特定少年(18・19歳)の不同意性交等と原則逆送|少年審判か刑事裁判か

18歳・19歳の少年による不同意性交等事件は、少年法上、家庭裁判所が原則として検察官へ送り返すと定められた事件にあたります(少年法62条2項2号)。同じ条文にはただし書があり、令和6年に不同意性交等で終局処理された特定少年60人のうち、検察官へ送致されたのは24人、率にして40.0%でした。この記事は、どの罪名が原則に入るのか、何が原則を外す事情になるのかを、条文・統計・付添人(少年を援助する立場。本記事では弁護士)の活動の順に説明します。

第1 少年審判で終わるのか、刑事裁判になるのか

どちらもあり得ます。ただし18歳・19歳の不同意性交等事件は、家庭裁判所が原則として検察官へ送り返すと法律で定められた事件です。少年審判で終わるには、その原則を外す説明が要ります。

1 20歳未満の事件は、いったん全部が家庭裁判所へ行く

検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第四十五条第五号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。
(少年法42条1項・後段略)

成人の事件では、捜査を終えた検察官が起訴するかどうかを決めます。20歳未満の人の事件は違います。検察官に起訴・不起訴の選択権はなく、嫌疑があれば家庭裁判所へ送ります。18歳・19歳でも、この点は変わりません。

手続の全体像は少年事件の流れで扱っています。本記事が扱うのは、家庭裁判所に事件が届いた後の流れだけです。

2 「特定少年」という区分

少年法は、18歳以上の少年を「特定少年」と呼びます(少年法62条1項)。令和3年の改正で設けられた区分で、17歳以下の少年とは扱いが分かれます。

実務書は、この立場を二面的なものとして説明します(少年事件beginners ver.2.1・183頁)。「責任ある主体として積極的な社会参加を期待される立場」でありつつ、「成長途上にあり、可塑性を有する」という二面性です。18歳・19歳の扱いが成人とも17歳以下とも異なるのは、この二面性の反映です。

3 特定少年の逆送には、3つある

家庭裁判所は、送られてきた事件を調査し、保護処分にするか検察官へ送り返すかを決めます。この送り返しを実務では「逆送」と呼びます。特定少年について、逆送には3つの類型があります。

1つは62条1項です。「その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき」に検察官へ送致するという定めで、するかどうかは家庭裁判所の判断にゆだねられます。

もう1つが62条2項です。

2.前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、特定少年に係る次に掲げる事件については、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
一.故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの
二.死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪の事件であつて、その罪を犯すとき特定少年に係るもの(前号に該当するものを除く。)
(少年法62条2項)

1号は、人を死亡させた事件です。2号が令和3年の改正で新しく加わった範囲で、不同意性交等罪はここに入ります。

3つめが、年齢超過による送致です。調査または審判の結果、本人が20歳以上に達していることが判明したときは、家庭裁判所は事件を検察官に送致しなければなりません(少年法19条2項・23条3項)。刑事処分が相当かどうかの判断を経ない、手続上の送致で、実務では「年超検送」と呼ばれます。本記事の主題である62条2項の原則逆送とは性質が異なります。

4 入口と出口を分けて読む

62条2項は、性質の違う2つの判断を重ねた条文です。柱書と各号が入口の判断、ただし書が出口の判断にあたります。

入口の判断に、事件の中身は入りません。罪名に定められた刑だけを見ます。出口の判断で初めて、動機・態様・結果・犯行後の情況・本人の性格や環境が入ってきます。

入口を決めるのは罪名であり、出口を動かすのは犯情(犯罪行為それ自体に関する事情)の重さです。 以下、この順に説明します。

18歳・19歳の事件は検察官から全件が家庭裁判所へ送られ、法定刑の下限が1年以上の罪は原則として検察官へ送致され、少年法62条2項ただし書に当たる事情が認められた場合に保護処分へ進むことを示す分岐図。

第2 どの罪名が「原則逆送」の対象になるのか

法定刑の下限が1年以上の罪です。不同意性交等罪(刑法177条1項)は下限が5年で対象に入り、不同意わいせつ罪(同176条1項)は下限が6月で対象から外れます。

1 「短期一年以上」は法定刑の下限を指す

62条2項2号は「死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪」と定めます。「短期」とは、その罪に定められた刑の下限です。

拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする。
(刑法12条1項)

下限を書かずに上限だけを定めた罪は、この規定によって下限が1月になります。したがって2号には当たりません。判定に使うのは、事件の重さではなく、条文に書かれた刑の下限だけです。

2 性交等か、わいせつか

前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
(刑法177条1項)

下限は5年です。62条2項2号に当たります。成立要件そのものは不同意性交等罪で扱っています。

不同意わいせつ罪(刑法176条1項)の法定刑は「六月以上十年以下」の拘禁刑です。下限が6月なので、2号には当たりません。同じ性犯罪でも、性交等かわいせつな行為かで入口が分かれます。

18歳未満の子に対し、その子を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて行われた場合には、刑法179条が適用されます。監護者わいせつ罪は176条1項の例により、監護者性交等罪は177条1項の例によります。下限も同じになるため、監護者性交等罪は2号に当たり、監護者わいせつ罪は当たりません。

未遂も罰せられます(刑法180条)。未遂罪の下限は各本条によるので、177条と179条2項の未遂は2号に当たります。

3 致傷が付くと、わいせつでも対象に入る

1.第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。
2.第百七十七条若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の拘禁刑に処する。
(刑法181条)

どちらも無期を含み、有期の下限も3年・6年です。わいせつ型であっても、けがの結果が加わると原則逆送の対象に入ります。 致傷が付くかどうかは、逆送された後に裁判員裁判になるかどうかにも直結します(第5の4)。

不同意わいせつ罪は法定刑の下限が6月で原則逆送の対象外、不同意性交等罪は下限5年で対象、致死傷が付くとわいせつ型でも対象になることを示す罪名別の対比表。

4 対象外の罪名でも、逆送されることはある

不同意わいせつ罪でも、家庭裁判所が検察官へ送ることはあります。62条1項が、罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときの検察官送致を定めているからです。

2号に当たるかどうかは、原則と例外のどちらから出発するかの違いです。2号に当たれば逆送が出発点になり、当たらなければ保護処分が出発点になります。どちらの場合も、逆の結論が閉ざされているわけではありません。

第3 「原則」に例外はあるのか

例外はあります。62条2項のただし書がそれにあたります。ただし、第1で触れた出口の判断は、犯情が重い事案ほど通りにくくなります。

1 ただし書が求めているもの

ただし書は、家庭裁判所が「調査の結果」次の事情を考慮して、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは逆送しない、と定めます。

【ただし書の考慮要素】

  • ① 犯行の動機、態様及び結果
  • ② 犯行後の情況
  • ③ 特定少年の性格、年齢、行状及び環境
  • ④ その他の事情

解説書は、この構造を「保護不適の推定」という言葉で説明します。20条2項ただし書についての記述ですが、同じ整理が62条2項ただし書にも示されています(実例少年法60頁)。

これは、前記の趣旨による保護不適の推定が働くことを前提として、家庭裁判所が、同項ただし書を適用して保護処分を選択するときには、保護処分の方が矯正改善に適しているというだけでなく、保護不適の推定を破る事情、すなわち、保護処分を許容し得る特段の事情が必要であると解されている
(実例少年法57頁)

つまり、保護処分のほうがこの少年には向いている、という説明だけでは足りません。推定を破る「特段の事情」を積極的に示す必要があります。

背景には、最高裁の判断があるとされます(最一小判平成9年9月18日刑集51巻8号571頁)。刑罰は保護処分よりも一般的・類型的に不利益なものだ、という前提です。そこから、保護に適さないことの具体的な説明が要る、と説明されています(実例少年法55頁、57頁)。

保護処分を選んだ判断として文献が参考に挙げる決定があります(横浜地決平成28年6月23日判時2342号118頁)。犯行時15歳の少年による親族殺害の事件で、事実審理の結果、少年法55条により事件を家庭裁判所へ移送したものです。原則逆送の対象事件ではなく、罪名も性犯罪ではありません。

決定は、まず保護処分の有効性を認めました。少年が未成熟で精神的な問題を抱えており、鑑定人らとの交流のなかでの変化から可塑性が認められることを挙げています。生育歴の影響があり、相当長期間にわたって矯正教育を受けるほうが効果的だ、とも述べました。

そのうえで、保護処分を選ぶことは社会的にも許容されると判断しています。犯行は残忍であるものの、家庭内の事件で他の親族が厳罰を求めていないことなどが理由です。解説書は、この検討が原則逆送における特段の事情の検討でも参考になる、と位置づけています(実例少年法63頁注107)。

2 考慮するのは犯情だけか

ここには考え方の対立があります。家庭裁判所の裁判官が執筆した論文は、次の2つに整理しています。

①特段の事情の有無を、まずは犯情のみで検討し、それが肯定されて初めて犯情以外の事情(特定少年の性格などの資質面、行状、環境等)も総合して刑事処分以外の措置を許容できるか否かの検討に進むことができるとする見解(犯情説又は二段階説)と、②犯情を重要な事情としつつも、犯情以外の事情も総合的に考慮して特段の事情があるといえるかを判断するという見解(総合考慮説)がある
(家庭の法と裁判56号15頁)

同論文は、②の総合考慮説のほうが条文の文言と親和的だとします(同15〜16頁)。

  • ① ただし書が、犯情と犯情以外の事情を区別せずに並べて書いていること
  • ② 冒頭に「調査の結果」と明示され、原則逆送の対象事件でも家庭裁判所調査官による社会調査が必要とされていること

実務家向けの解説書も、総合考慮説を採ります(実例少年法58頁)。62条2項と条文構造が同じ20条2項について、ただし書は犯情とそれ以外の事情を区別しておらず、犯情説は文理に反する、という理由です。

総合考慮説が実務の主流と考えられていますが、これは実務家として執筆した裁判官・弁護士の見解です。最高裁がどちらの立場を採るかを示した判例は、見当たりません。

3 犯情が重い事案ほど、必要な説明が増える

「犯情」とは、犯罪行為それ自体に関する事情、すなわち犯罪の性質、態様、被害等を指します(実例少年法35頁)。家庭裁判所調査官の論文も、犯行態様や結果、動機等を犯情とします。その軽重は、犯した罪の責任の軽重を基礎付けるものです。評価と判断を行うのは裁判官だ、とも述べています(家庭の法と裁判56号25頁)。

反対に、処遇の必要性や有効性といった、専ら要保護性に関する事情は、犯情の軽重では考慮されません(実例少年法38頁)。本人が反省しているか、家庭が受け入れられるかは、犯情そのものを軽くはしないということです。

そのうえで、犯情の重さは、ただし書の適用を受けるための説明の量を左右します。裁判官の論文は、犯情の重い事案について、成育歴や発達特性等の事情の位置づけが問われるとします。

それらが、非行に至る意思決定への非難を低下させる事情(主観的な犯情要素)と認められるかどうかです。そこまで認められなければ、特段の事情は認めにくいことが多い、と指摘されています(家庭の法と裁判56号16頁)。

4 見通しの目安として語られる整理

実務家向けの解説書のなかには、刑事裁判になった場合に実刑が見込まれるかどうかを重要な目安とする議論を紹介するものがあります。執行猶予付きの判決が想定されるという事情は、原則を覆してただし書を適用する理由になる、という整理です(実例少年法61頁)。

同書は続けて、この目安を3つに分けます(同62頁)。

  • ⑴ 執行猶予付き判決が想定される場合は、保護処分の許容性が広くなる。
  • ⑵ 少年院の収容期間の上限である3年を大幅に超える実刑が見込まれるときは、許容性が相当狭まる。
  • ⑶ 3年を大幅に超えない範囲での実刑が見込まれるときは、犯情以外の事情も総合的に考慮したうえで保護処分を許容する余地が十分にある。

裁判官の側からも近い方向の指摘は出ています。2号の対象事件は広範囲で、検察官に送致すると執行猶予付きの自由刑となる事案も相当数含まれる、という指摘です(家庭の法と裁判56号9頁)。ただし、この論文は、意見にわたる部分がすべて筆者の個人的見解である旨を冒頭に断っています(同4頁)。

第4 実際にどれだけ逆送されているのか

検察官送致の率は、施行初年の73.3%から令和6年の40.0%へ下がっています。ただし、この数字を読むには母集団の約束事が3つあります。

1 数字の読み方

数字は法務省の『犯罪白書』(原資料は最高裁判所事務総局の資料及び司法統計年報)によります。

【統計の母集団】

  • ① 「原則逆送事件」=故意に人を死亡させた罪の事件(少年法20条2項・62条2項1号)と、短期1年以上の罪の事件(同62条2項2号)の合計
  • ② 終局処理人員から、年齢超過による検察官送致を除く
  • ③ 「不同意性交等」に結果的加重犯を含まない(致傷は別の行で集計する)

つまり以下の数字は、20歳になったために送致された人を含まず、致傷が付いた事件も含まない、性交等それ自体の事件の数です。

2 不同意性交等の3年間

終局処理人員検察官送致
令和4年(4〜12月)15人11人(73.3%)
令和5年33人14人(42.4%)
令和6年60人24人(40.0%)

令和4年分は改正法の施行後9か月分で、罪名も改正前の強制性交等として集計されています。人数は15人・33人・60人と増え、令和6年には62条2項2号の対象罪名のなかで人数の多い罪名になりました(強盗致傷51人を上回ります)。白書は増加の要因を分析していません。

率で見ると、施行初年から大きく下がり、その後は4割前後で動いています。

3 保護処分の中身が変わってきている

令和5年は、保護処分18人のうち第1種少年院送致が12人、保護観察が6人でした。令和6年は保護処分33人のうち第1種少年院送致が13人、保護観察が20人です。ほかに不処分2人、審判不開始1人があります。

少年院に入る人数はほとんど変わらず、保護観察が6人から20人へ増えました。その結果、保護処分のうち社会のなかで生活しながら受ける処遇が過半に転じています。いずれも母数が小さく、年による振れが大きい数字です。

不同意性交等致傷の行が白書に現れたのは令和6年が初めてです。不同意性交等致傷が2人(検察官送致1人)、不同意わいせつ致傷が5人(検察官送致1人)でした。原則逆送の量的な中心は、致傷を伴わない性交等の事件です。

令和6年に終局処理された不同意性交等の特定少年60人(年齢超過による検察官送致を除く)のうち、検察官送致が24人、第1種少年院送致が13人、保護観察が20人、不処分2人、審判不開始1人であったことを示す内訳図。

4 62条2項2号の事件全体と比べる

62条2項2号の事件全体では、令和4年が41人中20人(48.8%)、令和5年が151人中61人(40.4%)、令和6年が183人中64人(35.0%)です。不同意性交等の率は、いずれの年もこれを上回ります。同じ2号のなかでも、性犯罪は相対的に検察官送致の率が高い罪名にあたります。

原則逆送事件全体で見ると、平成13年4月からの累計は、白書が公表する令和5年末時点で1,010人中598人(59.2%)です。実務家向けの解説書は、令和3年末までの累計を791件中501件(63.3%)と示しています(実例少年法30頁。白書とは集計の単位が異なります)。長い目で見ても、逆送される割合は下がる方向にあります。

第5 逆送されると何が起きるのか

検察官に起訴の義務が生じ、公開の法廷で成人と同じ刑事裁判を受けます。第1で述べた出口のうち、刑事処分の側へ進んだ場合の道筋です。

1 検察官は起訴しなければならない

五.検察官は、家庭裁判所から送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは、公訴を提起しなければならない。ただし、送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がないか、又は犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため、訴追を相当でないと思料するときは、この限りでない。送致後の情況により訴追を相当でないと思料するときも、同様である。
(少年法45条5号)

成人の事件では、検察官は嫌疑があっても起訴猶予にできます。逆送された事件では、それができません。嫌疑があれば起訴する義務が生じます。

起訴しなくてよいのは、ただし書と後段が定める場合に限られます。

  • ① 送致を受けた事件の一部について、公訴を提起するに足りる嫌疑がないとき(ただし書)
  • ② 犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため、訴追を相当でないと思料するとき(ただし書)
  • ③ 送致後の情況により、訴追を相当でないと思料するとき(後段)

この規定は本来20条1項による送致についてのものです。特定少年については、67条7項の読替表を使います。「第二十条第一項」を「第六十二条第一項」と読み替える定めです。そのため、62条2項による送致にも起訴の義務が及びます(実例少年法53頁)。

2 審理は公開の法廷で行われる

少年審判は非公開で行われます。逆送されて起訴されると、審理の場は公開の刑事裁判に移ります。

この違いは被害者にとっても小さくありません。被害者が公開の刑事裁判を望まない場合もある、と指摘されています(実例少年法65頁)。非公開の少年審判にとどめてほしい、という希望です。

3 報道の扱いが変わる

家庭裁判所の審判に付された少年や、少年のとき犯した罪で起訴された人については、報道に制限があります。本人が誰であるかを推知できる記事や写真を、出版物に掲載してはならないと定められています(少年法61条)。

特定少年のとき犯した罪により公訴を提起されると、この禁止は適用されなくなります(同法68条本文)。略式命令の請求がされた場合は例外です(同条ただし書)。不同意性交等罪に罰金刑はなく、略式命令の請求はあり得ないため、逆送されて起訴されれば、この例外は働きません。

4 致傷が付いた事件は裁判員裁判になる

対象は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(裁判員法)が定めています。

地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第三条の二の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一.死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件
(裁判員法2条1項1号)

不同意わいせつ等致死傷罪(刑法181条1項)と不同意性交等致死傷罪(同2項)は、いずれも無期を含みます。致傷が付いた事件は、逆送されると裁判員裁判の対象になります。

致傷が付かない不同意性交等罪(刑法177条)は、裁判員裁判の対象ではありません。62条2項2号の対象事件は、裁判員裁判の対象事件より広いものです。解説書も、当時の罪名である強制性交等罪は裁判員裁判の対象に当たらないと整理しています(実例少年法59頁)。同じ性犯罪でも、けがの結果の有無で審理の形が変わります。

第6 付添人の活動

保護処分でも足りるという説明を、環境・内省・被害者の意向という具体的な材料に置き換えて、家庭裁判所へ示します。第3で見たとおり、必要なのは推定を破る特段の事情であって、本人に向いた処遇はどちらかという比較だけでは足りません。

1 最初に確認するのは、罪名と行為の時点の年齢

当事務所では、受任した直後に次の順で入口の判定を行います。

  • ⑴ 罪名を確認します。性交等かわいせつな行為か、致傷が付いているか、未遂か。第2の整理をそのまま当てはめます。
  • ⑵ 行為の時点の年齢を確認します。62条2項2号は「その罪を犯すとき特定少年に係るもの」と定めており、判定は行為時が基準です。
  • ⑶ 2号に当たる場合は、初動から特段の事情の立証の組み立てに着手します。

入口に入る事件かどうかで、初動の弁護方針が変わります。 入口に入るなら、家庭裁判所の判断までの限られた期間を、特段の事情を示す材料づくりに充てることになります。

2 原則逆送の対象事件でも、調査官の調査は行われる

家庭裁判所調査官が執筆した論文は、この点を明確に述べています。

改正法によって拡大された原則検察官送致の対象事件(少年法62条2項)においては検察官送致が原則であるが、当然、刑事処分以外の措置を相当と認める事情を検討する必要があり、調査において非行メカニズムを解明して要保護性の有無と程度を明らかにした上で、少年の成育歴や資質面、環境面に関する情報も総合的に考慮することは変わらないと考えられる
(家庭の法と裁判56号25〜26頁)

同論文は、犯情についての裁判官の心証を関係職種の間で共有することが重要であり、適宜カンファレンスを行っていることにも触れています(同25頁)。調査官の調査と裁判官の判断は、切り離されて進むわけではありません。

調査が明らかにする「要保護性」は、通説・実務では3つの要素で説明されます(実例少年法40頁)。

  • ① 将来また非行に至る危険性があること
  • ② 保護処分によってその危険性を解消できる可能性があること
  • ③ 保護処分が本人にとって有効適切な手段であること

なお、少年院送致のような収容処遇には、より慎重な判断が求められます。初回の係属や、非行事実が重大とまではいえない場合です(同42頁)。収容を選ぶには、社会内での処遇では悪循環の改善が期待できない、という説明が要ります。

3 環境調整・内省・治療への接続を並行して進める

当事務所では、次の3つを並行して進めます。監督者の確保と帰住先の調整といった環境調整、面談を重ねての振り返りによる内省の深化、そして治療プログラムへの接続です。

治療については、引受けやアセスメントの申込みを記録に残すところまでを含めます。家庭裁判所の判断までに受診が完了していなくても、申込みの事実そのものが環境面の材料になるためです。

4 示談と被害者の意向

示談や宥恕(被害者が許す意思を示すこと)は、「犯行の結果」を事後的に減少させるものとして、また「犯行後の情況」の一つとして考慮し得るとされます。

そのうえで解説書は、示談や宥恕の趣旨を具体化して評価することが重要だとします。特に、保護処分を許容する趣旨かどうかという、処分についての被害者の意向が問題になるとされます(実例少年法65頁)。

被害者が非公開の少年審判にとどめてほしいと考えている場合も同じです。検察官送致がされれば起訴の義務が働き、検察官は起訴猶予にできません。

その点も考慮して、被害者の意向を踏まえた特段の事情の判断をすべきだ、としています(同65頁)。これらの事情を把握するには、家庭裁判所調査官による被害者調査の結果も重要になる、とも述べられています。

示談交渉そのものの流れは示談で扱っています。なお、被害者が処分についてどう考えているかは、検察官や家庭裁判所(調査官による被害者調査)が確認する事柄であり、付添人が示談の場で聴取するものではありません。

5 他の罪名の実例をどう読むか

原則逆送の対象事件でも、付添人の活動を経て保護処分に至った例は報告されています。非行時18歳の特定少年が家庭裁判所へ送致された事例です。

逆送の可能性が相当程度あったものの、少年院送致とはならず、社会内で経過を見る期間を経て保護観察となりました(季刊刑事弁護122号100〜103頁)。ただしこれは強盗致傷の事件であり、性犯罪の事例ではありません。

付添人の実務を扱った論文は、主張の組み立て方をこう整理します。保護不適の推定の程度と、それを破るに足りる特段の事情の程度は、一律ではありません。罪名ごとに異なり得ることをまず指摘します。

そのうえで、当該事案に保護処分が社会的に許容される特段の事情があることを主張します(家庭の法と裁判56号31頁)。罪名が違う実例は、この「罪名ごとに異なり得る」という前提を踏まえて読むことになります。

第7 まだわかっていないこと

62条2項2号を性犯罪について正面から解釈した公表裁判例は、見当たりません。ここまでの説明のうち、どこが確かでどこが確かでないかを整理しておきます。

1 性犯罪についてのリード判例が形成されていない

62条2項2号が施行されたのは令和4年4月1日です。本記事が参照した文献のうち、裁判例を一覧で掲げるものは、家庭の法と裁判56号の裁判官の論文2本です。

そこに挙がる決定例は、強盗・薬物・放火・偽造・殺人予備などでした。性犯罪の決定例は含まれていません。実務書のモデルケースにも性犯罪はありません。

したがって、性犯罪の事案で家庭裁判所が特段の事情をどう評価しているかを、公表された判断から確かめることはできません。本記事が説明した判断の枠組みは、条文と、他の罪名を素材とした解説を組み合わせたものです。

2 検察官送致された事案の中身が見えない

白書のこの節に載っているのは罪名別・処分別の内訳までで、犯情の類型で区分した表は出てきません。時間が経てば公表される類の数字ではない、ということです。

検察官へ送致された事案が、被害者と面識のない事案なのか、凶器を用いた事案なのかは、白書からは分かりません。

3 実刑見込みの目安が実際に使われているかが不明

第3の4で紹介した3つの区分は、解説書が別の論文の見解として引いて紹介している議論です。支持している文献が複数あるのではなく、出所は一つにさかのぼります。

第3の4で触れたとおり、裁判官の論文2本はこの物差しに触れていません。家庭裁判所がこの尺度を用いているかどうかは、文献からは判別できません。

第8 よくある質問

1 19歳のうちの事件で、家庭裁判所の判断を受ける前に20歳になったらどうなりますか

家庭裁判所は、調査の結果、本人が20歳以上であることが判明したときは、事件を検察官へ送致しなければなりません(少年法19条2項)。審判が始まった後に20歳以上と判明した場合も、23条3項が同じ規定を準用します。62条2項2号の判断とは別の理由による送致で、実務では年齢超過による検察官送致と呼ばれます。第4で挙げた統計は、この類型を除いた数字です。

2 逆送されて刑事裁判が始まった後、家庭裁判所に戻ることはありますか

制度としてはあります。裁判所は、事実審理の結果、少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、事件を家庭裁判所に移送しなければなりません(少年法55条)。

もっとも、この主張が通らなかった例もあります。強盗傷害の事件で、弁護側が少年法55条による家庭裁判所への移送を主張した例が報告されています。いずれも保護処分の許容性が否定されました(家庭の法と裁判56号32頁・公刊物未登載)。

同論文は、一部の裁判体が執行猶予判決の威嚇力などを重視したと思われる判断をし得ることも念頭に置く必要がある、と述べています。

3 逆送されなかった場合、どのような処分がありますか

特定少年の保護処分は3つです。6月の保護観察、2年の保護観察、少年院送致で、家庭裁判所は犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内でいずれかを選びます(少年法64条1項)。

罰金以下の刑に当たる罪の事件では、6月の保護観察に限られます。ここでの犯情の軽重は処分の上限を画すもので、下限を定めるものではないと説明されています(注釈少年法〔第5版〕64条)。

4 共犯者がいる場合、処分は全員同じになりますか

同じになるとは限りません。犯情の評価では、共犯事件について、行為態様のなかでその少年が果たした役割も考慮されます(実例少年法35頁)。役割が違えば犯情の評価も変わり得ます。どのように評価されるかは、家庭裁判所の判断にゆだねられます。

第9 本記事の前提と更新

本記事は2026年8月時点の法令・運用に基づきます。判例・法改正に応じて随時更新します。

参考文献

  • 河原俊也編『実例少年法』(青林書院、2023年)
  • 野原俊郎=山井翔平「特定少年に対する特例についての重要論点」家庭の法と裁判56号15〜24頁(日本加除出版、2025年)
  • 加藤学「改正少年法施行後の少年実務の諸問題」家庭の法と裁判56号4〜14頁(日本加除出版、2025年)
  • 岸本佐紀子=中村友裕「改正少年法施行後の調査実務の諸問題」家庭の法と裁判56号25〜29頁(日本加除出版、2025年)
  • 金矢拓「改正少年法施行後の付添人実務の諸問題」家庭の法と裁判56号30〜36頁(日本加除出版、2025年)
  • 多田元=川村百合=安西敦編『少年事件beginners ver.2.1』(現代人文社、2023年)
  • 勝田大貴「少年事件レポート」季刊刑事弁護122号(現代人文社、2025年)
  • 田宮裕=廣瀬健二『注釈少年法〔第5版〕』(有斐閣、2024年)
  • 法務省法務総合研究所『犯罪白書』令和5年版〜令和7年版
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この記事を書いた人

レナトス法律事務所 代表弁護士/埼玉県弁護士会所属(登録番号 第64945号)
刑事事件と交通事故被害者の民事を中心に、ご相談者おひとりおひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。前職のアトム法律事務所を経て、2026年4月に独立・レナトス法律事務所を開設しました。
取扱分野:刑事弁護/交通犯罪/薬物事件/性犯罪/暴行・傷害/交通事故被害者の民事/犯罪被害者支援(拡大予定)

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