数が積み重なるほど、ご家族の心と生活を確実にすり減らしていきます。
しかし、ここまでご説明してきたとおり、接見等禁止は決して動かせない決定ではありません。準抗告で全体を争う、一部解除で配偶者・実子・両親の面会を取り戻す、抗告・特別抗告で上級審に問い直す――いくつもの手段が、制度として用意されています。そして、弁護人を選任した時点から、ご家族は本人とのつながりを取り戻し始めることができます。
レナトス法律事務所は、犯罪被害や交通事故、刑事事件で止まった時間を、ご本人・ご家族とともに再び動かすための援助を理念としています。接見等禁止が付されたご家族の事案について、刑事事件に注力する弁護士が対応します。お一人で抱え込まずに、まずはご相談ください。
本記事は2026年5月時点の弁護方針および公的統計に基づく解説です。法令改正・新たな判例の蓄積に応じて、随時更新してまいります。
参考文献
- 日本弁護士連合会『弁護士白書 2025年版』(2025年)105頁
- 『別冊判例タイムズ34号』(2012年)
- 『新版令状基本問題』(一粒社)251頁~252頁
- 『接見交通権マニュアル20版』(日本評論社)194頁以下
- 木下昌彦「接見禁止と接見の自由――よど号ハイジャック記事抹消事件判決を起点とした一試論」(『憲法的刑事弁護――弁護士高野隆の実践』日本評論社、所収)111頁以下
- 中川孝博「最決平31・3・13の意義と射程」『季刊刑事弁護』99号78頁
- 最大判昭和58年6月22日民集37巻5号793頁(よど号ハイジャック記事抹消事件)
- 最決平成7年3月6日集刑265号461頁
- 最決平成31年3月13日集刑325号83頁
- 大阪地決昭和34年2月17日下刑集1巻2号496頁
- 国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール、2015年改訂)
- 国連被拘禁者保護原則(1988年12月9日国連総会決議43/173)
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