不同意性交等罪は、相手が同意しない意思を保つことが困難な状態で性交等をしたときに成立する罪で、法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。2023年(令和5年)の改正で、強制性交等罪から名称と成立の仕組みが変わり、暴行や脅迫がなくても、8つの類型のいずれかにあたれば成立するようになりました。この記事は、被疑者として捜査の対象になった方に向けたものです。成立要件、「同意していると思っていた」の扱い、手続と量刑の見通しを、順に説明します。
第1 不同意性交等罪とは、どのような罪か
前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。 (刑法177条1項)
不同意性交等罪は、相手が同意しない意思を保つことが困難な状態を利用して、性交等をする罪です。法定刑は5年以上の有期拘禁刑で、罰金刑はありません。刑の種類は拘禁刑です(2025年6月から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました)。
この罪は、2023年(令和5年)の改正でできました。それまでの強制性交等罪が、名称と成立の仕組みを変えて、不同意性交等罪になりました。旧法では、成立の中心は「暴行・脅迫」を手段とすることにありましたが、改正後は、暴行や脅迫がなくても、相手を「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」にすれば成立する形に変わりました。
挿入を伴わないわいせつな行為にとどまる場合は、不同意わいせつ罪(176条)になります。こちらの法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑で、不同意性交等罪より軽い法定刑です。両罪の分かれ目は、性交等にあたる行為があったかどうかです。
性交等とは、性交・肛門性交・口腔性交と、膣または肛門への身体の一部(陰茎を除く)や物の挿入のうち、わいせつなものをいいます。既遂となるのは挿入があった時点で、射精の有無は問いません。口腔性交は「挿入」に限られるため、性器を舐めさせる行為は、不同意わいせつ罪(176条)にとどまります。
この罪が守るのは、性的なことを自分で決める自由(性的自己決定権)です。
なお、16歳未満の相手との性交等は、同意の有無を問わず不同意性交等罪にあたります(13歳以上16歳未満の相手については、加害者が5歳以上年上の場合)。また、18歳未満を現に監護する親などが、その影響力に乗じて性交等をした場合は、8類型を立証しなくても成立する監護者性交等罪(179条)という別の罪があります。
第2 暴行や脅迫がなくても成立するのか(「困難な状態」の8類型)
暴行や脅迫は、この罪の必須の要件ではありません。 不同意性交等罪は、8つの類型のいずれかで相手を「同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態」にさせ、またはその状態に乗じて性交等をしたときに成立します。
177条1項は、この8類型を自前で並べていません。「前条第一項各号に掲げる行為又は事由」、つまり不同意わいせつ罪(176条1項)の各号を引用しています。8類型の中身は、176条1項にあります。
8類型は、次のとおりです。
- ① 暴行や脅迫を用いる、またはそれらを受けたこと
- ② 心身の障害を生じさせる、またはそれがあること
- ③ アルコールや薬物を摂取させる、またはその影響があること
- ④ 睡眠その他、意識がはっきりしない状態にさせる、またはその状態にあること
- ⑤ 同意しない意思を形成・表明・全うするいとま(余裕)がないこと
- ⑥ 予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させる、またはその状態にあること
- ⑦ 虐待に起因する心理的反応を生じさせる、またはそれがあること
- ⑧ 経済的・社会的な地位に基づく影響力による不利益を憂慮させる、またはそれを憂慮していること
これらに共通する軸が、「困難な状態」です。困難な状態には、三つの段階があります。同意するかどうかを決めること自体が難しい「形成の困難」、いやだと言い出せない「表明の困難」、いったん示した拒絶を貫けない「全うの困難」です。⑤や⑥は、この形成・表明・全うのどこかが妨げられる場面を指します。
条文は、2つの型を並べています。「困難な状態にさせ」と「その状態にあることに乗じて」です。前者は、加害者がその状態を作り出す型で、行為と状態との間に因果関係が必要です。後者は、すでにある状態を利用する型で、その状態を認識していれば足ります。
たとえば相手が深く眠っている状態を利用する場合は、後者にあたります。
条文は、8類型のあとに「その他これらに類する行為又は事由」と結んでいます。8つのどれかにぴたりと一致しなくても、これらに類する事由で相手を困難な状態にすれば、成立しうる構造です。
ここが、実務の難所になります。恐怖で体が動かなくなる反応(フリーズ)が本当にあったのか、加害者がその状態を認識していたのかは、外からは見えにくく、残された証拠から認定するほかありません。
被害者の心理の立証と加害者の故意の認定の難しさは、刑法研究者からも改正後の課題と指摘されています。ある行為が8類型にあたるかどうかの最終的な判断は、捜査機関と裁判所に委ねられます。
第3 「同意していると思っていた」ときはどうなるのか
「相手は同意していると思っていた」という言い分は、この罪でよく出てくる反論の一つです。ただし、そう思っていたというだけで、自動的に無罪になるわけではありません。
不同意性交等罪が成立するには、相手が困難な状態にあることを、加害者が認識していたこと(故意)が必要です。「同意していると思っていた」という主張は、この認識がなかったといえるかという、故意の問題になります。
相手がはっきり拒んでいたのに続けた場合は、認識があったと判断されやすくなります。逆に、相手の様子から同意していると受け取ったことに無理がないといえるかが、慎重に検討されます。
相手が同意していないのに、同意していると誤って信じていた場合(同意の錯誤)には、その誤信にやむをえない事情があれば、故意が否定されて無罪となることもあります。
改正前の事案では、口腔性交について無罪となった裁判例があります。被害者が「頭が真っ白」の状態にあり、被告人がそれを認識できたとまではいえないとされました。承諾の誤信(同意していると誤って信じていたこと)について合理的な疑いが残るとして、無罪です(静岡地裁浜松支部平成31年3月19日判決)。
もっとも、こうして無罪となる例は限られます。
このほか、行為そのものをわいせつではないと誤信させたり、人違いをさせたりして性交等をした場合も、不同意性交等罪にあたります(177条2項)。もっとも、この誤信の類型は、限定して理解されています。たとえば、金銭を渡すと偽った場合や、自分の地位や属性を偽った場合までは含まれない(不同意性交等罪は成立しない。)、と説明されています。
「同意していると思っていた」が通るかどうかは、当時のやり取りや状況といった証拠から判断され、最終的には裁判所の判断に委ねられます。
第4 手続はどう進み、弁護士に何を頼めるのか
捜査の入口が逮捕でも在宅でも、事件はこの後、起訴するかどうかの判断に向けて進みます。弁護人の役割は、事実を争うか認めるかによって、初動が変わります。
捜査は、大きく3つの入口から始まります。逮捕される場合、警察から任意の呼び出しを受ける場合、逮捕されないまま在宅で捜査が進む場合です。呼び出しは、呼び出し状より、電話や置き手紙で来ることが実務では多いです。
逮捕された場合は、逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、送致から24時間以内に、勾留を請求するかどうかが決まります(合わせて72時間)。その後の勾留や期間の詳しい流れは、性犯罪で逮捕・呼び出しを受けたらで説明しています。性犯罪でも、家族との面会や手紙のやり取りを制限する接見禁止が付くことがあります。
事実を争う場合、弁護人は、8類型のどれに当たるとされているのか、いつ・どこでの行為が問題にされているのかを確かめます。そのうえで、供述と客観的な証拠を検討します。被害者の供述の信用性も吟味します。信用性の判断については、最高裁平成23年7月25日判決が一つの考え方を示しています。
事実を認める場合は、被害者への謝罪と被害弁償、示談の交渉が中心になります。弁護人は、被害者の意向を確かめながら、これらを進めます。
身柄の拘束が続くときは、弁護人は釈放に向けた活動を行います。不同意性交等罪は法定刑が重く、当然に保釈が認められる事件ではないため、裁判所の裁量による保釈を求めることになります。勾留の判断そのものを争う手段として、勾留に対する準抗告もあります。
弁護人がこれらを行っても、釈放や不起訴が保証されるわけではありません。できることを尽くしたうえで、最終的な処分は検察官の判断に委ねられます。
第5 どのくらいの刑になるのか(量刑の重さと見通し)
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑と定められています。刑の下限が5年で、罰金刑はありません。この記事では、「懲役◯年が相場」といった数値は扱いません。個別の事件の刑を、相場から予想することはできないためです。
有罪となった場合でも、執行猶予がつく余地はあります。法律上の減軽(酌量減軽)で刑を下げれば、理論のうえでは執行猶予がつく範囲まで届きます。もっとも、この罪で執行猶予がつく例は、実務では限られます。有罪を前提とする場合、弁護人は、刑を軽くする方向の事情(情状)を主張し、量刑の判断材料として示します。
相手にけがを負わせた場合は、不同意性交等致死傷罪となり、法定刑は無期または6年以上の拘禁刑とさらに重くなります(181条2項)。不同意性交等罪そのものは裁判員裁判の対象ではありませんが、致死傷罪にあたる場合は対象になります。
被害者との示談が成立しているかどうかは、量刑を判断するうえで考慮される事情の一つです。ただし、示談したから必ず刑が軽くなる、不起訴になる、という関係ではありません。示談の進め方には注意すべき点が多く、弁護人を介して進めるのが通常です。
最終的にどの程度の刑になるかは、行為の内容や結果、示談の有無といった個別の事情をもとに、裁判官が判断します。ここから先は、弁護士にも断定できません。
第6 よくある質問
有罪になると前科はつきますか
有罪の判決が確定すれば、前科がつきます。一方、不起訴や起訴猶予で終われば、前科はつきません。どちらの結論になるかは検察官の判断によるもので、この記事から個別の事件について断定はできません。前科がその後の仕事や資格にどう影響するかは、前科で説明しています。
会社や家族に知られますか
逮捕された事実が、自動的に勤務先へ通知される仕組みはありません。ただ、報道や在宅捜査のやり取りを通じて、周囲に伝わることはあります。どう対応するかは、弁護人が本人と相談して検討します。伝わらないことを保証できるわけではありません。
被害者の方に直接連絡して謝りたいのですが
ご本人が直接連絡することは、避けるのが通常です。相手が接触を望まないことも多く、連絡が新たなトラブルや証拠隠滅の疑いにつながるおそれがあるためです。謝罪や被害弁償は、弁護人を介して行います。
不起訴になれば裁判は開かれないのですか
不起訴になれば、公判(裁判)は開かれません。起訴するか不起訴にするかは検察官の判断で、この記事から個別の事件の結論を予測することはできません。
第7 本記事の前提と更新
本記事は2026年7月時点の法令・運用に基づきます。判例・法改正に応じて随時更新します。
不同意性交等罪の捜査を受けている方のご相談は、当事務所でも受けています。相談の方法と費用は、費用のご案内をご覧ください。
参考文献
- 井田良『講義刑法学・各論〔第3版〕』有斐閣、2023年
- 城祐一郎『性犯罪捜査全書 理論と実務の詳解』立花書房、2021年
- 嘉門優「不同意性交等罪の評価:困難性要件の意義と課題」法律時報96巻11号、2024年
- 橋爪隆「性犯罪に対する処罰規定の改正等について⑴」警察学論集77巻8号、2024年
- 高橋則夫『刑法各論』第5版、東京大学出版会、2025年
- 植村立郎監修『刑事事実認定重要判決50選(上)〔第3版〕』立花書房
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