人身事故や飲酒運転で検挙されると、刑事の手続とは別に、公安委員会による免許の処分(停止・取消し)の手続が進み、免許は「仮停止」の場合を除いてその場では止まりません。前歴がなければ、処分基準では累積6点で30日の停止となり、15点以上は法令上の取消しの基準です。事故から通知までの標準の日数は公表されていません。不起訴になっても、免許の処分がなくなるとは限りません。
第1 刑事の手続と免許の処分はどういう関係か
刑事の手続は罪を犯したかどうかを調べて刑罰を科すための手続であり、免許の処分の手続は道路交通上の危険を防ぐための手続です。刑事は警察・検察庁・裁判所が、免許は警察と公安委員会が、それぞれ別々に進めます。

刑事事件としては、運転上必要な注意を怠って人を死傷させると、過失運転致死傷罪にあたります。法定刑は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、傷害が軽いときは情状により刑を免除できます(自動車運転死傷処罰法5条)。
正式裁判を求めて起訴するか、略式手続で罰金を求めるか、不起訴にするかを決めるのは検察官です。刑事の手続の順序は、過失運転致傷の処分と弁護活動で説明しています。青切符・赤切符の区別も刑事事件の側の話です(青切符と赤切符の違い)。
人身事故や酒気帯び運転で通常問題になるのは、道路交通法103条1項5号の点数制度です。公安委員会は、運転に関して道路交通法に違反した人について、政令で定める基準に従い、免許を取り消すか、6か月を超えない範囲で停止することができます(同項柱書・5号)。
ひき逃げ(救護義務違反)、酒酔い運転、危険運転致死傷などは、同条2項で取消しの対象とされています。この場合の欠格期間(免許を受けられない期間)は、3年以上10年以内です(同条8項)。
埼玉県警察の事務処理要領では、二つの手続は二つの場面で関係します。
- ① 同じ事故について警察署がまとめた書類の写しが、運転免許の担当部署へも送られる場面(第4)
- ② 不送致や不起訴といった刑事事件の結果が、運転免許の担当部署へ報告される場面(第5)
点数の決まり方は第3、通知が届いた後に起きることは第6で説明します。
第2 事故のその場で免許は止まるのか
その場で免許が止まるのは「仮停止」に当たる場合だけで、安全運転義務違反による通常のけがの事故では、免許は後日の処分まで使えます。仮停止は、事故を起こした場所を管轄する警察署長が行う緊急の停止です(道路交通法103条の2第1項)。対象は、条文で次の3つに限られています。
- ① 人を死傷させる事故を起こして、救護義務に違反した場合(ひき逃げ)
- ② 酒酔い運転・酒気帯び運転・無免許運転などをして、人を死傷させた場合(飲酒運転の刑事の扱いは飲酒運転の3類型で説明しています)
- ③ 信号無視や最高速度違反などをして、人を死亡させた場合
警察庁の運転免許統計では、令和7年の仮停止は全国で613件でした。同じ年の取消しと停止は、人身事故に限らないすべての処分で約18万件です。
仮停止の期間は、仮停止をした日ではなく事故を起こした日から数えて、30日を経過する日に終わります。実務解説は、事故から5日後に仮停止をすれば期間は25日間になると説明しています。
仮停止を受けた人は、免許証を警察署長に提出します(同条3項)。警察署長は、処分の日から5日以内に弁明の機会を与えなければなりません(同条2項)。
仮停止の期間内に本処分(公安委員会による通常の停止・取消し)があると、仮停止は効力を失います。仮停止の期間は、本処分の停止の期間に通算されます(同条7項・8項)。
埼玉県警察の運用では、仮停止に当たる事故でも、次の事案は仮停止をせず、速やかに本処分の手続をとります。
- 否認事案で、本人の自供のほかに証拠が足りず、期間内に立証できない場合
- 被害の程度か責任の度合いが軽微で、軽い本処分が明らかに相当な場合
- 本人がけがや病気で、期間内に運転できないことが明らかな場合
第3 処分の重さは何で決まるのか
免許の処分は、点数制度によらないものと、点数制度によるものに分かれます(道路交通法103条1項)。
- ① 点数制度によらない処分
- ⑴ 重大違反唆し等(運転者をそそのかして酒酔い運転などの重大な違反をさせたり、重大な違反を助けたりすること。同項6号)
- ⑵ 道路外致死傷(駐車場など道路以外の場所で、自動車等を運転して人を死傷させること。同項7号)
- ⑶ 危険性帯有(自動車等を運転すると、道路の交通に著しい危険を生じさせるおそれがあること。同項8号)
- ② 点数制度による処分(同項5号)
- ⑴ 一般違反行為に付する基礎点数
- ⑵ 特定違反行為に付する基礎点数
- ⑶ 交通事故を起こした場合の付加点数
- ⑷ 当て逃げをした場合の付加点数
病気や身体の障害を理由とする処分(同項1号〜4号)は、この記事では扱いません。人身事故や飲酒運転で通常問題になるのは②で、以下は②について説明します。
②の処分の基準は、違反の点数と事故の付加点数を合計した累積点数と、過去の処分の回数(前歴)で決まります(道路交通法施行令38条5項・別表第二・別表第三)。
累積点数は、今回の違反の点数と、その日から過去3年以内のほかの違反の点数の合計です(同令33条の2第3項)。点数は違反のたびに足されていくもので、減っていく方式ではありません。今の累積点数を確かめる方法は第7の3で説明します。
1 基礎点数と付加点数
基礎点数は、違反の種類で決まります。人身事故の原因として典型的な安全運転義務違反や信号無視は2点です。
酒気帯び運転は、呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上なら25点、基準以上0.25ミリグラム未満なら13点です。酒酔い運転は特定違反行為とされて35点が付き、第1で述べた道路交通法103条2項の取消しの対象にもなります。
付加点数は、被害の程度と、事故が専ら本人の不注意によるものかどうかで決まります(同令別表第二 三の表)。
| 被害の程度 | 専ら本人の不注意 | それ以外 |
|---|---|---|
| 死亡 | 20点 | 13点 |
| 治療3か月以上・後遺障害 | 13点 | 9点 |
| 治療30日以上3か月未満 | 9点 | 6点 |
| 治療15日以上30日未満 | 6点 | 4点 |
| 治療15日未満・建造物損壊 | 3点 | 2点 |
負傷者が複数いるときは、負傷の程度がいちばん重い人の治療期間で数えます(同表)。
治療期間は、基本的には診断書に書かれた期間をもとに数えます。ただし、事故の直後に出される診断書の「加療2週間」などは見込みであり、実際にはそれより前に治療が終わっていることもあります。たとえば、加療2週間の見込みでも、10日間の通院で治っていることがあります。
当て逃げ(物の損壊だけの事故を起こし、危険を防ぐ措置をとらずに立ち去ること)をしたときは、違反の点数にさらに5点が加わります(同令別表第二 備考一の2(ロ)・3、道路交通法117条の5第1項1号)。
埼玉県警察の運用では、「専ら本人の不注意」かどうかを含む不注意の程度は、警察が審査して認定します。その認定が点数を左右します。
2 点数と処分の対応

警察庁の処分基準のモデルでは、前歴がない場合、累積6〜8点で30日、9〜11点で60日、12〜14点で90日の停止です。埼玉県公安委員会の規程も同じ表を定めています。同じモデルでは、前歴が1回ある場合、4点で60日の停止です。
15点以上は法令上の取消しの基準で、前歴がなく15〜24点なら欠格期間は1年、25〜34点なら2年です(施行令38条5項・6項・別表第三)。前歴とは、今回の違反の日から過去3年以内に停止などの処分を受けたことをいい、数え方には細則があります(同表備考一)。
条文と処分基準の表から導いた例として、前歴のない人が安全運転義務違反(2点)で、相手に治療30日以上3か月未満のけがをさせた場合を考えます。専ら本人の不注意なら2点+9点=11点で60日、そうでなければ2点+6点=8点で30日の停止の基準に達します。
法律は「することができる」と定め(道路交通法103条1項柱書)、処分基準にも、運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情があるときに、処分を軽減・猶予できる定めがあります。そのため、基準に達しても、その処分を必ず受けるとは限りません。
飲酒運転の点数と免許の扱いは、酒気帯び運転の量刑・免許でも扱っています。
第4 処分はどんな順番で進むのか
埼玉県警察の事務処理要領では、警察署からの書類の送付、点数の登録、処分の量定、処分書の交付の順で進みます。第1で挙げた一つ目の場面は、この書類の送付です。
人身事故を伴う違反では、警察署が、捜査報告書や供述調書など事実の証明に必要な書類の写しを添えて、運転免許の担当部署へ速やかに送ります。送付の日数の定めはありません。事故を伴わない違反のうち切符で処理したものも、取締りの書類が警察から運転免許の担当部署へ送られます。
運転免許の担当部署は点数を登録し、累積点数が処分基準に達すると、点数と事故の書類に基づいて処分の量定(処分の種類と期間を決めること)をします。事故の登録後に点数の評価を変えるべき新しい事情が出たときは、点数を計算し直します。
量定の結果、取消しか90日以上の停止なら意見の聴取の通知が出されます。それより短い停止は、県警の案内では通知書で示された出頭日に出頭します。いずれも処分書を交付して処分します(第6)。
条文と要領の手順に当てはめた例として、前歴のない人が安全運転義務違反で相手に治療3週間のけがをさせ、在宅で捜査を受けている事故を考えます。警察署は事故の書類を運転免許の担当部署へ送り、担当部署は基礎点数2点に付加点数を足して登録します。
治療15日以上30日未満なので、付加点数は専ら本人の不注意なら6点、それ以外なら4点で、累積は8点か6点です。処分基準ではどちらも30日の停止にあたるため、基準どおりなら意見の聴取はなく、出頭して処分を受けることになります。
事故から通知までの目安は公表されていません。免許の通知と刑事事件の処分のどちらが先に来るかも、事案によってまちまちで、一概には言えません。
第5 不起訴になれば免許の処分はなくなるのか
なくなるとは限りません。免許の処分の根拠である道路交通法103条1項5号(ひき逃げ・酒酔い運転などは同条2項)は、いずれも起訴や有罪判決を要件としていません。略式手続で罰金を納めた場合も、免許の処分はそれとは別に行われます。
第1で挙げた二つ目の場面として、埼玉県警察の事務処理要領は、次の場合に運転免許の担当部署へ速やかに報告すると定めています。
- 事件を不送致としたとき
- 起訴猶予(不起訴処分の一種)その他の不起訴処分とされたとき
- 違反の事実、事故の責任の度合いや不注意の程度に変更があったとき
- 刑事処分で適用する罰条に変更があったとき
- その他、行政処分に変更を生じるおそれのある事情を知ったとき
同じ要領は、報告を受けて、すでに登録した点数が除外の事由(違反がない場合や事実誤認の場合など)に当たるときは、登録を抹消する手続をとるとも定めています。
ただし、不起訴の報告を受けた後に、どの場合に登録を外すかの基準は公開されていません。不起訴の結果だけで免許の処分がなくなるとは言えず、最終的には公安委員会の判断にゆだねられます。処分に納得できないときの争い方は、第7の1で説明します。
第6 通知が届いたら何が起きるのか
取消しか90日以上の停止が見込まれる場合は意見の聴取の通知が届き、それより短い停止の場合は、埼玉県警察の案内では通知書で示された出頭日に出頭します。いずれも、処分書を受け取った時から処分が始まります。

1 取消し・90日以上の停止は意見の聴取
公安委員会は、取消しか90日以上の停止をしようとするときは、公開による意見の聴取を行います。期日の一週間前までに、処分の理由と期日・場所を文書で通知します(道路交通法104条1項・道路交通法施行令39条1項)。
意見の聴取に際しては、当該処分に係る者又はその代理人は、当該事案について意見を述べ、かつ、有利な証拠を提出することができる。
(道路交通法104条2項)
通知の文書には、出頭しなかった場合の措置、代理人を選任できること、意見を述べ有利な証拠を出せることが書かれます(道路交通法の規定に基づく意見の聴取及び弁明の機会の付与に関する規則7条)。埼玉県警察の案内では、実施場所は鴻巣市の運転免許センターです。
県警のQ&Aは、述べる意見がなければ、出席せずに処分の決定を受けることもできると案内しています。一方で、連絡なく当日出頭しない場合は「正当な理由なく出頭しない場合」として処分が決定されるとも案内しています。
法律上も、正当な理由なく出頭しないときは、意見の聴取を行わずに処分をすることができます(道路交通法104条4項)。
2 30日・60日の停止は出頭日に出頭
30日と60日の停止には、意見の聴取がありません。埼玉県警察の案内では、通知書で示された出頭日に出頭し、処分を受けます。
県警のQ&Aは、量定が変わる場合には、出頭日に処分を受けられないこともあると案内しています。
3 処分の開始
法令上、免許の停止と取消しは、内容と理由を書いた書面を交付して行います(道路交通法104条の3第1項)。
県警のQ&Aは、停止と取消しは処分書の交付後すぐに開始されると案内しています。手続が終わった後に運転すると、無免許運転になります。
4 講習による短縮
停止を受けた人を対象に停止処分者講習があり、講習を終えると、公安委員会は停止期間を短縮できます(道路交通法103条10項・108条の2第1項3号)。40日以上の停止は、元の期間の2分の1を超えて短縮できません(道路交通法施行令33条の5)。
埼玉県公安委員会の規程では、短縮の日数は考査の成績で決まり、30日と60日の停止では表のとおりです。
| 考査の成績 | 30日の停止 | 60日の停止 |
|---|---|---|
| 優(85%以上) | 29日短縮 | 30日短縮 |
| 良(70%以上) | 25日短縮 | 27日短縮 |
| 可(50%以上) | 20日短縮 | 24日短縮 |
同規程では、90日の停止は優で45日、良で40日、可で35日短縮されます。成績が50%未満なら、同規程では短縮はありません。
県警の案内では、短期講習は処分の当日に受けられ、中期・長期講習は予約制です。警察庁の運転免許統計では、令和7年の全国の停止14万5,694件のうち9万4,595件(約3分の2)が30日で、短期講習の対象となる期間です(人身事故に限らないすべての処分の件数)。
ただし、県警のQ&Aのとおり、30日の停止で29日短縮されても、処分を受けた当日は停止期間中であり、その日に運転すると無免許運転です。
第7 よくある質問
1 処分に納得できないときは、どうすればよいですか
審査請求か取消訴訟で争う方法があります。審査請求は処分があったことを知った日の翌日から3か月、取消訴訟は知った日から6か月が期限です(行政不服審査法18条・行政事件訴訟法14条)。
いずれも、処分の日から1年を過ぎると、正当な理由がない限りできません。不利益処分をするときは不服申立ての手続を書面で教示することとされており(行政不服審査法82条)、埼玉県警察の運用でも、処分の際に教示書を交付しています。
2 点数はいつまで数えられますか
点数は、今回の違反・事故の日から過去3年以内のものを合算します(道路交通法施行令33条の2第3項)。
ただし、今回の違反より前に、1年以上違反も事故もない期間があれば、その期間より前の点数は合算しません(同項1号)。たとえば、2年前に2点の違反をした後、1年以上違反なく過ごしてから事故を起こした場合、2年前の2点は今回の点数に足されません。
停止の処分を受けた人が、その停止の期間中に違反をしなかったときも、処分の前の点数は合算しません(同項3号)。停止の期間が満了した後、1年以上違反も事故もなければ、前歴としても数えません。このほかにも、数え方の細則があります。
3 今の点数はどこで確かめられますか
自動車安全運転センターの「累積点数等証明書」で、交通違反や交通事故の点数が今何点になっているかを確かめられます。
申込用紙は警察署・交番・駐在所と、同センターの各都道府県の事務所に置いてあります。郵便局(ゆうちょ銀行)での払込みか、事務所の窓口で申し込みます。運転免許証のICチップを読み取れるスマートフォンがあれば、インターネットからも申し込めます。
手数料は1通800円(払込みの手数料は別)で、郵便で受け取る場合は申込みから1〜2週間程度かかります。直前の違反は、まだ記録されていないことがあります。
4 免許の停止や取消しは前科になりますか
なりません。免許の停止や取消しは公安委員会の行政処分であり、刑罰ではないからです。前科と関係するのは、刑事の手続で科される罰金や拘禁刑です(前科がつくとどうなるか)。第3でいう前歴は免許の処分(道路交通法施行令)の用語で、刑事事件の前歴・前科とは別のものです。
関連記事
参考文献
- 警察庁交通局運転免許課「運転免許統計 令和7年版」(2026年)
- 警察庁「運転免許の効力の停止等の処分量定基準」(処分基準のモデル)
- 運転免許行政処分規程(昭和44年埼玉県公安委員会規程第4号・令和6年12月11日改正)
- 埼玉県警察「運転免許関係事務処理要領」(平成元年6月28日埼例規第38号・令和6年7月1日実施の改正まで反映した公開版)
- 埼玉県警察ウェブサイト「運転免許の取消し・停止等」(2025年3月10日更新)、「行政処分に関するQ&A」(2025年12月15日更新)、「点数の計算」、「停止処分者講習の概要」(いずれも2026年10月27日閲覧)
- 道路交通執務研究会編『執務資料 道路交通法解説』20訂版(東京法令出版、2025年)
- 高山俊吉『入門 交通行政処分への対処法』(現代人文社、2017年)
- 自動車安全運転センターウェブサイト「運転経歴に係る証明書」「申請方法」(2026年10月27日閲覧)