当番弁護士は、逮捕された人のもとへ、弁護士会が弁護士を一度、無料で送る制度です。逮捕された本人からでも、家族や周囲の人からでも呼ぶことができます。当番弁護士の接見は一度きりで、そのあと弁護活動を続けるには、国選か私選で弁護人をあらためて選任します。この記事は、大宮・さいたまで家族が逮捕された方に向けて、当番弁護士の呼び方と、その後の弁護人選任までを順に説明します。
第1 当番弁護士とはどんな制度か
当番弁護士とは、弁護士会が待機中の弁護士を、逮捕された人のもとへ一度、無料で派遣する制度です。
逮捕・勾留された人(以下「被疑者」といいます。)から連絡を受けると、当番日を決めてあらかじめ待機している弁護士が直ちに逮捕された被疑者のもとへ駆けつけ、無料で相談に応じる制度です。当番弁護士は、警察官などの立会いがないところで、被疑者と面会することができます。 (埼玉弁護士会「刑事事件」相談ページ)
この制度の要点は、初回の面会が無料であること、警察官の立会いがない場所で本人と会えること、そして呼べるのが本人だけに限られないことです。弁護士が立会人なしで本人と会うことを、接見といいます。
なぜ「直ちに」なのかは、逮捕直後の時間の流れを見るとわかります。逮捕された人は、まず司法警察員が48時間以内に検察官へ送致します。検察官は、送致から24時間以内に、釈放するか勾留を請求するかを決めます(刑事訴訟法203条1項・205条1項)。
原則として合計72時間で、勾留するかどうかの判断まで進みます。この短い時間に助言を受けられるかどうかが、その後の見通しに影響します。逮捕からの全体像は逮捕後の流れで説明しています。
もう一つ、混同を避けるために整理しておきます。当番弁護士は、法律に「当番弁護士」という名前で定められた制度ではありません。刑事訴訟法にあるのは、弁護士会への弁護人選任の申出(31条の2)や、身体を拘束された人が弁護士と立会人なく会える権利(接見交通権・39条)です。
当番弁護士は、この条文の枠組みの上に、各地の弁護士会が自主的につくった運営制度です。あとで出てくる国選弁護(裁判所が弁護人を付ける手続)とは、根拠も仕組みも別のものになります。
第2 当番弁護士はどうやって呼ぶのか
当番弁護士は、逮捕された本人からでも、家族や周囲の人からでも呼べます。呼び方は、誰が動くかで2つに分かれます。
1 本人が呼ぶ場合
逮捕された本人は、取調べや勾留質問の場で、「当番弁護士を呼んでほしい」と申し出ることができます。申し出る相手は、警察官、検察官、勾留質問に立ち会った裁判官などです(埼玉弁護士会「刑事事件」相談ページ)。
伝えるタイミングは一度に限られません。警察の取調べのときでも、検察官へ送致されたあとでも、勾留質問で裁判官に会うときでも、呼んでほしいと伝えられます。
2 家族・周囲の人が呼ぶ場合
家族や周囲の人は、本人と面会する前でも、当番弁護士を呼べます。この場合は、最寄りの埼玉弁護士会または各支部に電話します。受付は留守番電話で、24時間対応しています。留守番電話には、わかる範囲で次の内容を録音します。
【伝える内容(わかる範囲で)】
- ① 申込者(お電話をかける方)の氏名と連絡先
- ② 逮捕・勾留された人の氏名と、留置されている場所(警察署など)
- ③ 逮捕された理由(罪名など)
(埼玉弁護士会「刑事事件」相談ページ)
電話番号は、次のとおり地域ごとに受付窓口が分かれています。大宮・さいたまを含む埼玉県南部・東部は、埼玉弁護士会(本会)が窓口です(2026年7月時点)。
| 地域 | 受付窓口 | 電話 |
|---|---|---|
| 埼玉県南部・東部 | 埼玉弁護士会 | 048-866-9845 |
| 埼玉県西部 | 川越支部 | 049-226-3972 |
| 埼玉県北部 | 熊谷支部 | 048-521-0844 |
最新の区分と番号は、埼玉弁護士会「刑事事件」相談ページで確認できます。
連絡を受けた埼玉弁護士会は、その日の当番弁護士に出動を要請します。要請を受けた当番弁護士は、原則として当日中に、本人が留置されている警察署などへ接見に来ます。刑事弁護の実務書も、出動要請があったときは、直ちに、原則として当日中に接見しなければならないとしています(『新・刑事弁護マニュアル』)。
第3 当番弁護士は接見で何をしてくれるのか
当番弁護士は接見で、いまどういう状況にあるかを説明し、取調べにどう向き合うかを助言します。刑事弁護の実務書によれば、当番弁護士はまず、どのような経緯で接見に来たのかと、初回の接見が無料であることを伝えます。そのうえで、状況に応じて被疑者国選弁護制度や刑事被疑者弁護援助制度の概要と、その利用の仕方を説明します(『新・刑事弁護マニュアル』)。被疑者国選や援助制度を実際にどう申し込むのか、そのあと誰に弁護を頼めるのかも、この接見で確かめられます。
逮捕直後の接見には、もう一つ意味があります。取調べでは黙秘権があり、何をどう話すかは慎重に考える必要があります。当番弁護士は、この黙秘権の意味や、取調べへの向き合い方を、その場で助言します。逮捕された人が、自分の置かれた状況を法的な言葉で捉え直す、はじめの機会になります。
接見が立会人なしで行われることにも、意味があります。取調べで感じた不安や疑問を、警察官に聞かれることなく弁護士に相談できます。逮捕から勾留の判断までの72時間は、弁護人の助言が特に必要になる時期であり、早い段階で一度、状況を整理してもらえることには、大きな意味があります。
当番弁護士の接見は一度きりで、時間も限られます。事件の見通しをその場で確定できるわけではなく、今後どう進むかは、続けて選任する弁護人と詰めていくことになります。
第4 当番弁護士のあと、弁護人はどうなるのか
当番弁護士が来てくれるのは一度きりです。弁護活動を続けてもらうには、国選か私選のどちらかで、弁護人をあらためて選任します。第1で見たとおり、当番弁護士は逮捕直後の入口にあたります。その入口のあと、続けて弁護活動を担うのが、国選弁護人か私選弁護人です。
1 勾留されると被疑者国選を請求できる
被疑者国選は、勾留状が出ている被疑者が、貧困などの事由で弁護人を選任できないとき、裁判官がその請求により弁護人を付ける制度です。
被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。 ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。 (刑事訴訟法37条の2第1項)
家族がすでに私選の弁護人を選任している場合などは、この対象から外れます。
対象になるのは、勾留状が出ていることと、貧困などにより弁護人を選任できないことの2点です。平成30年(2018年)6月からは、勾留状が発せられた事件はすべて被疑者国選の対象になりました(『新・刑事弁護マニュアル』)。当番弁護士に来てもらう段階は逮捕の直後で、まだ勾留の判断が出ていないことも多く、その時点では被疑者国選を請求できません。勾留が決まってから請求できるようになる、という順番です。なお、勾留を請求された段階の被疑者も、この請求ができます(37条の2第2項)。
2 起訴の前後で国選の根拠が変わる
国選弁護には、起訴の前と後で別の条文が用意されています。起訴前の被疑者段階は被疑者国選(37条の2)、起訴後の被告人段階は被告人国選(36条)です。起訴を境に、同じ「国選」でも根拠となる条文が切り替わります。実務では、被疑者国選で付いた弁護人が、起訴後もそのまま被告人国選として弁護を続けるのが通常です。
3 費用に余裕がないときと、私選という選び方
当番弁護士に来てもらった弁護士へ、そのまま続けて頼みたいという場合もあります。勾留の決定が出るまでの間、無資力の方が弁護人を頼めるように、日本弁護士連合会の刑事被疑者弁護援助制度という仕組みがあります。この援助で付いた弁護人は、勾留が決まったあと被疑者国選へ引き継がれます。この引き継ぎは「国選弁護人への切り替え」と呼ばれています(『新・刑事弁護マニュアル』)。
一方、国費によらず、自分で弁護士を選んで依頼するのが私選弁護です。当番弁護士に来てもらった弁護士へ、そのまま私選で依頼することもできます。国選と私選の要件や費用の違いは、国選弁護と私選弁護の違いで説明しています。
被疑者国選を請求できる状態になっても、弁護人が付くかどうかは、勾留状が出ているか、資力の要件を満たすかを裁判官が確認したうえで決まります。当番弁護士を呼んだ時点で、その後の弁護人まで自動的に決まるわけではありません。
第5 大宮で家族が逮捕されたとき、家族に何ができるのか
家族にできるのは、面会や差し入れのほか、当番弁護士を呼び、弁護人の選任を進めることです。第2で説明した当番弁護士の要請は、家族からもできます。
逮捕直後の面会には、知っておきたい制約があります。家族も本人と面会できますが、接見禁止の決定が付くと、その面会が制限されることがあります。他方、弁護人(当番弁護士を含みます)との接見は、接見禁止の対象になりません。
接見禁止が付いた場合でも、本人と会えるのは弁護人です。接見禁止は、家族との面会だけでなく、手紙のやり取りにも及ぶことがあります。それでも弁護人との接見は妨げられません。家族が直接会えないときに本人とつながる手立てが残るという点で、弁護人による接見は大きな意味を持ちます。
差し入れは、衣類や本、現金などを届けられますが、方法や制限は施設によって異なります。どう差し入れればよいかは、弁護人が家族に案内します。面会や差し入れの具体的な方法は、別の記事であらためて扱う予定です。
家族として先に動けるのは、当番弁護士を呼ぶことと、そのあとの弁護人の選任に向けて準備を進めることです。当番弁護士の接見で今後の見通しや使える制度を聞いておくと、次にどう動くかを判断しやすくなります。家族が逮捕されたときにできることの全体像は、家族が逮捕されたらで説明しています。
第6 よくある質問
外国人で日本語が話せない場合でも、当番弁護士を呼べますか
呼べます。逮捕された人が外国人で日本語を話せない場合でも、日本人と同じ手続で当番弁護士を頼めます(埼玉弁護士会「刑事事件」相談ページ)。
本人や家族以外でも、当番弁護士を呼べますか
呼べます。当番弁護士を要請できるのは、逮捕された本人と家族だけでなく、友人や職場の同僚も含まれます(埼玉弁護士会「刑事事件」相談ページ)。
当番弁護士に来てもらったら、そのまま依頼しなければなりませんか
いいえ。初回の面会は無料で、そのあと正式に弁護を依頼するかどうかは自由です。面会した当番弁護士に事件の弁護を依頼することもできますし、依頼しないという選び方もできます(埼玉弁護士会「刑事事件」相談ページ)。
当番弁護士と被疑者国選は同じ制度ですか
別の制度です。当番弁護士は弁護士会が運営する制度で、逮捕された直後から呼べます。被疑者国選は、勾留状が出た被疑者に裁判官が弁護人を付ける刑事訴訟法上の手続で(37条の2)、勾留が決まってから使えます。呼べる時期も、動かす主体も異なります。
第7 本記事の前提と更新
本記事は2026年7月時点の法令・運用に基づきます。判例・法改正に応じて随時更新します。
当番弁護士は、埼玉弁護士会が運営する公的な制度です。逮捕された人のもとへ弁護士会が弁護士を送るもので、特定の法律事務所へ依頼する手続とは別のものになります。当番弁護士の要請は、埼玉弁護士会またはその各支部の窓口が受け付けています。
当番弁護士の接見を受けたあと、私選で弁護人を依頼する先を検討される場合、当事務所もその選択肢の一つです。刑事事件を扱う法律事務所として、大宮で相談を受けています。弁護士費用の考え方は弁護士費用の相場と内訳で説明しています。
- レナトス法律事務所(弁護士 横山遼/埼玉弁護士会所属)
- 所在地: 〒330-0854 埼玉県さいたま市大宮区桜木町2-902 大宮サクラスクエアモール 2F(WAW大宮)
- アクセス: JR大宮駅 西口より徒歩5分
- 電話: 050-5574-2763
参考文献
- 東京弁護士会法友全期会刑事弁護研究会『新・刑事弁護マニュアル[手続の勘所と実践知]』ぎょうせい、2022年
- 埼玉弁護士会「刑事事件」(相談ページ)https://www.saiben.or.jp/soudan/consultation/criminal.html(2026年7月時点)
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