少年事件とは|手続きの流れ・処分の種類・特定少年を弁護士が解説

少年事件とは、20歳未満の少年が起こした事件で、家庭裁判所の審判を経て保護観察・少年院送致・検察官送致等が決定されます(少年法)。2022年改正により18・19歳は特定少年として扱われ、原則逆送対象も拡大されました。本記事では、少年事件の手続の流れ・処分の種類・付添人活動を、刑事事件に注力する弁護士が解説します。

お子さんが警察に捕まった、学校の先生から「息子さんが非行で呼ばれています」と連絡が来た——そんなとき、多くのご家族が最初に口にするのは「うちの子が犯罪者になるのでしょうか」という不安です。

しかし、少年事件は大人の刑事事件とは根本的に仕組みが違います。少年法1条は「少年の健全な育成を期し」と定め、処罰ではなく立ち直りと成長の援助を目的にしています。令和5年に家庭裁判所で処分が確定した少年のうち、審判不開始と不処分を合わせた割合は実に65.5%——つまり大多数は、少年院にも保護観察にもならないまま社会に戻っています(令和6年版犯罪白書)。

もちろん、処分が厳しいケースもあります。2022年の少年法改正で18歳・19歳が「特定少年」と位置づけられ、成人と同じ刑事裁判にかけられる範囲が広がりました。実名報道の扉も一部開かれました。

この記事では、大宮で刑事事件を扱う弁護士の立場から、少年事件の手続き・処分の種類・特定少年の特別ルール・付添人弁護士と家族ができることを、データと実務家の視点を交えて解説します。


1. 少年事件とは——「罰」ではなく「育成」を目的とする手続き

少年事件と大人の刑事事件の決定的な違い

大人が罪を犯した場合、検察官が起訴し、裁判所が有罪・無罪と刑罰を決めます。そこで見られるのは「何をしたか(犯した罪の重さ)」と「どの程度の刑罰が相当か」です。

これに対して少年事件は、少年法1条が掲げる「少年の健全な育成」を目的として動きます。家庭裁判所の審判では「何をしたか(非行事実)」と同じくらい、あるいはそれ以上に「その子が今後また非行を繰り返すおそれはあるか」「どうすれば立ち直れるか」という要保護性が問われます。

少年法は、非行の背景に子どもを取り巻く困難があることを前提に、罰ではなく科学的な援助を通じて、税や年金を支える大人に成長させようとする制度です(岡田行雄編『「あなたが嫌う非行少年」に、ワタシがしたこと。』現代人文社、2025年)。

少年法が対象にする3種類の「非行少年」

少年事件というと犯罪行為をイメージしますが、少年法が対象にするのは次の3種類です。

  • 犯罪少年:14歳以上20歳未満で罪を犯した少年(実務上最も多い)
  • 触法少年:14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年(刑事責任年齢に達していないため刑事処分不可)
  • ぐ犯少年:犯罪や触法行為はしていないが、家出・深夜徘徊・飲酒喫煙等の「ぐ犯事由」にあたり、将来罪を犯すおそれがある少年

このうち、少年事件を処理できるのは全国の家庭裁判所だけです。大人のように地方裁判所で刑事裁判にかけられるには、家庭裁判所が「検察官送致(逆送)」を決定するという例外的な手続きを経る必要があります。

統計で見る少年非行の現在地

「最近は少年犯罪が増えている」と報じられがちですが、長期トレンドは減少傾向です。令和3年の刑法犯で検挙された少年は2万399人で、近年では最低水準でした(少年比11.3%)。令和5年は2万6,206人(少年比13.8%)と前年比で増加に転じましたが、昭和のピーク時と比べれば依然として低水準です(令和6年版犯罪白書)。

重要なのは、検挙された少年のその後です。全員が少年院に送られるわけでは決してありません。次章以降で具体的に見ていきます。


2. 少年事件の手続きの流れ——逮捕から処分までのタイムライン

全体像:大人の刑事事件との最大の違いは「全件送致主義」

大人の刑事事件では、軽微な事件は検察官の判断で不起訴(起訴猶予)にして手続きを打ち切れます。しかし少年事件には全件送致主義というルールがあり、警察・検察は原則としてすべての事件を家庭裁判所に送らなければなりません(少年法41条・42条)。

これは「少年の事件は処罰不要でも、立ち直りのための働きかけが必要かどうかは家庭裁判所が判断すべき」という思想に基づいています。

タイムライン表

段階 期間 身柄の場所 主な出来事
逮捕 最大72時間 警察署留置場 警察による取調べ、勾留請求か釈放かを判断
勾留(または勾留に代わる観護措置) 最長20日間(通常)/10日間(代替観護) 警察署留置場/少年鑑別所 検察官の取調べ・家裁送致の判断
家庭裁判所送致 送致と同時 検察官から家裁へ記録一式が届く
観護措置 原則2週間、1回更新で合計4週間(否認事件等は最大8週間) 少年鑑別所 心身鑑別・社会調査の実施
社会調査 観護措置期間中 家裁調査官が少年・保護者・学校等を調査
少年審判 1〜2日(通常は1日) 家庭裁判所審判廷 非公開・職権主義的審問構造で審理
処分告知 審判当日または後日 不処分・保護観察・少年院送致・検察官送致等

各段階のポイント

逮捕段階(最大72時間):この段階で弁護人(被疑者段階では「付添人」ではなく「弁護人」)が選任されます。国選弁護人制度は原則として勾留後にしか利用できないため、逮捕直後は当番弁護士制度や私選弁護を使うことになります。逮捕の流れの詳細は逮捕の流れを参照してください。

勾留または勾留に代わる観護措置:大人と違い、少年には「勾留はやむを得ない場合でなければできない」という特則があります(少年法48条1項)。実務では十分に機能していない面がありますが、弁護人が意見書を提出して勾留を争う余地があります。代わりに「勾留に代わる観護措置」(少年法43条3項)を取ることもでき、この場合は最長10日間・延長なしで、少年鑑別所に収容されます。

家庭裁判所送致:警察・検察の捜査が終わると、事件は家裁に送致されます。このタイミングで弁護人は「付添人」に切り替わります(役割が変わります)。

観護措置の決定:家裁送致日に、裁判官が観護措置(少年鑑別所への収容)を取るかどうかを判断します。取られれば通常4週間、争いのある事件では最大8週間、鑑別所で過ごすことになります。

社会調査:観護措置の期間中に、家庭裁判所調査官が少年・保護者・学校・勤務先などを調べ、「少年調査票」という書面にまとめます。この調査官の処遇意見は、審判結果を大きく左右します。

少年審判:大人の刑事裁判と違い、審判は非公開です。裁判官1人(重大事件では3人)、書記官、調査官、少年と付添人、保護者が出席し、職権主義的な審問構造で進みます。伝聞法則は適用されず、提出された書面がそのまま証拠になります。


3. 観護措置(少年鑑別所)とは——収容の目的と中の生活

少年鑑別所は刑務所ではない

「鑑別所」と聞くと刑務所のようなものを想像する方もいますが、まったく性格が違います。少年鑑別所は少年の心身を専門的に鑑別し、家庭裁判所に調査結果を提供する施設です。懲罰ではなく、処遇決定のための科学的アセスメントの場です。

観護措置の期間は原則2週間、1回更新で合計4週間が通常です。非行事実に争いがある事件などでは、さらに2回の特別更新が認められ最大8週間となることもあります(少年法17条)。

鑑別所の中での生活

鑑別所では、心理技官による面接・心理検査、法務教官による日々の観察、必要に応じて精神科医による診察が行われます。少年は個室で生活し、日中は作文・読書・運動などの日課をこなします。外部との面会は保護者・付添人弁護士ができます。

精神科医から見た鑑別所の実態

京都少年鑑別所で長年医務官を務めた定本ゆきこ医師は、鑑別所に来る少年たちの印象をこう語っています。

「思っていたより本当に普通の子ばかりでビックリしました。たしかに、悪いことはしているんですけど、面接で会うと、本当にどこにでもいるような普通の子なんですよね。外じゃ生意気なのかもしれないけど、鑑別所に来るとやっぱり弱っているっていうか、殻を脱ぐというか」(岡田行雄編『「あなたが嫌う非行少年」に、ワタシがしたこと。』現代人文社、2025年、96頁)

定本医師は、非行少年のなかに発達障害を抱えた子が相当数いることを現場で発見してきました。対人関係が苦手でいじめに追い詰められたり、コミュニケーションがうまく取れないことが誤解を招いたりして、その結果として非行に至るケースです。同医師は、こうした少年たちを「ターミナルケアの現場と同じく、人が追い詰められた極限状態にある」と表現しています。

「ターミナルケアも非行少年も、人が追い詰められた極限状態にあるっていう意味では同じなんですよね。人間にとって一番大変な時期、まさに極限状況なんです」(同前98頁)

つまり観護措置は、単に身体を拘束する場所ではなく、「荒れた心を鎮め、自分と向き合うための場所」という側面を持ちます。付添人弁護士は観護措置を常に争うのではなく、この鑑別機能の積極的意義と身体拘束の弊害を比較衡量して方針を決めます。

4. 社会調査と要保護性——家庭環境が処分を左右する理由

調査官が見ているもの

家庭裁判所調査官は、心理学・教育学・社会学・社会福祉学・法律学の素養を持つ国家公務員です。観護措置期間中、少年と複数回面接し、保護者・学校・勤務先を訪問し、ときには家庭訪問を行って、少年の生育歴・家庭環境・学校生活・交友関係・性格・知的能力などを総合的に調べます。

この調査結果は「少年調査票」としてまとめられ、処遇意見が付されて裁判官に提出されます。調査官の処遇意見は裁判官の判断に極めて大きな影響を与えるため、付添人弁護士にとって調査官との協働は最重要活動の一つです。

要保護性の3要素

少年事件で判断されるのは、非行事実だけではありません。次の3つを総合した要保護性が、処分を決める軸になります。

  • 犯罪的危険性:このまま放置すれば再び非行を繰り返すおそれ
  • 矯正可能性:保護処分などの働きかけで立ち直れる見込み
  • 保護相当性:この少年には刑事処分よりも保護処分が適しているか否か

家庭環境が重視される理由——現場の声

少年非行の現場に長く関わってきた専門家の多くが、「その子と同じ環境で育っていたら、自分もそうなっていたかもしれない」という感覚を持つと語ります。家庭が崩壊し、学校にも馴染めず、周囲に悪い文化が蔓延している——そういった環境が積み重なると、非行は「意志の弱さ」ではなく、「そこに至る必然」として見えてくることがあります。素質と環境が複合的に絡み合い、結果としてその行為に至ったという見方は、少年事件の実務感覚に近いものです。

ただし、家庭環境が安定していて交友関係も問題がない少年が、盗撮や窃盗を繰り返すケースも珍しくありません。少年非行の難しさは、単一の原因では説明できない点にあります。だからこそ、家庭裁判所の手続きは「なぜこの子がこの行為に至ったのか」を個別に丁寧に調べ、その子に必要な処遇を判断するプロセスとして設計されています。

これは感傷ではなく、Bio-Psycho-Social(BPS)モデルと呼ばれる専門家の標準的な視点です。非行の背景には、生物学的要因(発達特性・精神状態)・心理的要因(認知の偏り・自己肯定感)・社会的要因(家庭環境・学校・交友関係)が複雑に絡み合っています。

家庭裁判所の外に出る調査官

高松家庭裁判所丸亀支部で30年にわたり少年事件を担当した元家裁調査官の廣田邦義氏は、調査官の仕事の核心は「家裁の外に出ること」だと語ります。

「家裁の外、すなわち少年が実際に生活している場所や、事件が発生した現場に赴くことが、何よりも大切なのですね」(同前80頁)
廣田氏は家庭の調査で、面接室のホワイトボードに少年と保護者と一緒に3代分の家系図を書き、「おじいちゃんってどんな人だった?」と聞きながら家族の歴史をたどる手法を使っていました。親がその親からどう育てられたかが、今の子育てに連鎖していく——その構造を、少年と保護者自身が気づけるように調査を進めていたのです。

付添人弁護士は、調査官のこうした視点を尊重しつつ、少年と家族の側から見た事情を丁寧に伝える役割を担います。


5. 処分の種類——統計で見る「何が多いのか」

家庭裁判所の終局処分は、大きく5つに分かれます。令和5年の一般保護事件2万3,981人のデータで見てみます(令和6年版犯罪白書)。

(1) 審判不開始(最も多い)

調査の結果、「審判を開く必要がない」と判断される処分です。軽微な事件で、保護者の監督や調査段階での教育的働きかけ(保護的措置)で十分と見られる場合に使われます。

(2) 不処分

審判を開いたうえで「保護処分に付する必要がない」と判断される処分です。審判までの間に環境調整や内省が十分進み、再非行のおそれがなくなったと評価された場合に選ばれます。

審判不開始と不処分を合わせると全体の65.5%——少年事件の3人に2人は、この段階で実質的に手続きが終わります。

(3) 保護観察(全体の24.6%)

社会のなかで生活しながら、保護観察所の保護観察官と地域の保護司の指導を受ける処分です。一般遵守事項(住居を定める・真面目に生活する等)と特別遵守事項(被害者接近禁止・夜間外出禁止等)を守る義務があり、違反が続くと施設送致申請の対象になります。

期間は原則として20歳になるまで(特定少年は2年)です。6〜7月を目安とする短期保護観察も運用されています。

(4) 少年院送致(全体の6.6%)

少年院は刑務所ではなく、矯正教育を行う施設です。生活指導・職業指導・教科指導・体育指導・特別活動指導の5分野の教育を受けます。

少年院は次の5種類に分かれます。

  • 第1種:心身に著しい障害のない12歳以上23歳未満
  • 第2種:犯罪的傾向が進んだ16歳以上23歳未満
  • 第3種:心身に著しい障害がある12歳以上26歳未満
  • 第4種:拘禁刑の執行を受ける者
  • 第5種:特定少年の2号保護観察(施設収容決定を受けた場合)

標準的な収容期間は2年以内ですが、処遇勧告によって短期間処遇(6月以内)・特別短期間処遇(4月以内)に指定されることもあります。付添人は処遇勧告の交付を働きかけて、少しでも短い処遇を引き出すことを目指します。

(5) 検察官送致(逆送)——全体の0.73%

家庭裁判所が「刑事処分が相当」と判断した場合、事件を検察官に送り返します。これを逆送と呼びます。逆送されると、原則として検察官は起訴しなければならず、大人と同じ刑事裁判にかけられることになります(少年法20条・45条5号)。

故意の犯罪行為により被害者を死亡させた16歳以上の少年については「原則逆送事件」とされ、特段の事情がない限り逆送されます(少年法20条2項)。2022年改正で特定少年(18・19歳)については、この原則逆送の範囲がさらに拡大されました(後述)。

逆送率は全体では0.73%と例外的ですが、特定少年に限ると7.2%で、一般少年よりも明らかに高くなっています。なお、上記の各処分割合は主要5類型の数値であり、試験観察・送致猶予等を含めると合計が100%になります。


6. 特定少年(18・19歳)の特別ルール——2022年改正で何が変わったか

改正の背景と位置づけ

2022年4月、改正少年法が施行されました。民法の成年年齢が18歳に引き下げられたことと連動し、18歳・19歳を「特定少年」と位置づけて、一般の少年とは異なる扱いを一部導入したものです(少年法62条以下)。

ただし、特定少年も少年法の適用対象であることは変わりません。全件送致主義・家庭裁判所での調査と審判・保護処分の選択肢という基本構造は維持されています。成人とまったく同じ扱いになったわけではないので、誤解しないでください。

変わったこと(1):原則逆送事件の拡大

改正前の原則逆送事件は「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた16歳以上の事件」のみでした。改正後は、特定少年について短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪も原則逆送の対象に加わりました(少年法62条2項)。

これにより、強盗・強制性交等・現住建造物等放火などが原則逆送の対象になります。実際に令和5年の統計では、特定少年の逆送率は7.2%と一般少年の10倍近くに達しており、改正の影響がはっきり数字に表れています。

変わったこと(2):ぐ犯適用の除外

特定少年にはぐ犯少年の規定が適用されません(少年法65条1項)。家出や深夜徘徊・交友関係の問題等だけでは、特定少年は家庭裁判所に送られなくなりました。

変わったこと(3):保護処分における「犯情」の考慮

特定少年に対する保護処分は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で選ぶ必要があります(少年法64条1項)。

ここで重要なのは、「犯情」が処分の上限を画するものであり、下限ではないという点です。犯情が重くても直ちに重い処分が強制されるわけではなく、上限の枠内であれば少年の資質・環境に応じた柔軟な処遇選択が可能です。
特定少年の保護処分は、次の3類型に整理されました。

  • 6月の保護観察(法64条1項1号):遵守事項違反による施設収容なし
  • 2年の保護観察(法64条1項2号):遵守事項違反時に少年院収容可能(収容可能期間1年以下)
  • 少年院送致(法64条1項3号):第5種少年院が受け皿

2年の保護観察は、従来なかった「違反時に施設収容される保護観察」という特性を持ちます。収容可能期間(1年以下の範囲で家裁が決定)の短縮は付添人活動の論点になりますが、実務上の認容率は高くなく、過度な期待は禁物です。

変わったこと(4):推知報道禁止の一部解除(実名報道解禁)

改正前は、少年事件のすべてで実名・顔写真等の報道が禁止されていました(少年法61条)。

改正後は、特定少年が起訴された段階から、実名報道が解禁されます(少年法68条)。家庭裁判所での審判段階や、略式請求による起訴の場合は従来どおり禁止です。

これは特定少年本人にとって大きなリスクであり、逆送阻止の重要性を一段と高めています。

変わったこと(5):少年院収容者における割合

実態として、令和5年の少年院新収容者のうち特定少年の占める割合は49.8%に達しました。これは少年院の処遇対象者の約半数が18・19歳であることを意味します。改正により特定少年の刑事処分は厳しくなりましたが、保護処分の中心的対象であり続けていることも事実です。

特定少年でも保護処分を獲得できる余地

逆送率が上がったとはいえ、特定少年の大半は依然として保護処分または不処分・審判不開始で終結しています。犯情の重さだけで処分が決まるわけではなく、少年の更生可能性と保護の必要性が重要な判断要素であることに変わりはありません。

付添人弁護士の役割は、改正後もむしろ大きくなっています。


7. 付添人弁護士ができること

付添人は「少年の援助者」

少年事件で弁護士が果たす役割は、大人の刑事事件での「弁護人」とは少し性格が違います。家庭裁判所に事件が送られたあとは、弁護士は「付添人」として活動します。

付添人は、家庭裁判所の協力者ではなく少年の援助者——少年が自ら選ぶパートナーという位置づけです。少年の権利を守りつつ、その子にとって最も適切な処遇を一緒に考え、実現していく役割を担います。

具体的な活動

接見・面会による信頼関係構築:少年の多くは大人不信を抱えています。頻回の接見・面会で、受容的にじっくり話を聞き、ラポール(信頼関係)を築きます。ここが環境調整の出発点になります。

身体拘束の回避:勾留や観護措置が少年の学校生活・就労・家族関係に与える影響は大きいものです。意見書提出・準抗告・裁判官面談を通じて、身体拘束の回避や期間短縮を働きかけます。

環境調整:付添人活動の中核です。少年の内面への働きかけ(内省の促進)、家庭環境の調整(保護者との対話仲介)、学校・職場との交渉(退学回避・雇用継続)、帰住先の確保、被害者対応(謝罪・示談)を総合的に進めます。

社会調査への働きかけ:調査官との情報共有・問題意識のすり合わせを通じて、適切な処遇意見を引き出します。

審判活動:付添人意見書の提出や審判廷での意見陳述を行い、不処分や処遇勧告の獲得(少年院短期処遇の指定など)を目指します。

逆送阻止:原則逆送事件や特定少年の重大事件では、保護処分の教育的優位性を主張して刑事処分を回避する活動が重要になります。

保釈制度は少年事件にない

付添人活動との関連でよく質問されるのが保釈です。保釈は大人の刑事裁判(起訴後)で使える制度で、少年事件の観護措置段階では使えません。観護措置決定への異議申立て(少年法17条の2)や取消し申立てという制度は存在しますが、実務上の認容率は極めて低く、身体拘束が解かれることは稀です。


8. 家族ができること

最初に避けたい2つの失敗

お子さんが少年事件に巻き込まれたとき、保護者がつい陥りがちな対応があります。

失敗1:少年を責め続ける。「なんでこんなことをしたんだ」「家族に迷惑をかけて」と繰り返し叱責することは、ほとんどの場合逆効果です。少年は自己防衛のため殻に閉じこもり、本当の反省や内省が進みません。

失敗2:すべてを他人任せにする。弁護士・調査官・学校にすべて任せて、保護者自身は何もしないというスタンスも処分判断でマイナスに評価されます。

有効な関わり方

少年の話をまず聞く:非難や説教は後回しで、まず「そのときどう感じていたのか」「何に困っていたのか」を受容的に聞く姿勢が大事です。鑑別所・少年院で精神科医として非行少年を診てきた定本ゆきこ医師の「少年たちはみんな良い子だった。面接で会うと、本当にどこにでもいる普通の子」という言葉は、非行の表面ではなくその背景に目を向けるヒントになります。

事件を振り返り、家族の問題として共有する:BPSモデルで見たとおり、非行の背景には家庭環境も関係します。親自身の関わり方を含めて振り返ることで、処分後の再発防止につながります。

調査官への協力:家庭訪問の受入れ、面接への誠実な対応、調査官の問いかけに率直に答える姿勢が、処分判断に良い影響を与えます。

帰住環境の整備:少年が社会に戻ったときの生活環境(学校・職場・住まい・交友関係)を整えることは、要保護性の低下を示す重要な要素です。

弁護士との連携:付添人弁護士は、家族からの聴き取りや陳述書の作成、家族関係の改善支援なども行います。遠慮せず相談してください。

「見過ごせない」という感覚

少年事件に30年以上関わってきた安西教弁護士は、少年との向き合い方についてこう述べています。

少年は、大人と比べて可塑性(変化する力)がはるかに高いという点が、少年法の出発点にあります。審判までの数週間という短い期間でも、信頼できる大人と向き合うことで内省が深まり、行動が変わるケースは珍しくありません。最初に会ったときと審判が終わる頃では、同じ少年とは思えないほど変わっていることがある——これが少年事件に関わる弁護士や調査官が繰り返し語る実感です。この可塑性こそが、少年事件において保護処分が優先される本質的な理由です。

短期間で少年は変わります。家族と弁護士が連携して関わることで、審判までの数週間は、実は再出発の貴重な準備期間になります。


9. よくある質問(FAQ)

Q1. 少年事件は前科になりますか?

保護処分(保護観察・少年院送致等)は「前科」には該当しません。ただし家庭裁判所には「少年前歴」として記録が残るほか、警察・検察等の捜査機関にも「非行歴・補導歴」として記録が保管されます。いずれも再非行時の処分判断に影響します。一方、逆送されて刑事裁判で有罪となれば前科になります。

Q2. 少年院と少年刑務所は同じですか?

違います。少年院は矯正教育を行う法務省矯正局所管の施設で、刑罰ではありません。少年刑務所は、逆送・起訴後に刑事裁判で有罪となり懲役・禁錮の判決を受けた者が収容される刑務所です。

Q3. 審判に保護者は出席しなければなりませんか?

原則として保護者の出席が求められます(少年審判規則25条2項)。欠席すると不誠実と評価されるおそれがあり、特段の事情がない限り出席してください。

Q4. 学校や職場に連絡は行きますか?

警察段階では、捜査上の必要がある場合を除き、学校・職場への連絡は通常ありません。ただし、家庭裁判所の社会調査段階では、家裁調査官が過去の在籍校(小・中・高)に連絡して通知表を入手したり、担任教師や部活動顧問に聞き取り調査を行うことがあります。また、逮捕事実が報道されれば事実上知られる可能性もあります。学校・職場への対応は付添人弁護士と相談して戦略的に進めます。

Q5. 付添人弁護士の費用はどうなりますか?

事案によって異なります。一定の重大事件では国選付添人制度が利用でき、その場合の費用は原則国が負担します。それ以外は私選ですが、日弁連の少年保護事件付添援助制度を利用できる場合もあります。

Q6. 初めての非行でも少年院に送られることがありますか?

あり得ます。非行の回数だけでなく、非行事実の重大性・要保護性の程度が総合的に評価されます。重大な事件では初回でも少年院送致になる可能性があり、逆に複数回の非行でも環境調整が進んでいれば保護観察にとどまるケースもあります。

Q7. 特定少年の実名報道は絶対に出るのですか?

特定少年が略式請求以外の方法で起訴された場合、実名・顔写真等の推知報道の禁止が解除されます(少年法68条)。ただし、実際に報道するかどうかは各報道機関の判断です。家裁で保護処分や不処分になれば、実名報道は禁止されたままです。

Q8. 観護措置は必ず争うべきですか?

必ずしもそうではありません。観護措置には心身鑑別・内省の機会という積極的側面もあります。事案の内容・少年の状態・身体拘束の弊害を総合的に考慮して、付添人と相談のうえ方針を決めます。


大宮の弁護士へのご相談

お子さんが少年事件に巻き込まれた——警察から連絡が来た、逮捕された、家裁から呼出状が届いた。そんなとき、時間との勝負になります。観護措置が取られる前の身柄段階での活動、観護措置中の4週間でできる環境調整、審判までに調査官と連携して引き出す処遇意見——どれも、早く動き出すほど選択肢が広がります。

レナトス法律事務所は、大宮駅西口から徒歩5分。刑事事件に注力し、少年事件の付添人実績もあります。LINEとメールフォームは24時間Web受付(応答は営業時間内/夜間・土日祝も送信可能)。平日夜間・土日祝のご相談は事前予約をお願いします。

「うちの子は大丈夫でしょうか」「何をすればいいのでしょうか」——その不安のまま一人で抱え込まず、まずはご連絡ください。状況を丁寧にうかがい、そのお子さんにとって今取りうる最善の選択肢を一緒に考えます。

今すぐ電話する(050-5574-2763) LINEで相談する(24時間) メールフォーム(24時間)


引用・参考文献

  • 岡田行雄編『「あなたが嫌う非行少年」に、ワタシがしたこと。』現代人文社、2025年
  • 法務省『令和6年版犯罪白書』
  • 田宮裕・廣瀬健二『注釈少年法[第5版]』有斐閣
  • 『少年事件beginners ver.2.1』現代人文社、2023年
  • 名古屋高判平成12年6月29日
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この記事を書いた人

レナトス法律事務所 代表弁護士/埼玉県弁護士会所属(登録番号 第64945号)
刑事事件と交通事故被害者の民事を中心に、ご相談者おひとりおひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。前職のアトム法律事務所を経て、2026年4月に独立・レナトス法律事務所を開設しました。
取扱分野:刑事弁護/交通犯罪/薬物事件/性犯罪/暴行・傷害/交通事故被害者の民事/犯罪被害者支援(拡大予定)

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