勾留質問は、逮捕された本人を10日間留め置くか、帰すかを、裁判官が決める手続です。裁判官は本人の言い分を聴いて判断し、検察官が勾留を請求すると、埼玉では多くの場合その日のうちに開かれます。本人は拘束されていて連絡が取れず、ここが、家に帰れるか、身柄拘束が続くかの分かれ道になります。この記事は、勾留質問とは何か、いつ行われ、その前にご家族に何ができるかを、時間の順に説明します。
第1 勾留質問とは何をする手続か
勾留質問とは、裁判官が勾留を決める前に、本人へ容疑の内容を告げ、その言い分を聴く手続です(刑事訴訟法61条・207条1項)。
被告人の勾留は、被告人に対し被告事件を告げこれに関する陳述を聴いた後でなければ、これをすることができない。但し、被告人が逃亡した場合は、この限りでない。
(刑事訴訟法61条)
この条文は、勾留の前に本人の話を聴かなければならない、と定めています。もとは起訴された被告人についての規定ですが、逮捕された被疑者にも準用されます(同法207条1項)。つまり勾留質問は、容疑を告げること(告知)と、本人の言い分を聴くこと(聴取)の2つでできています。
取調べとは場面が違います。取調べは、警察官や検察官が捜査のために行います。勾留質問は、裁判官が勾留の可否を判断するために行う手続です。本人は、ここで弁解の機会を与えられます。
弁護人がついていれば、勾留質問の前に本人と接見し、質問で述べるべきことを助言します。住んでいる場所、仕事、家族関係などです。本人がその場で初めて容疑を聞かされ、動揺したまま答えることのないよう、事前の準備が意味を持ちます。
第2 勾留質問はいつ・どこで行われるのか
勾留質問は、逮捕からおおむね72時間以内に検察官が勾留を請求したあと、埼玉では原則その日のうちに、非公開で行われます。冒頭で述べた分かれ道は、この日に訪れます。
逮捕からの時間は、法律で細かく区切られています。警察官は、逮捕した本人に弁解の機会を与えたうえで、身柄を拘束してから48時間以内に事件を検察官へ送ります(刑事訴訟法203条1項)。
検察官も本人に弁解の機会を与え、身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から通算して72時間以内に、裁判官へ勾留を請求します(同法205条)。この72時間は、実際に身柄を拘束した時から数えます。
いつ開かれるかには、地域による差があります。埼玉では、午前中に勾留請求があると、その日の午後には勾留質問と勾留の判断まで進むのが通常の運用です。
国選弁護人を割り当てる手続も、同じ日に行われます。東京では、請求の翌日に勾留質問が行われる例があり、運用に違いがあります。逮捕の知らせを受けてから家族が動ける時間は、限られています。
勾留が認められた場合、その期間は勾留質問の日からではなく、検察官が勾留を請求した日から数えます(同法208条1項)。請求の翌日に質問が行われても、期間は請求の日を起点とし、本人が不利にならないよう配慮されています(基本刑事訴訟法1・104頁)。
勾留質問は、公開の法廷で行うと定めた条文がありません。そのため、非公開の手続として運用されています。勾留が決まった後に、公開の法廷で理由を示させる勾留理由開示(同法83条)とはこの点で異なります。
第3 裁判官は何を聞き、何を告げるのか
勾留質問で裁判官が行うのは、容疑の告知と言い分の聴取、そして弁護人を選任できる旨の告知です。順を追って進みます。
はじめに、氏名や住所など、本人であることの確認があります。次に、検察官が主張する容疑(被疑事実)を裁判官が読み上げ、それについての本人の言い分を聴きます。
裁判官は、勾留質問に先立って、検察官から提出された資料を検討しています。そのうえで質問を行い、言い分の聴取とあわせて、勾留の判断に必要な事実を本人に尋ねることもあります。判断に必要なときは、取扱いの警察署へ調査を依頼して報告を聴くこともあります(令状実務詳解・設問63)。
この場で裁判官が本人に告げなければならないのは、弁護人を選任できることです(刑事訴訟法207条2項)。弁護人を選任する権利は、憲法が保障する基本的な権利です。
裁判官は、私選の弁護人を頼めること、そして貧困などの事情で自分では頼めないときに国選弁護人の選任を請求できることを告げます。あわせて、弁護士会などへの申出先も教示します(同条3項・4項)。国選弁護人を請求するときには、資力を申告する書面が必要になります。
勾留の判断は「速やかに」行うものとされているため(同法207条5項)、勾留質問そのものに長い時間はかかりません。また、容疑にかかわる事柄を扱う場であることから、弁護人が勾留質問に立ち会うことは基本的にありません。だからこそ、質問の前に弁護人が本人と会っておくことに意味があります。
第4 本人は黙秘したほうがよいのか
黙秘したほうがよいかは、事案によって変わり、一概には言えません。ただし、氏名や住所などの人定事項に答えることには、容疑の中身を話すかどうかとは別の意味があります。
黙秘権は、憲法が保障する権利です。自分が刑事上の責任を問われるおそれのある事柄について、供述を強要されない権利をいいます(最判昭和32年2月20日)。取調べでも勾留質問でも、本人はこの権利を持っています。
黙秘したこと自体を理由に勾留の理由や必要性を認めることは、黙秘権を保障した趣旨に反する疑いが強い、と実務の文献は指摘します(令状実務詳解・設問56)。もっとも、これは黙秘を不利に扱ってはならないという意味であり、黙秘すれば釈放される、という関係ではありません。
人定事項については、別の見方があります。容疑の中身は黙秘していても、氏名や住所には答え、その裏づけが取れている場合がほとんどです。
そのような場合には、事案にもよりますが、逃亡のおそれがあるとはいえないこともある、とした裁判例があります(東京地決昭和43年9月12日。前掲設問56が紹介するもの)。逃亡のおそれは、裁判官が勾留を判断するときの材料の一つです。
黙秘するか、どこまで答えるかは、事件の内容と証拠の状況によって判断が分かれます。人定事項に答えておくことには、先にみたような意味があります。どう応じるかは、勾留質問の前に接見した弁護人と相談して決めることになります。
第5 勾留質問までに家族ができること
家族が質問の前に打てる一手は、本人に弁護士を早く会わせ、身元引受けの意思と、本人の生活を示す資料を整えることです。本人は拘束されていて自分では動けないため、ここは家族の役割になります。
まず、本人に弁護士を会わせることです。家族が取れる道は二つあります。⑴家族が当番弁護士を要請するか、⑵私選で初回接見を依頼するかです。当番弁護士は、逮捕された人のもとへ弁護士が接見に行く仕組みで、大宮を含む埼玉での呼び方は、当番弁護士(大宮)で説明しています。
本人が自分で当番弁護士を頼んだ場合、本人が家族の電話番号を覚えていないと、家族まで連絡が届かないことがあります。だからこそ、家族の側から弁護士に動いてもらう意味があります。
もっとも、当番弁護士がその場でしてくれるのは、接見と助言です。勾留質問の前に検察官や裁判所へ意見書を出すといった弁護活動をしてもらうには、その弁護士に私選で依頼して引き受けてもらう必要があります。当番のまま(のちに国選になる場合も)だと、そうした活動は勾留が決まった後になります。
勾留された被疑者は、貧困などで自分では弁護人を頼めないときに、国選弁護人を付けられます(刑事訴訟法37条の2)。ただし、国選を請求できるのは勾留を請求された後の段階です。勾留質問の前から動いてもらうには、私選で依頼することになります。
次に、私選弁護人を頼むか、国選を待つかの見当をつけます。国選の対象になるかは資力で決まり、目安は現金や預貯金などで50万円です(同法207条4項)。
50万円以上あるときは、あらかじめ弁護士会へ私選の申出をしておく必要があります。資力申告書は本人の記憶にもとづいて書けば足り、通帳の写しなどの添付はいりません。違いは、国選・私選の違いで整理しています。
そして、身元引受けの意思を固め、資料をそろえます。身元引受書(身分証の写しを添えます)、本人の勤務先がわかる資料、通院していれば診断書などが、勾留を避ける方向の材料になります。
弁護人の動きは、勾留質問の前から始まります。私選で早く依頼し、検察官へ送られる前に引き受けていれば、検察官には勾留を請求しないよう、裁判所には勾留しないよう、意見書を出すこともできます(新・刑事弁護マニュアル)。
これらは、弁護人が勾留質問の前に本人と接見し、裁判官へ出す意見書にまとめます。身元引受人の連絡先を意見書に記しておけば、裁判官が身元引受けの実効性を判断する材料になります(新・刑事弁護マニュアル)。
家族が早い段階で資料を整えるほど、弁護人が使える材料は増えます。弁護人が本人と初めて会う接見については、初回接見で説明しています。
第6 勾留質問のあと、どうなるのか
勾留質問のあと、結果は二つに分かれます。勾留状が発付されて身柄拘束が続くか、勾留が認められず釈放されるかです。冒頭で述べた分かれ道が、ここで決まります。
勾留が認められると、本人は原則として10日間留め置かれます。検察官の請求で延長されると、さらに10日、あわせて20日まで続くことがあります(刑事訴訟法208条)。この日数も、勾留質問の日ではなく、検察官が勾留を請求した日から数えます。
勾留されている間に、検察官は起訴するかどうかを判断します。勾留の請求の日から10日以内に起訴されなければ、本人は釈放されます(同法208条1項)。もっとも、実務上は、ほとんどのケースで勾留延長されます。
数の上では、勾留の請求が却下される事件は多くありません。法務省の統計によると、検察官が勾留を請求した事件のうち、裁判官が請求を退けた割合(勾留請求却下率)は、令和6年で4.3%でした。これは前年より0.5ポイント高く、令和2年以降は4%前後で推移しています(法務省『令和7年版犯罪白書』)。
この数字は、過失運転や道路交通法違反などの交通事件と、法人を除いた全国の集計です。逮捕された人が釈放される割合そのものを示すものではありません。
もっとも、勾留が決まっても、そこで手続が終わるわけではありません。勾留の理由や必要がなくなったときは、その取消しを求めることができます(同法87条)。これは、本人や弁護人だけでなく、配偶者や親、きょうだいからも請求できます。
勾留の決定そのものを争う準抗告という手続もあります。次の一手は、準抗告で説明しています。
第7 よくある質問
1 家族が勾留質問に立ち会ったり、傍聴したりできますか
勾留質問は非公開で運用されているため、家族が同席したり傍聴したりすることは、基本的にできません。本人の様子や、本人がどう述べたかは、勾留質問の前後に接見した弁護人を通じて知ることになります。
2 勾留が決まったことは、いつ、誰に連絡が来ますか
本人に弁護人がついていれば、弁護人に通知されます。弁護人がいないときは、本人が指定した家族一人に通知が届きます(刑事訴訟法79条)。逮捕の段階でまだ連絡が来ていない場合でも、当番弁護士を呼べば、本人と会って状況を確かめられます。
3 勾留が却下されたら、その場ですぐに帰れますか
必ずしもすぐではありません。裁判官が勾留を認めなくても、検察官がその判断を争うことがあり、釈放の手続にも時間がかかることがあります。迎えを手配する前に、弁護人と釈放の見込みを確かめておくと確実です。
4 勾留質問と「勾留理由開示」は違うものですか
別の手続です。勾留質問は、勾留を決める前に、非公開で本人の言い分を聴く手続です。勾留理由開示は、勾留が決まった後に、なぜ勾留するのかを公開の法廷で示させる手続です(刑事訴訟法82条・83条)。
第8 本記事の前提と更新
本記事は2026年7月時点の法令・運用に基づきます。判例・法改正に応じて随時更新します。
ご家族が逮捕された場合のご相談は、当事務所でも受けています。相談の方法と費用は、費用のご案内をご覧ください。
関連記事
参考文献
- 田中康郎監修『令状実務詳解〔補訂版〕』(司法協会、2023年)設問56「黙秘権の行使と勾留の理由・必要性」・設問63「勾留の裁判と事実の取調べ」(設問63執筆:丹羽敏彦)
- 高森高徳著・澁谷博之補訂『Q&A実例逮捕・勾留の実際〔第2版補訂〕』(立花書房、令和4年〔2022年〕)
- 東京弁護士会法友全期会刑事弁護研究会編『新・刑事弁護マニュアル〔手続の勘所と実践知〕』(第一法規、2019年)第1編第3章「勾留」
- 吉開多一・緑大輔・設楽あづさ・國井恒志『基本刑事訴訟法1──手続理解編』(日本評論社、2020年)104頁
- 法務省法務総合研究所編『令和7年版犯罪白書』第2編第2章第3節「被疑者の逮捕と勾留」(2025年)
コメント