さいたまの事件の保釈は、さいたま地方裁判所(本庁は浦和)で手続が動きます。保釈は、起訴された後に、勾留されている被告人を保証金と引きかえに釈放する制度で、認められるかどうかの判断基準は全国どこでも同じです。ただし、請求を受けて手続を進めるのは、事件が起訴された裁判所です。この記事は、判断基準と手続の現場という二つに分けて、さいたま地裁での保釈の進み方を説明します。
第1 保釈の判断基準は全国共通、手続の現場はさいたま地方裁判所
保釈を認めてよいかどうかの判断基準は、全国どこの裁判所でも同じです。その基準は刑事訴訟法が定めており、さいたま地方裁判所だけに通用する特別なルールはありません。保釈は、身柄の拘束から解放される手段のうち、起訴された後に使えるものにあたります。さいたまの事件だからといって、保釈が特別に通りやすい、または通りにくいということもありません。
保釈には3つの種類があります。
- 権利保釈(89条):除外事由がなければ認めなければならない保釈です。
- 裁量保釈(90条):その要件を満たさなくても、裁判所の裁量で許す保釈です。
- 義務的保釈(91条):勾留が不当に長引いたときの保釈です。
それぞれの詳しい要件は、保釈の解説記事にまとめています。
保釈は、二つの部分でできています。一つは、いま挙げた「認めてよいか」という全国共通の判断基準です。もう一つは、その判断を求め、認められれば釈放まで運ぶ手続の現場です。基準は全国一律ですが、手続は事件が起訴された裁判所で動きます。
保釈は、勾留(身柄の拘束)そのものをなくす制度ではありません。保証金を裁判所に預けることを条件に、勾留の執行を止めて外に出す制度です。ですから、手続はその勾留を扱う裁判所、さいたまの事件ならさいたま地方裁判所で進みます。
第2 さいたま地方裁判所はどこにあるか
さいたま地方裁判所の本庁は浦和にあり、大宮には地方裁判所の本庁も支部もありません。
さいたま市内で「裁判所」というと大宮を思い浮かべる方もいますが、刑事事件の保釈を扱う地方裁判所の本庁は、浦和にあります。JR浦和駅の西口から徒歩約15分、JR埼京線の中浦和駅からも徒歩約15分の場所です。
この本庁のほかに、さいたま地方裁判所は越谷・川越・熊谷・秩父の4か所に支部を置いています。事件がどの裁判所に起訴されるかは、事件を担当した警察署や検察庁の場所などで決まります。支部の管轄の細かい振り分けは、別の記事であらためて扱います。
起訴された先によっては、こうした支部で手続が進むこともあります。自分の家族の事件がどの裁判所に係属しているかは、起訴状の記載や、担当の弁護人に確認できます。
大宮にあるのは、大宮簡易裁判所です。簡易裁判所は、少額の民事訴訟や調停などを扱う裁判所で、刑事事件の保釈請求を受け付ける地方裁判所とは役割が違います。大宮の簡易裁判所に保釈を求めても、刑事事件の保釈はそこでは扱われません。
ですから、大宮に住む方の事件でも、保釈の手続は浦和のさいたま地方裁判所本庁で進むのが原則です。第1で述べた手続の現場が、さいたまではこの浦和にあたります。
保釈の手続をどの窓口で行い、保証金をどう納めるかといった裁判所ごとの細かい運用は、事件によって変わります。担当の弁護人や裁判所に確認しながら進めるのが確実です。
第3 保釈請求はどう進むか
勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。 (刑事訴訟法88条)
保釈は、起訴された後に、被告人側が裁判所へ請求して初めて動き出します。条文が請求できる人として挙げる「被告人」とは、起訴されて裁判にかけられている人のことで、起訴前の「被疑者」とは区別されます。保釈は、起訴された後でなければ請求できません。逮捕や勾留の段階では保釈は使えず、その時期は勾留そのものを争うことになります。
請求を受けた裁判所は、保釈を許すか却下するかを決める前に、必ず検察官の意見を聴きます(92条)。検察官が「証拠を隠すおそれがある」といった意見を出すこともあり、その意見は裁判官の判断に影響します。もっとも、検察官が反対しても、裁判所が必ずそれに従うわけではなく、最後は裁判所が判断します。弁護人がこの意見にどう向き合うかは、第4で説明します。
保釈が認められるときは、裁判所が保証金の額を定めます。額は、犯罪の性質や情状、証拠の強さ、被告人の性格や資産をふまえて決められます(93条)。そして、保証金を納めた後でなければ、釈放は実行されません(94条)。この保証金は、被告人本人でなくても納めることができ、現金に代えて有価証券や、裁判所が認める保証書によることも認められています(94条)。
保証金を用意できないときは、立て替える制度もあります。金額の相場や制度の詳しい説明は、保釈金の解説記事で扱います。
請求にあたっては、身元引受人を用意することが多くあります。身元引受人は、被告人が逃げたり証拠を隠したりしないよう監督することを引き受ける人です。その引受書は、保釈を認めてよいと裁判官に判断してもらう資料の一つになります。誰が身元引受人になれるかは、記事末のよくある質問で説明します。
第4 弁護人はさいたまでの保釈で何をするか
弁護人は、保釈請求書と意見書を出し、検察官の反対意見に反論し、却下されれば準抗告で争います。まず請求書では、権利保釈の除外事由に当たらないことを、事件の具体的な事情に即して主張します。
実務で争いになりやすいのは、証拠を隠すおそれ(89条4号)と、被害者らを畏怖させるおそれ(89条5号)です。弁護人は、被告人の家族・仕事・住居といった身上を示し、これらのおそれが小さいことを、資料をつけて疎明します。権利保釈が難しい事件では、あわせて裁量保釈(90条)の相当性も主張します。
請求書では、これらに加えて、保証金や住居の制限などの条件についても弁護人が意見を述べます。逃亡や証拠隠滅を防ぐ手立てをそろえて示すことが、保釈を認めてもらううえで大切になります。
保釈を請求するタイミングも、弁護人が事件に応じて考えます。起訴された直後に請求することもあれば、最初の公判の前や、審理が終わって判決を待つ間に請求することもあります。
第3で述べたとおり、裁判所は検察官の意見を聴きます。検察官が保釈に反対する意見を出したときは、弁護人はその内容に反論する意見書を出すことを検討し、裁判官と面談して口頭で補うこともあります。
保釈が却下されても、そこで終わりではありません。却下の決定に不服があれば、準抗告という手続で、別の裁判官に判断し直してもらえます(429条1項2号)。準抗告は、単独の裁判官ではなく合議体、つまり3人の裁判官が判断します(同条4項)。
3人で見直すのは、いちど出た結論を、別の裁判官の目でもう一度確かめてもらう仕組みだからです。申立てにとくに期間の制限はなく、実益がある限り行えます(421条)。
さらに、いったん却下された後でも、事情が変われば、あらためて保釈を請求できます。証拠を隠すおそれや逃げるおそれをめぐる事情は、時間の経過や弁護活動によって変わりうるからです。実務のマニュアルでも、却下後の事情をふまえた再請求は珍しくないとされています。
第5 保釈を認めるかどうかは裁判官が判断する
保釈を認めるかどうかは、最終的にさいたま地方裁判所の裁判官が、事件ごとに判断します。第1で述べた二つの層のうち、「認めてよいか」という判断は、条文の要件に事件の事実をあてはめて行われます。
証拠を隠すおそれ(89条4号)や逃げるおそれがどれくらいあるかは、事件の中身や被告人の生活によって一つひとつ違います。同じ罪名でも、結論が同じになるとは限りません。だから、弁護人が請求すれば必ず保釈が認められる、というものではありません。
判断が難しく、評価が分かれることは、資料からもうかがえます。法制審議会の資料には、実刑判決の後の裁量保釈をめぐって、下級審の決定が抗告審で取り消された事例だけを集めたものとして、14件が整理されています。同じ「逃げるおそれ」という要素について、最初の裁判所と、その上でもう一度見た裁判所とで、判断が分かれた例です。
逃げるおそれをやわらげる事情として、評価されるものもあります。法制審議会の資料では、次のような点が、逃亡のおそれを下げ、保釈の必要性を基礎づける事情として挙げられています。
- それまでの出頭状況がよいこと
- 身元引受人がいて、監督が期待できること
- 見込まれる刑が重くないこと
- 治療の必要があること
どの事情がどれだけ重く見られるかは、事件ごとに違います。だからこそ、弁護人はその事件に即した事情を、資料をつけて具体的に示します。認められるかどうかを前もって見通すことはできません。それでも、示すべき事情がある事件で請求しなければ、判断の機会も生まれません。
とくに、実刑判決が言い渡された後は、判断が慎重になります。刑務所に入ることが決まったことで、逃げるおそれが類型的に高まると考えられるためです。この段階では権利保釈は使えなくなり、裁量による保釈があるだけです。保釈中に逃げれば納めた保証金は没取され、実刑判決の後に逃げた場合には、没取は裁判所の裁量ではなく義務になります。
このように、保釈が認められるかどうかは、条文だけで自動的に決まるものではなく、さいたま地方裁判所の裁判官が、その事件の事情をふまえて判断します。弁護人にできるのは、認められるべき事情を具体的に示すことまでで、最終的な判断は裁判官にゆだねられます。
第6 よくある質問
保釈までどれくらいの日数がかかりますか
決まっていません。かかる日数は事件によって幅があり、さいたま地方裁判所でも一律ではありません。おおまかな流れは、保釈請求書の提出から、検察官の意見聴取・裁判官の面接・保釈許可・保証金の納付を経て、釈放に至るというものです。
さいたまでの当事務所の実務では、午前中に保釈請求をすると、検察官の意見が返ってくるのが翌日ごろ、裁判官の判断にさらに1日で、判断が出るまで2〜3日かかります。また、土日は裁判所の出納課が動かないため、保証金の納付ができません。週内の釈放を目指すなら、水曜までには請求しておきたい、というのが実務の感覚です。
だからこそ、保釈請求は早め早めの準備が大切です。実際の見通しは、担当の弁護人に確認するのが確実です。
家族が保釈を請求できますか
できます。保釈を請求できるのは、被告人本人と弁護人だけではありません。刑事訴訟法88条は、法定代理人や保佐人のほか、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹も請求できると定めています。ですから、勾留されている本人の妻や夫、親、子、きょうだいは、自分の名前で保釈を請求できます。実際には、弁護人が本人や家族と相談しながら請求を組み立てるのが通常です。
身元引受人は家族でないとだめですか
家族に限られません。身元引受人は、被告人と同居して監督できる人が原則で、実際には両親などの親族が引き受ける例が多くあります。ただし、勤め先の社長、友人、遠くの親類、マンションの管理人が身元引受人になった例もあると実務書は紹介しています。誰に頼めるかは、被告人の生活の状況によって変わります。
第7 本記事の前提と更新
本記事は2026年7月時点の法令・運用に基づきます。判例・法改正に応じて随時更新します。
さいたまの裁判所に係属した事件の保釈について、当事務所でもご相談をお受けしています。手続が進むのはさいたま地方裁判所(浦和)で、ご相談をお受けするのは大宮の当事務所です。裁判所(浦和)と事務所(大宮)は場所が異なります。
- 所在:大宮サクラスクエアモール内(JR大宮駅西口から徒歩5分)
- 電話:050-5574-2763
参考文献
- 現代人文社『刑事弁護ビギナーズ ver.2.1』(2019年)151-163頁
- 東京弁護士会法友全期会・刑事弁護研究会編『新・刑事弁護マニュアル』(ぎょうせい、2022年)72-84頁
- 法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会 第9回会議配布資料32「実刑判決宣告後の裁量保釈の許否の判断事例」
- さいたま地方裁判所公式サイト(所在地・管轄。2026年7月時点)
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