痴漢(否認)のケースで初回接見の流れ|会話形式の実例を弁護士が解説

メイン記事「家族が逮捕されたら、初回接見の依頼を ── 私選・当番・国選、どの形でも」でご紹介した3つのステップを、痴漢(否認)のケースを題材に会話形式でご紹介します。本記事の登場人物・事案はすべて仮名・架空のものですが、ご家族の初動の判断材料としてお読みください。


ケース設定 ── 否認主張、満員電車内での出来事

本記事でご紹介するのは仮想ケースです。実在の事案・人物とは関係ない、典型的な流れに整理した架空のものです。

朝の通勤時間帯、埼玉県内を走る電車内で、30代の会社員・山田太郎さん(仮名)が前方の女性から痴漢を疑われ、駅員室を経由して警察に引き渡されます。本人は「やっていない、誤解だ」と一貫して主張していますが、現行犯逮捕として手続きが進みます。痴漢事件の根拠条文は、行為態様によって埼玉県迷惑行為防止条例違反または刑法176条の不同意わいせつ罪が問題となります。

午前11時過ぎ、配偶者の山田律子さん(仮名)のもとに警察署から連絡が入り、律子さんは知人の紹介で当事務所に電話をかけます。ここから本記事の3場面が始まります。


場面1 ── ご家族からのお電話(弁護士が直接対応)

「夫が痴漢で捕まったらしくて……」

午前11時半、レナトス法律事務所の代表番号に電話が入ります。当事務所は一人事務所で、電話には弁護士本人が出ます。

佐藤弁護士:「はい、レナトス法律事務所です。」

律子さん:「すみません、夫が……夫が痴漢で捕まったらしくて、警察から電話があって、どうしたらいいのか分からなくて……」

佐藤弁護士:「お電話ありがとうございます。弁護士の佐藤です。落ち着いてお話しいただいて大丈夫ですよ。まず、ご事情を整理させていただきたいので、いくつかお伺いしますね。ご主人のお名前と、お電話くださっているご家族さまのお名前・ご続柄を教えていただけますか。」

律子さん:「夫が山田太郎、私が妻の山田律子です。」

佐藤弁護士:「ありがとうございます。警察から電話があったとのことですが、どちらの警察署ですか。」

律子さん:「警察署……名前を聞いたのですが、動揺していて……すみません、はっきり覚えていなくて。」

佐藤弁護士:「大丈夫です、よくあることです。では、警察からお電話があったときの発信者番号を、お手元の携帯電話の着信履歴でご確認いただけますか。少しお時間いただいて構いません。」

律子さん:「はい、少しお待ちください……」

律子さんが受話器から携帯を外し、着信履歴を確認します。弁護士は1分ほど待機します。

律子さん:「048-650-0110 からでした。」

佐藤弁護士:「承知いたしました。こちらの方でお調べしますね。…大宮警察署のようですね。」

律子さん:「大宮、はい、たしかにそう言っていた気がします。」

佐藤弁護士:「では大宮警察署を前提に進めますね。警察から、被疑事実…どういう容疑で、ということについて何か説明はありましたか。」

律子さん:「電車の中で痴漢をしたということで、現行犯で、と言われました。」

佐藤弁護士:「ご主人は、その容疑について何か律子さまにお伝えになっていますか。」

律子さん:「全然ないです。今朝も普通に出て行って、いきなり警察からだったので……。」

佐藤弁護士:「承知しました。律子さんへのご連絡先は、今おかけいただいている電話番号でよろしいですか。」

律子さん:「はい。」

佐藤弁護士:「お電話を取りやすい時間帯を教えていただけますか。」

律子さん:「今日は、いつでも大丈夫です。」

佐藤弁護士:「承知いたしました。」

これからの流れと費用のご説明

佐藤弁護士:「これからの流れをご説明しますね。弁護士が警察署でご本人と接見 ── 立ち会いなしで面会できる手続きです ── を行い、事実関係を伺い、見通しと取調べの心構えをお伝えします。接見後、私から律子さんにご報告します。」

「費用のことを先にお伝えしておきますね。初回接見の費用は4万4,000円ですが、実費の見込みも含めて先に5万円をお振り込みいただく形でお願いしています。後日、実際にかかった実費に応じて精算し、差額を返金いたします。」

「順番としては、初回接見費用のお振り込みが先になります。お振り込みを確認した段階で、私が大宮警察署へ向かう形です。」

律子さん:「分かりました、すぐに振り込みます。振込先を教えていただけますか。」

佐藤弁護士:「お振り込み口座は、このお電話のあと、公式LINEでお送りしますね。」

ご家族の面会についてのご案内

律子さん:「お願いします。あの、私は夫に会えないんでしょうか……。」

佐藤弁護士:「基本的に、逮捕手続き中はご家族の面会はできませんので、難しいと思います。ただ、警察署の運用が異なるケースもありますので、まずは大宮警察署にご連絡して確認することをおすすめします。」

「先ほどの電話番号 048-650-0110 に折り返しおかけいただくと、大宮警察署の総合案内につながります。その際、『留置管理課に繋いでください』とお伝えください。」

「留置管理課につながりましたら、『今日逮捕され、そちらでお世話になっている山田太郎の妻ですが、本日面会することはできますか』とお聞きください。」

「大宮警察署の運用ですと、ほとんどのケースで『逮捕中は面会できません』とご回答があると思いますが、それでもまずは確認していただいたほうが安心です。」

律子さん:「分かりました。電話してみます。」

佐藤弁護士:「もう一点、補足させてください。初回接見は、私が一度接見し、結果をご報告するところまでが一区切りです。その後どう進めるか ── 私選で継続ご依頼いただくか、当番弁護士・国選弁護人をご利用になるか ── は律子さまにご検討いただく形で、初回接見だけで終えていただいて構いません。」

律子さん:「そうなんですね。とりあえず、お願いしたいです。」

佐藤弁護士:「承知しました。お振り込みを確認しましたら、本日中の接見に向けて動きますね。」

電話を切ったあと、弁護士は委任契約書と振込先のご案内を公式LINEで送り、入金確認後に大宮警察署へ向かいます。


場面2 ── 弁護士と本人の初回接見(大宮警察署接見室にて)

「警察で話した内容は、僕にはわからないので」

同日午後3時、佐藤弁護士が大宮警察署で接見の申し入れを行い、本人・山田太郎さんが接見室に通されます。接見室はアクリル板で仕切られた小さな部屋で、立ち会いの警察官はいません。なお、被疑者ノートは、接見の前に佐藤弁護士が留置管理課で差し入れの手続きを済ませており、すでに本人の手元にあります。

佐藤弁護士:「山田太郎さんですね。レナトス法律事務所の佐藤と申します。奥様の律子さまからご依頼をいただいて参りました。」

「ここまで警察でいろいろお話されたと思うんですけど、警察でお話した内容っていうのは僕にはわからないので、もう一度お話を聞ければと思っています。」

本人:「はい、お願いします。」

被疑事実の確認

佐藤弁護士:「まず、逮捕されたときに、被疑事実といって、山田さんがどういった事実をしたんだということを伝えられて逮捕されたかと思います。だいたい5W1Hで構成されているもので、たとえば『被疑者は何月何日、午前何時何分頃、JR何々線の電車内において、被害者のどこどこに触れるなどして、わいせつな行為をした』というような内容です。これについて、覚えている範囲で教えてください。」

本人:「えっと……今日の朝8時頃、JR京浜東北線の電車の中で、前にいた女性のお尻のあたりに手を触れて、みたいなことを言われました。場所は、たしか大宮駅とさいたま新都心駅の間です。」

佐藤弁護士:「ありがとうございます。この事実についてどのようにお考えですか。」

本人:「やっていません。本当にやっていないんです。」

佐藤弁護士:「承知しました。では、今朝のことを順を追ってお話しいただけますか。電車のどこにいらしたか、両手の状態は。」

本人:「先頭から3両目で、ドアの近くです。満員で、両手を上に上げて、右手で吊り革、左手はスマホを持って肩のあたりにありました。ニュースアプリを見ていました。」

佐藤弁護士:「スマホの操作履歴は後で重要な点になる可能性があります。きっかけは。」

本人:「電車が止まったときに、前にいた女性が振り向いて『この人、痴漢です』と。駅員室に連れて行かれて、警察が来ました。」

佐藤弁護士:「警察での取調べでは何を聞かれましたか。調書は。」

本人:「立ち位置、手の位置、過去の有無。調書は1通取られて、署名と指印をしました。最初『左手は被害者の身体に触れていた』みたいな書き方だったので、そこは『左手はスマホを持って肩のあたりにあった』に直してもらいました。」

佐藤弁護士:「訂正に応じてもらえたんですね。大事なやり取りです。あとで被疑者ノートに書き留めていただきます。」

弁護士の守秘義務について

佐藤弁護士:「ところで、僕ら弁護士は守秘義務というのがあって、山田さんから聞いた内容を勝手に他の方にお話しすることができません。それで、奥様の律子さんに対しても基本的にはこの守秘義務があります。」

「ですので、山田さんが律子さんに報告してほしくない内容っていうのは、僕の方からはお話しできません。逆に、ここはお話ししても大丈夫という部分は、僕から律子さんにお伝えします。」

「これは『守秘義務の解除』という手続きなんですが、書面ではなく口頭の手続きなんです。今、お話ししてほしくない内容ってありますか?」

本人:「うーん……特にないです。今日のことは全部、妻にも伝えてください。やっていないことを、ちゃんと伝えてほしいです。」

佐藤弁護士:「承知しました。では、本日伺った内容は基本的に律子さんにお伝えしますね。職場のことなど、伏せておきたい先が出てきたら、いつでも教えてください。」

本人:「あ、職場には、まだ言わないでほしいです。妻にも、その点はお伝えいただけますか。」

佐藤弁護士:「わかりました。職場には今の段階では知らせない、ということで律子さんにもお伝えしますね。」

配偶者の電話番号確認

佐藤弁護士:「もう一つ、確認させてください。奥様の律子さんの電話番号って、今そらで言えますか?」

本人:「えっと……すみません、携帯に登録しているので、番号自体は覚えていないです。」

佐藤弁護士:「では、僕は律子さんからお電話をいただいているのでわかります。お手元の被疑者ノートのメモ欄に書いておきましょう。」

佐藤弁護士が番号を口頭で伝え、本人がノートのメモ欄に書き写します。

佐藤弁護士:「このあと当番弁護士の先生も来ると思いますし、国選弁護人になる可能性もあります。そのどなたであっても、ご家族と連絡を取れるようにしておくことが、山田さんの今後にとって大事です。」

被疑者ノートの使い方

佐藤弁護士:「お手元のノートを開いていただけますか。これは『被疑者ノート』という、日本弁護士連合会が用意している記録ノートです。差し入れは先に済ませていますので、もう山田さんのお手元にありますね。」

本人:「はい、さきほど職員の方から渡されました。」

佐藤弁護士:「見開き2ページで1日分を記録する作りで、左ページに時間・場所・取調官・聞かれた内容・録画の有無、右ページにご自身がどう答えたか・調書の確認・訂正の有無・体調を書きます。優先していただきたいのは、聞かれた内容、調書の書きぶり、訂正の申し入れと応諾の有無の3点です。」

本人:「分かりました。書きます。」

佐藤弁護士:「ひとつ補足しますね。ノートに事件の内容そのものを書き込むことは避けてください。たとえば『自分はやった/やっていない』『当日はこうだった』というような中身です。警察官がノートを見ようとする可能性も意識しておく必要があるので、ノートには取調べでのやり取り ── 何を聞かれたか、どう答えたか、調書をどう直してもらったか ── を記録していただく形になります。」

本人:「中身そのものではなく、取調べでのやり取りですね。分かりました。」

当番弁護士と国選弁護人について

佐藤弁護士:「当番弁護士は呼ばれていますか?それと、勾留決定後の国選弁護人については、選任を申し込むことができます。これについては、両方ともお願いしておいてください。」

本人:「両方、お願いするんですね。」

佐藤弁護士:「はい。理由は次にお話ししますね。」

今回の初回接見の位置付け

佐藤弁護士:「今回、僕がここに来た目的は、お話をお伺いし、今後の手続きの説明と、仮の弁護方針をお伝えするという点までが、現時点での契約の内容です。」

「ですので、このあとも僕が山田さんの弁護人として動くかどうかは、まだ確定していません。」

「今回ここに来たことで『もう弁護士がついた』と思われてしまうと、当番弁護士や国選弁護人の選任が遅れる可能性があります。ですので、警察の方には『当番の先生もお願いしています。それと、国選の弁護人もお願いします』と伝えてください。」

「仮に、このあと引き続き私が私選で弁護士として就く形になった場合は、国選の先生は外れますので、その点はご心配されなくて構いません。」

本人:「分かりました。警察には、当番と国選、両方お願いしますと伝えます。」

取調べでの対応について(黙秘権)

佐藤弁護士:「次に、取調べでの対応です。山田さんには黙秘権 ── 不利益な供述を強要されない権利 ── があります。否認のお話なので、検討に値する選択肢だと考えています。発言は調書として残り、後で覆すのは容易ではないからです。」

「身上関係 ── お名前、ご住所、お勤め先などのご自身の属性 ── はお答えいただいて差し支えないですが、事件の内容については、いったん『弁護士と相談したうえでお答えします』と仰っていただくやり方があります。」

「黙秘権を行使しても、それ自体で不利に評価される建付けにはなっていません。話せばマイナスになり得る、話さなければゼロ、というイメージでお考えいただくと整理しやすいかもしれません。」

本人:「分かりました。事件の話は『弁護士と相談する』と言って、整理する時間をもらいます。」

佐藤弁護士:「承知しました。」

見通しのご説明 ── 「外に出られるんでしょうか」

本人:「先生、僕、外に出られるんでしょうか。」

佐藤弁護士:「お話を聞いた段階での見通しをお伝えしますね。」

「今回は否認事件ですが、痴漢事件という性質上、一般的には外に出てもおかしくないというのが現時点でのお話です。」

「具体的には3つのパターンがあります。」

「1つ目は、検察官が勾留請求を行わなかった場合。これだと釈放になります。」

「2つ目は、検察官が勾留請求をしたとしても、裁判所が請求を却下した場合。これも釈放です。」

「3つ目は、検察官が勾留請求して裁判所が却下したけれども、検察官側が準抗告という不服申し立てをして、それが認められた場合。この場合は身体拘束が続きます。逆に準抗告が棄却された場合は釈放です。」

「痴漢の否認事件でも、外に出るケースは普通にあります。ただ、検察官や裁判官によって判断が違うので、『必ず外に出られます』と断言するのは難しいです。」

「なので、いま僕らができるのは、外に出るための準備や働きかけを、しっかり今のうちにやることです。」

本人:「はい、お願いします。」

誓約書 ── 路線条項を入れたい

佐藤弁護士:「山田さんに直接ご協力いただきたいのが、誓約書の作成です。これは裁判所や検察官に対して、『こういうことをお約束するので、外に出してください』という材料になります。」

「内容はテンプレートで、証拠隠滅をしない、逃げない、呼ばれたら取り調べに応じる、というあたりが基本です。」

「今回の事案に追加で、もうひとつ条項を入れたいと思っています。それは『路線』です。」

「通勤中の事件なので、被害者の方と接触しようと思ったら、同じ時間帯に同じ路線を使うのが現実的です。だから、その路線を使わないという誓約は、裁判所への材料として強いです。」

「山田さん、今回の事件があった路線以外で通勤するというのは、現実的に可能ですか?」

本人:「会社までは、別ルートで行けます。少し時間はかかりますが、地下鉄経由で通えます。」

佐藤弁護士:「であれば、その点も手書きで誓約書に追加して、本人に書面でお願いする手続きをしますね。お振り込みの確認と委任契約のあと、誓約書の用紙をお持ちします。」

本人:「分かりました。妻の律子に、別ルートで通えるという点も伝えていただけますか。」

佐藤弁護士:「了解しました。律子さんへのご報告のなかでお伝えしますね。」

接見の締めくくり

佐藤弁護士:「最後に、律子さんへの連絡ですが、接見後、律子さまにお電話でご報告します。お伝えしておきたいことはほかにありますか。」

本人:「妻に、心配しないで。迷惑をかけてごめん、とお伝えください。それから、職場にはまだ言わないでほしい、というのも改めてお願いします。」

佐藤弁護士:「承知しました。そのままお伝えします。」

接見終了後、佐藤弁護士は留置管理課で必要な手続きを済ませてから、律子さんに電話を入れます。


場面3 ── ご家族へのご報告(接見後の電話)

「ご本人の言い分とこれからのこと」

同日午後4時半、律子さんの携帯に佐藤弁護士から電話が入ります。

佐藤弁護士:「律子さま、レナトス法律事務所の佐藤です。ご主人との接見を終えましたので、ご報告しますね。」

律子さん:「お願いします。」

守秘義務についての補足

佐藤弁護士:「ご報告の前に、ひとつだけ補足させてください。先ほど、ご本人にもお伝えしたのですが、弁護士は被疑者である山田さんとの関係で守秘義務を負っています。」

「なので、奥様の律子さんに対しても、その守秘義務の制限がかかります。山田さんに確認したうえで、お話ししていい部分と、伏せておくべき部分があります。山田さんからは『基本的に、奥さんには全部お話しして構いません』とご了承いただいているので、お話できる範囲でご報告しますね。」

「ひとつだけ、ご本人のご希望として『職場には今の段階では知らせないでほしい』というご伝言を預かっています。この点は、律子さまにもお願いできればと思います。」

律子さん:「分かりました。職場のことは私もどうしようかと思っていました。」

本人の言い分とお伝言

佐藤弁護士:「ご主人は今朝の件について『やっていない』と一貫しておっしゃっています。お話はしっかりされていました。律子さまに『心配しないでほしい』、と、いまお伝えしたとおり職場の件のご希望、というご伝言を預かっています。」

「また、誓約書の関係で、現場となった路線を使わない通勤ルートが可能かを伺ったところ、地下鉄経由で別ルートで通えるとのことでした。この点も、後で書面のお願いをするときに参考にさせていただきます。」

時間軸と手続きの見通し

佐藤弁護士:「今後の手続きですが、おそらく明日の午前中にに検察庁へ送致され、検察官による弁解録取手続きを経て、勾留請求の有無が決まります。」

「その先のパターンは3つあって、1つ目が、検察官が勾留請求を行わない場合、これは釈放です。2つ目が、検察官が勾留請求をしても、裁判所が却下した場合、これも釈放。3つ目が、裁判所が却下したけれども、検察官側が準抗告という不服申し立てをして、それが認められた場合、この場合は身体拘束が続きます。逆に準抗告が棄却されれば釈放です。」

「痴漢の否認事件で、外に出るケースは普通にあります。ただ、検察官や裁判官によって判断が違うので、『必ず』とは申し上げられないところはご理解ください。」

「今、僕らとしてやることは、外に出るための準備と働きかけです。具体的には、誓約書の作成や、ご家族の身元引受のご準備などです。」

律子さん:「身元引受というのは、私が引き受ける、ということでしょうか。」

佐藤弁護士:「はい、奥様が引受人になっていただく形が一般的です。書面の様式はこちらで用意しますので、ご署名・捺印のお願いになります。」

取調べへの対応と被疑者ノート

佐藤弁護士:「弁護方針として、事件のご質問については、いったん『弁護士と相談したうえでお答えします』と仰って整理する時間を確保していただくようお伝えしました。黙秘権の使い方の一つで、行使しても不利に評価される建付けではありません。」

「あわせて、被疑者ノートと呼ばれている日弁連が用意している記録ノートを、接見の時に太郎さんへ差し入れています。取調べでのやり取りを毎日記録していただく形です。」

進め方の3つの選択肢

佐藤弁護士:「これからの進め方ですが、3つ選択肢があります。」

「1つ目は、今回の初回接見だけで終えて、勾留決定後に国選弁護人にお願いするやり方です。費用負担はないですが、今の段階で動くことは難しいです。実際に裁判所が勾留決定をしたあとに選任される関係で、2日から3日後ぐらいに国選の先生が来ることになります。」

「ただ、ご連絡先を山田さんと共有しているので、その国選の先生が山田さんに接見したときに、律子さんの連絡先はお渡しできる状態になっています。」

「2つ目は、当番弁護士の先生のお話も聞いてみるという選択肢です。先ほど山田さんから、当番弁護士も依頼されているとお話を伺いました。僕が初回接見したタイミングでは、その先生はまだ山田さんと面会されていなかったので、このあと面会されると、おそらく律子さんにご連絡があると思います。その先生のお話も一つ参考になります。」

「3つ目は、このまま僕が継続して動くという形です。最低限、本人に手続きの流れと仮の弁護方針はお伝えしているので、初回接見自体の内容はどこの弁護士に頼まれてもだいたい同じです。山田さんに必要な知識はすでに入っている状態です。」

律子さん:「少し考える時間をいただいてもいいですか。」

佐藤弁護士:「もちろんです。明日の午前中までにお返事いただければ、いずれの選択でも間に合います。」

費用資料のご案内(LINE経由)

律子さん:「費用の資料を見せていただけますか?」

佐藤弁護士:「今回、お電話番号でのやり取りなので、メールでお送りするのが少し難しいかなと思います。」

「うちは LINE で登録していただくのが一番スムーズです。当事務所のホームページに LINE の登録ボタンがありますので、そこをタップしていただいて、お名前を入力していただければ、こちらで把握できるようにしています。」

「LINE でつながりましたら、費用の資料、委任契約書のひな型、誓約書のひな型などをまとめてお送りしますね。」

律子さん:「分かりました、ホームページから登録します。」

佐藤弁護士:「あと、追加でご質問があれば、2つ3つくらいであれば全然お答えしますので、お気軽にお聞きください。」

律子さん:「では、ひとつだけ。準抗告というのは、検察官側だけがするものですか?私たちの側からも何かできるんでしょうか。」

佐藤弁護士:「準抗告は、こちら側からも申し立てできます。たとえば、裁判所が勾留を認めた場合に、こちら側がそれを不服として準抗告する、という流れです。先ほどお話しした3つのパターンは検察官側からの準抗告のお話でしたが、こちら側の準抗告も状況によっては有力な選択肢になります。」

「引き続き僕が動く形になった場合は、勾留決定が出た時点で準抗告の要否も含めて検討します。」

律子さん:「分かりました。ありがとうございます。」

佐藤弁護士:「では、いったんここで切らせていただきますね。ホームページからの LINE 登録、よろしくお願いします。」


会話形式で見えてくる「初回接見の意義」

場面2で佐藤弁護士は、まず被疑事実を5W1Hで確認したうえで、事実関係を聴き取り(① 事実関係の聴取)、見通しと、外に出るための3つのパターンを整理しました(② 見通し)。さらに取調べの対応方針と黙秘権の意味を伝え、当番弁護士・国選弁護人と重ねてお願いする運用を説明しました(③ 手続きの概観と弁護方針)。被疑者ノートは接見前に差し入れ済みで、メモ欄に律子さんの電話番号を書き留め、ご家族との連絡経路を確立しました(④ 家族との連絡経路)。

場面3では、弁護士の守秘義務とその制限について改めて律子さんにお伝えしたうえで、本人の言い分と伝言、時間軸、進め方の3つの選択肢、費用資料の LINE 経由でのご案内まで一通りご報告しました。

4機能の詳細や私選・当番・国選の比較は、メイン記事「家族が逮捕されたら、初回接見の依頼を ── 私選・当番・国選、どの形でも」をご参照ください。手続き全体の流れは、別記事「刑事手続きの流れ|逮捕から起訴まで」で整理しています。


まとめ

痴漢(否認)のケースを題材に、ご家族からのお電話、弁護士と本人の初回接見、ご家族へのご報告という3場面を会話形式でご紹介しました。初回接見の段階で必ず私選契約に進む必要はなく、当番弁護士を改めて呼ぶ・勾留決定後の国選に切り替える・私選で継続する、いずれを選ばれても、本人にとっての初回接見の意義は同じです。本記事は仮名・架空のケースで、実際のご事案は状況に応じて変わります。


お問い合わせ

レナトス法律事務所では、初回接見のご相談を承っております。電話または当事務所ホームページの LINE 登録ボタンよりご連絡ください。お問い合わせの際は、ご本人のお名前・逮捕日時・留置されている警察署をお伝えいただけますと、初動のご案内がスムーズです。対応時間等の詳細は当事務所ホームページをご覧ください。

本記事は2026年5月時点の制度・運用を前提に記述しています。本記事に登場する人物・事案はすべて仮名・架空のものです。法改正・運用変更に応じて随時更新します。

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この記事を書いた人

レナトス法律事務所 代表弁護士/埼玉県弁護士会所属(登録番号 第64945号)
刑事事件と交通事故被害者の民事を中心に、ご相談者おひとりおひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。前職のアトム法律事務所を経て、2026年4月に独立・レナトス法律事務所を開設しました。
取扱分野:刑事弁護/交通犯罪/薬物事件/性犯罪/暴行・傷害/交通事故被害者の民事/犯罪被害者支援(拡大予定)

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