在宅事件はどう進むのか|逮捕されないまま捜査が終わるまでの流れ

在宅事件は、逮捕も勾留もされないまま、警察と検察の捜査が進み、処分が決まる刑事事件です。身柄を拘束された事件では、逮捕から72時間という時間制限のもとで手続が進みますが、在宅事件にはその時間制限がありません。

この記事は、警察で事情聴取(取調べ)を受けて帰宅した方に向けて、送致から終局処分までの時系列と、在宅が逮捕に切り替わる場面を説明します。

第1 在宅事件とは何か

逮捕も勾留もされないまま捜査が進む事件を、実務では在宅事件と呼びます。逮捕も勾留もされていない被疑者がどういう立場に置かれるかは、刑事訴訟法198条1項の但書が定めています。

但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
(刑事訴訟法198条1項但書)

条文が出頭を拒む自由と、出頭した後に退去する自由を認めているのは、逮捕も勾留もされていない被疑者です。逮捕や勾留をされている被疑者に、この但書は及びません。

背景には、捜査全体の原則があります。捜査は目的を達するために必要な取調べができるとされ、強制の処分は法律に特別の定めがある場合に限られます(刑事訴訟法197条1項)。在宅事件は、この任意の捜査のまま最後まで進む事件です。

身柄事件との違いは、時間の区切りにも表れます。逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ事件を送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます(刑事訴訟法203条・205条)。

合わせて72時間の時間制限が課されます。在宅事件に、これにあたる期限はありません。逮捕された後の手続は、逮捕後の流れで扱っています。

身柄事件と在宅事件の違い(時間制限・出頭義務・生活)の対比表

第2 なぜ逮捕されずに帰されたのか

逮捕状を発するのは裁判官です。罪を犯したと疑う相当な理由があっても、明らかに逮捕の必要がないと認められるときは、逮捕状は出ません。

ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
(刑事訴訟法199条2項ただし書)

逮捕状を請求するのは、検察官と司法警察員です。裁判官が逮捕の必要性を審査するのは、その請求があった場合です(刑事訴訟法199条2項)。在宅事件には、逮捕状が請求されていない場合と、請求されたが発付されなかった場合とがあります。

取調べの後に帰宅できたのであれば、少なくともその時点では、身体を拘束してまで捜査する必要があるとは扱われなかった、ということになります。誰がどの段階でそう評価したかまでは、捜査機関の外からはわかりません。

では、ここでいう「逮捕の必要」とは何か。刑事訴訟規則は、逮捕状の請求を受けた裁判官が請求を却下しなければならない場合を、次のように定めています。

逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。
(刑事訴訟規則143条の3)

規則が「明らかに逮捕の必要がない」場合として挙げるのは、逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない場合です。年齢や境遇、犯罪の軽重や態様は、この2つのおそれを判断するための事情として並んでいます。規則は「等」と書いていて例示ですが、判断の中心は逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれの2つです。

したがって、取調べをするために逮捕することは、この必要に含まれません。逮捕の目的は、逃亡と罪証隠滅を防ぐことに限られると解されています。ただし、取調べに応じない状態が、逃亡や罪証隠滅のおそれのしるしとされる場面があります(第5)。

逃亡のおそれについては、前科前歴と処分の見込みが関わります。前科前歴があると重い処分が見込まれ、その処分を免れるために逃亡する現実的な可能性がある、と評価されます。前科前歴がなく、重い処分が見込まれない事件では、逃亡の現実的な可能性は低いとされ、身体を拘束する必要も認めにくくなります。

罪証隠滅のおそれについては、証拠の収集がどこまで進んでいるかが関わります。勾留の必要性を否定する判断のなかでは、「在宅の捜査で足りる」という表現が用いられます。証拠がすでに捜査機関の手元にある事案は、この評価となるケースもままあります。

逃亡と罪証隠滅のおそれについて、逮捕と勾留で問う点は同じです。

もっとも、これは個別の事件の結論を導くものではありません。必要性の評価は、捜査の進み方とともに変わります。第5で述べるとおり、在宅で始まった事件が途中で逮捕に切り替わることもあります。

第3 このあと手続はどう進むのか

在宅事件は、①警察の取調べ →②検察官への送致 →③検察官の呼び出しと取調べ →④終局処分の順に進みます。身柄事件と違うのは、各段階に法律上の期限がないことです。

在宅事件の4段階と終局処分(公判請求・略式命令の請求・不起訴)の出口を示す流れ図

1 警察の取調べ

始まりは、警察からの呼び出しと取調べです。呼び出しの電話を受けてから当日までに何をしておくかは、警察からの呼び出しで扱っています。

取調べは一度で終わるとは限らず、捜査が必要とする範囲で回数を重ねます。警察や検察官は、取調べのほかに、公務所や公私の団体へ照会して必要な事項の報告を求めることもできます(刑事訴訟法197条2項)。呼び出しの間隔が空いても、捜査が止まっているとは限りません。

2 検察官への送致

警察は捜査を終えると、原則として、書類と証拠物とともに事件を検察官へ送ります。これが送致であり、身柄の移動を伴わないことから書類送検とも呼ばれます。

司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
(刑事訴訟法246条)

身柄事件の送致には48時間という期限がありますが、在宅事件の送致にその期限はありません。条文は「速やかに」と定めるだけで、何日以内という制限を設定していません。

在宅事件では警察の捜査に時間の制約がなくなるため、送致や終局処分までが長期化しやすくなります。

3 検察官の呼び出しと取調べ

送致を受けた検察官も、被疑者の出頭を求めて取り調べることができます(刑事訴訟法198条1項)。出頭を拒めること、出頭した後にいつでも退去できることは、警察の取調べと変わりません。同じ条文が、警察官にも検察官にも適用されるからです。

この段階は、起訴するかどうかを決める人が、直接話を聞く場面です。

4 終局処分

捜査の終わり方は、公判請求、略式命令の請求、不起訴のいずれかです。処分を保留したまま先へ進まない場合もあります。どれにするかを決めるのは検察官です。

犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
(刑事訴訟法248条)

不起訴には、この248条によって訴追を必要としないと判断する起訴猶予が含まれます。起訴猶予は、罪を犯していないという判断ではなく、嫌疑があっても起訴しないという不起訴処分の一種です。それぞれの手続の内容は、不起訴処分と略式起訴で扱っています。

取調べから終局処分までにどれだけの時間がかかるかは、わかりません。法律が期限を定めていないため、終わる時期は事件ごとに違い、何か月で終わるという見通しは示せません。

第4 在宅のあいだに弁護人は何をするのか

在宅事件には、手続を先へ運ぶ期限がありません。期日が来れば次へ進む身柄事件と違い、動かすのは弁護人と本人の側になります。

【在宅事件で弁護人が行うこと】

  • ① 逮捕の必要がないことを捜査機関へ示す意見
  • ② 捜査の進捗の確認
  • ③ 被害者との示談・被害弁償の交渉

①について。逮捕状が請求された後に、弁護人が裁判官へ意見を述べることは、事実上できません。いつ逮捕状が請求されるかは、本人にも弁護人にもわかりません。請求を受けた裁判官は短時間で判断し、発付されることがほとんどだというのが、これまでの実務の感覚です。却下される例もあります。

そのため、意見を述べる相手は、逮捕状を請求する側の捜査機関です。逮捕される前に相談があれば、請求の前に、第2でみた逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれがないことを示し、在宅のまま捜査するよう求めます。

身元を引き受ける人がいること、生活の基盤があること、出頭の求めに応じる意思があることなどが、その材料になります。実務の解説書には、弁護人が付き添って本人が警察署へ自首(捜査機関に発覚する前に自ら申告すること)し、逮捕されないまま捜査が進んだ例が紹介されています。

進捗の確認は、弁護人の側から行います。在宅事件では、捜査機関から弁護人へ逐一の連絡が入ることはほとんどありません。送致されたかどうか、検察庁のどの部署へ渡ったかは、こちらから聞かなければわからないままです。

実務の解説書は、担当の捜査官へ定期的に連絡を入れて確認する必要があるとし、3週間ごとに確認を入れる運用を挙げています。事件が動いていないのか、動いたのに知らされていないのかは、確認しなければ区別がつきません。

被害者のいる事件では、示談の交渉を行います。刑事訴訟法248条が挙げる犯罪後の情況にあたる事情であり、起訴するかどうかの判断に関わります。

捜査が長く続く在宅事件では、この交渉に時間を使えます。争いのない在宅事件では、起訴猶予や略式命令の請求で終わることも見込まれます。

取調べには応じたうえで、黙秘権や署名押印を拒む権利を使うのが穏当な場合が多いというのが、実務の解説書の整理です。何を話し、何を話さないかは弁護人が助言します。

第5 途中で逮捕に変わることはあるのか

あります。

きっかけになるのは、出頭の求めに応じないことです。在宅の被疑者に出頭の義務はありません。それでも、捜査機関が、出頭しないことを逃亡や罪証隠滅の徴表(しるし)と捉え、逮捕の必要があると判断することがあります。

法律上拒めることと、拒んでも不利にならないこととは別です。実務の解説書は、この点に注意を促しています。

出頭の求めへの対応が逮捕のきっかけになることを示す分岐図(応じれば在宅のまま進むことが多く、出頭しても取調べができない状態が続く場合や応じない場合は、逮捕の必要ありと判断されることもある)

もっとも、出頭に応じない姿勢がつねに不利に働くわけではありません。在宅の段階で弁護人の同席を求めることは不当な出頭拒否にあたらない、とした裁判例もあります。求めの中身によって評価は変わります。

コラム 弁護人の立会いを求めたところ逮捕された事例

出頭には応じたうえで、取調べへの弁護人の立会いを求め続けた場合について、名古屋高裁令和4年1月19日判決があります。現行犯逮捕された被疑者が、勾留請求を却下され、在宅の被疑者となった事案です。

被疑者はその後の約4か月間に、弁護人とともに警察署と検察庁へ計7回出頭し、取調べへの弁護人の立会いを求めました。立会いは認められず、取調べが行われないまま帰るよう求められることが繰り返されました。検察庁への2回目の出頭から約1か月後、被疑者は当初と同じ被疑事実で通常逮捕されました。

刑事裁判では、一審で無罪判決が言い渡され、確定しています。本人が逮捕状の請求・発付と逮捕を違法として国家賠償を求めましたが、請求は一審・控訴審とも退けられました。

控訴審の判決は、取調べに弁護人を立ち会わせる権利があるとの解釈は確立していないとし、立会いが認められないために取調べができない事態を問題にしました。

判決は、次のように述べています。

そうすると、検察官の出頭要求に応じて被疑者が出頭したものの、弁護人を取調べに立ち会わせることを求め、これを検察官が認めなかったことから、結果として被疑者の取調べを行うことができない事態が繰り返された場合に、検察官が、被疑者が正当な理由なく取調べを拒否しており、正当な理由のない不出頭を繰り返した場合に準じ、逃亡ないし罪証隠滅のおそれがあるとして逮捕の必要性があると評価することに合理的根拠がないとはいえず、本件においては、明らかに逮捕の必要がなかったということはできず、本件逮捕状の請求及び逮捕状の執行は、刑訴法及び刑訴規則の定める要件を満たす適法なものであったということができる。
(名古屋高裁令和4年1月19日判決・判例集未登載。判決文は D1-Law.com 判例体系で確認)

判決は、弁護人の立会いなしの取調べに1回応じなかっただけでは逃亡や罪証隠滅のおそれが高まったとはいえないが、数回の出頭要求と説得を重ねても単独での取調べに応じなかったことから、おそれが高まったと評価することに合理的根拠がないとはいえない、とも述べています。

立会いを求めること自体が不当ではないとしても、取調べができない状態が続けば、逮捕の必要があると判断される危険は現実にあります。この判決を前提にすると、出頭には応じ、日程と方法を弁護人を通じて具体的に調整し、取調べのない状態を長引かせないのが現実的な対応です。

出頭して取調べに応じることと、取調べで何を話すか(黙秘を含む)は別の問題です。黙秘の意味は、黙秘権で扱っています。

上告は棄却・不受理となり(最高裁第三小法廷令和5年1月18日決定)、この判決は確定しています。最高裁は、弁護人の立会いの問題について実質的な判断を示していません。判例集未登載の一事例であり、他の事件にそのまま当てはまるものではありません。

他方で、長期の任意捜査で客観証拠の収集や関係者の聴取が済んでいれば、罪証隠滅の具体的かつ現実的な可能性は低くなる、と別件勾留や再逮捕を論じた文献は整理しています。

在宅と身柄の境目は、明確ではありません。第2で述べた必要性の評価が、捜査の進み方とともに動くからです。

連絡の取れる状態を保つこと、出頭の日程を弁護人を通じて調整することは、逮捕の必要の評価に影響する事情になります。

第6 在宅なら軽く済むのか

在宅かどうかと、処分の重さは別の問題です。248条は、訴追を必要としないときに公訴を提起しないことが「できる」と定めているにすぎません。在宅だから起訴しない、と読める定めはどこにもありません。在宅のまま公判請求されることも、在宅のまま略式命令を請求されることもあります。

身体を拘束されない代わりに、手続は長くなりやすいです。仕事を続けながら、次の呼び出しがいつ来るかわからない状態が続きます。この長さは法律が期限を置いていないことの結果であって、事件が軽く扱われていることの表れではありません。

有罪の裁判を受けた場合に残る前科の扱いは、前科で扱っています。

第7 よくある質問

在宅事件のあいだに、引っ越しや長期の出張はできるのか

問題になるのは、捜査機関からの連絡と出頭の求めに応じられる状態を保てるかどうかです。出頭の求めに応じられない状態が続けば、逃亡の徴表と受け取られることがあります。転居や長期の出張が決まっているときは、進め方を弁護人と相談して決めることになります。

取調べで作られた調書に、署名押印しなければならないのか

署名押印は拒めます。供述は調書に録取され、その調書は閲覧させるか読み聞かせたうえで、誤りがないかどうかを問われます(刑事訴訟法198条3項・4項)。内容が違うと感じたときは、増減変更の申立てができ、申し立てた内容は調書に記載されます。

誤りがないと申し立てたときに、署名押印を求められます。拒めば、署名押印を求めることはできないと定められています(同条5項)。

在宅事件でも国選弁護人はつくのか

被疑者の段階では、在宅事件に国選弁護人は付きません。被疑者に国選弁護人を付けるのは、勾留状が発せられている場合です(刑事訴訟法37条の2第1項)。貧困その他の事由により弁護人を選任できないときは、本人の請求により、裁判官が弁護人を付さなければならないと定められています。

逮捕も勾留もされていない在宅事件は、この要件にあたりません。在宅のまま捜査が進むあいだに弁護人を付けるかどうかは、本人が選任するかどうかによります。


在宅で捜査が進んでいる事件のご相談は、当事務所でも受けています。相談の方法と費用は、費用のご案内をご覧ください。

参考文献

  • 高橋康輔『情状弁護アドバンス』(現代人文社、2019年)第1章「任意捜査」42〜47頁
  • 愛知県弁護士会刑事弁護委員会編『勾留準抗告に取り組む〔第2版〕160事例からみる傾向と対策』(現代人文社、2025年)第1部第2章 佐竹靖紀「捜査先行の評価」、同第6章 古田宜行「前科前歴・終局処分の見込みの評価」(併載コラムを含む)
  • 水野遼『ノラネコ弁護士直伝 刑事弁護Ⅰ 捜査弁護 〜持続可能な刑事弁護であるために〜』(自費出版、2026年)
  • 黒川亨子「在宅被疑者が弁護人立会いなしの取調べを拒否したところ、逮捕された事例」新・判例解説Watch 刑事訴訟法 No. 157(TKCローライブラリー、2023年1月13日掲載)
  • 名古屋高判令和4年1月19日(令和3年(ネ)第167号・判例集未登載・LEX/DB25593187)。上告審: 最高裁第三小法廷令和5年1月18日決定(上告棄却・上告受理申立て不受理)
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この記事を書いた人

レナトス法律事務所 代表弁護士/埼玉県弁護士会所属(登録番号 第64945号)
刑事事件と交通事故被害者の民事を中心に、ご相談者おひとりおひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。前職のアトム法律事務所を経て、2026年4月に独立・レナトス法律事務所を開設しました。
取扱分野:刑事弁護/交通犯罪/薬物事件/性犯罪/暴行・傷害/交通事故被害者の民事/犯罪被害者支援(拡大予定)

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