盗撮や無断撮影で捜査を受けている方、あるいはご家族が撮影行為で警察に呼ばれた方は、今とても不安な気持ちでいらっしゃるかもしれません。
「自分の行為はどの法律に該当するのか」「罰則はどのくらいなのか」――先が見えない状況で、こうした疑問を抱くのは当然のことです。
撮影行為に関する法律は1つではありません。2023年に新設された撮影罪のほか、迷惑防止条例・児童ポルノ禁止法・リベンジポルノ防止法・軽犯罪法と、複数の法律が関わります。どの法律が適用されるかは、何を撮影したか・どこで撮影したか・誰を撮影したかによって異なります。
この記事では、撮影行為で問われる犯罪について、以下のポイントをわかりやすく解説します。
- 撮影行為に関わる5つの法律の全体像と違い
- 各法律の構成要件と罰則
- 1つの行為で複数の罪が成立するケース
- 撮影データの没収・消去制度
- 日本版DBS(こども性暴力防止法)による就業制限
お急ぎの方へ
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撮影行為で問われる5つの法律
撮影行為に関する犯罪は、主に5つの法律にまたがっています。まずは全体像を一覧表で確認しましょう。
| 法律 | 対象となる行為 | 法定刑 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 性的姿態撮影等処罰法(撮影罪) | 性的部位・下着をひそかに撮影 等 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 | 2023年施行。場所の限定なし。未遂も処罰 |
| 迷惑防止条例 | 衣服で隠された下着・身体の撮影、卑わいな言動としての撮影 | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(東京都の場合) | 都道府県により内容が異なる。常習加重あり |
| 児童ポルノ禁止法 | 18歳未満の児童の性的姿態を撮影して児童ポルノを製造 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 | 「姿態をとらせ」と「ひそかに」の2類型 |
| リベンジポルノ防止法 | 私事性的画像を第三者に提供 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 提供行為のみ処罰。親告罪。撮影自体は不処罰 |
| 軽犯罪法(窃視の罪) | 住居・浴場等をひそかにのぞき見る | 拘留又は科料 | 「場所」ののぞき見が対象。撮影も含む |
どの法律が適用されるかは「何を」「どこで」「誰を」で決まる
撮影行為に適用される法律は、以下の3つの要素で決まります。
何を撮影したか
- 性的部位(性器・臀部・胸部)や下着を撮影した場合 → 撮影罪が適用され得ます
- 衣服の上からの撮影であっても → 迷惑防止条例の「卑わいな言動」に該当し得ます
- 住居や浴場といった「場所」をのぞき見た場合 → 軽犯罪法が適用され得ます
どこで撮影したか
- 撮影罪と児童ポルノ禁止法は、場所の限定がありません。公共の場でも私的な場所でも成立します
- 迷惑防止条例は、条例ごとに対象となる場所が定められています。東京都の場合は「住居・便所・浴場・更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」と「公共の場所・公共の乗物・学校・事務所等」が対象です
- 軽犯罪法は、「人の住居・浴場・更衣場・便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」に限定されます
誰を撮影したか
- 18歳未満の児童を撮影した場合 → 撮影した姿態が児童ポルノの定義(①性交・性交類似行為に係る姿態、②性器等を触る・触らせる姿態で性欲を興奮・刺激するもの、③衣服の全部又は一部を着けない姿態で殊更に性的な部位が露出・強調されているもの)に該当すれば、児童ポルノ禁止法も成立し得ます。なお、撮影罪は下着越しの撮影でも成立しますが、それだけでは児童ポルノに該当しない場合があり、両者の成立範囲は異なります
- 16歳未満の者を撮影した場合 → 撮影罪の4号(同意があっても成立)が適用され得ます
各法律の解説
撮影罪(性的姿態等撮影罪)
2023年7月に施行された性的姿態撮影等処罰法により新設された犯罪です。それまで「盗撮」を直接処罰する全国統一の法律がなかったところ、この法律により全国どこでも同じ基準で処罰されるようになりました。
法定刑は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。未遂も処罰されます。
撮影罪には4つの類型があります。
- ひそかに撮影(1号): 正当な理由なく、ひそかに性的部位や下着を撮影する行為。いわゆる「盗撮」の典型です
- 不同意状態での撮影(2号): 不同意わいせつ罪と同様の原因行為・原因事由により、同意しない意思の形成等が困難な状態で撮影する行為
- 誤信に乗じた撮影(3号): 行為の性質が性的でないと誤信させたり、特定の者以外が閲覧しないと誤信させたりして撮影する行為
- 16歳未満の者の撮影(4号): 16歳未満の者の性的姿態等の撮影。同意があっても成立します(13歳以上16歳未満の者については5歳以上の年齢差要件あり)
さらに、撮影により生成された性的影像記録を提供した場合は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、不特定多数に提供・公然陳列した場合は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金と、より重い刑罰が定められています。
撮影罪の詳しい解説は「撮影罪とは?盗撮の罰則と逮捕後の流れを弁護士が解説」をご覧ください。
迷惑防止条例
各都道府県が制定する迷惑防止条例にも、盗撮を処罰する規定があります。撮影罪が施行される前は、盗撮はもっぱらこの条例で処罰されていました。
迷惑防止条例には、大きく分けて2つの規制があります。
盗撮の規制
「人の通常衣服で隠されている下着又は身体」を写真機等を用いて撮影する行為や、撮影目的で機器を差し向け・設置する行為が処罰されます。東京都の場合、法定刑は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。常習犯の場合は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に加重されます。
「卑わいな言動」の規制
衣服の上からの撮影であっても、「卑わいな言動」として処罰される場合があります。
たとえば、ショッピングセンターで女性の臀部をズボンの上から執拗に撮影した行為について、最高裁は「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作」に当たるとして、迷惑防止条例違反の成立を認めています(最決平成20年11月10日)。
また、令和4年12月5日の最高裁決定では、衣服を着用した身体の撮影であっても、「その意図、態様、被害者の服装、姿勢、行動の状況」等を考慮し、衣服で隠されている下着・身体を撮影しようとしていると判断されるものは「卑わいな言動」に当たるとされています。
このように、迷惑防止条例は、撮影罪では直接捕捉できない行為の受け皿としての役割を果たしています。スキニーパンツ越しの臀部撮影などは、撮影罪の対象(性的部位・下着)には直接該当しない場合でも、条例で処罰され得るのです。
なお、迷惑防止条例は都道府県ごとに内容が異なるため、適用される条文や罰則が地域によって変わる点にご注意ください。
児童ポルノ禁止法(製造罪)
18歳未満の児童を対象とする撮影行為は、児童ポルノ禁止法(正式名称: 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)の児童ポルノ製造罪に該当し得ます。
児童ポルノ禁止法における製造罪には、主に2つの類型があります。
- 「姿態をとらせて」の製造(7条4項): 児童に性的な姿態をとらせて撮影する行為
- 「ひそかに」の製造(7条5項): ひそかに児童の性的な姿態を撮影する行為(いわゆる盗撮型)
いずれも法定刑は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。
さらに、提供目的で製造した場合(7条3項)も同じ法定刑であり、不特定多数への提供目的で製造した場合(7条7項)は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科と重くなります。
なお、令和6年5月21日の最高裁判決では、「姿態をとらせて」かつ「ひそかに」撮影した場合であっても、5項の製造罪で処罰できると判示されています。
児童ポルノの単純所持(7条1項)も犯罪です。自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した場合、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処されます。
児童ポルノ関連の処分の見通し
- 単純所持: 罰金処分が見込まれます。所持する量が多い場合は公判請求(正式裁判)となり、執行猶予が付くケースが多いとされています
- 児童に対する撮影行為: 不同意わいせつ罪や性的姿態等の映像の送信要求罪(刑法182条3項)が併せて成立することが多いため、公判請求されるのが通常です。初犯であれば執行猶予が付く可能性がありますが、量が多い場合は実刑になることもあります
リベンジポルノ防止法
リベンジポルノ防止法(正式名称: 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)は、2014年に制定された法律です。三鷹市で起きたストーカー殺人事件をきっかけに、議員立法により成立しました。
この法律の大きな特徴は、撮影行為そのものは処罰の対象ではないという点です。処罰されるのは、性的な画像を第三者に提供する行為です。
- 不特定多数への提供・公然陳列: 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
- ネット上で提供又は公然陳列させるなどの目的で、個別又はネットを介して提供した行為: 1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
また、撮影対象者を特定できる方法で提供することが構成要件となっています。リベンジポルノ防止法違反は親告罪であり、被害者の告訴がなければ起訴することができません。
なお、2023年に撮影罪が施行されたことにより、同意のない撮影行為そのものも処罰できるようになりました。リベンジポルノ防止法と撮影罪は補完関係にあり、撮影段階では撮影罪が、提供・拡散段階ではリベンジポルノ防止法(及び撮影罪の提供罪・公然陳列罪)が適用されます。
軽犯罪法(窃視の罪・1条23号)
軽犯罪法1条23号は、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を処罰する規定です。
法定刑は拘留又は科料であり、撮影行為に関連する犯罪の中で最も軽い刑罰です。
窃視の罪の特徴は、「場所」をのぞき見る行為が規制対象であるという点です。駅の階段で女性のスカート内をのぞき見るような行為は、「場所」をのぞいたわけではないため窃視の罪には該当しません(この場合は撮影罪や迷惑防止条例で対応されます)。
一方で、「場所」をのぞき見る行為であるため、現にその場所に人がいなくても成立します。たとえば、入浴中の女性を撮影する目的で女風呂をのぞいたが誰もいなかった場合、撮影罪は成立しませんが(撮影行為に着手していないため)、窃視の罪は成立します。
なお、カメラやスマートフォンで撮影する行為も「のぞき見る」に含まれるとされています。録画内容を再生していなくても、記録媒体に記録した時点で既遂に達します(気仙沼簡判平3.11.5参照)。
撮影行為の犯罪で注意すべきポイント
1つの行為で複数の罪が成立し得る(観念的競合)
撮影行為に関する各法律は、それぞれ保護法益(法によって守られる利益)が異なります。そのため、1つの撮影行為で複数の罪が同時に成立することがあり、この場合は「観念的競合」として処理されます。
具体的には、以下のようなケースです。
- 18歳未満の児童を盗撮した場合: 撮影罪 + 児童ポルノ製造罪(観念的競合)
- 住居に侵入して盗撮した場合: 撮影罪(又は窃視の罪)+ 住居侵入罪(牽連犯)
- 盗撮して不特定多数に画像を提供した場合: 撮影罪の提供罪 + リベンジポルノ防止法違反(観念的競合)
観念的競合の場合、実務上は法定刑の重い罪の刑罰で処断されますが、複数の罪が成立していること自体は量刑(刑の重さ)に影響を与えます。
撮影データの没収・消去制度
性的姿態撮影等処罰法は、撮影行為によって生成された映像データの没収・消去に関する制度を設けています。これは、違法に撮影されたデータが残っている限り被害が継続するという考え方に基づくものです。
没収の対象
- 撮影罪の犯罪行為により生じた物(撮影した記録媒体そのもの = 原本)
- 原本を複写した物(別の記録媒体にコピーしたデータ)
- さらに複写した物(二次複写物)も没収の対象となります
たとえば、スマートフォンで盗撮した画像をハードディスクにコピーし、さらにUSBメモリーにコピーした場合、すべてのデータが没収の対象となり得ます。
消去の手続
公訴時効が経過した場合や、被害者が公開の法廷での審理を望まない場合など、有罪判決に至らないケースでも、検察官は押収したデータの消去手続を行うことができます。リモートアクセスにより複写されたデータについても、検察官が消去命令を出すことが可能です。
この制度は、児童ポルノに係る電磁的記録やリベンジポルノに係る電磁的記録にも適用されます。
日本版DBS ― 有罪判決に伴う法的効果
2024年に成立し、2026年12月25日に施行される「こども性暴力防止法」(通称: 日本版DBS)は、教育・保育に関わる職業について、性犯罪の前科確認を義務づける制度です。
撮影罪・児童ポルノ禁止法・迷惑防止条例違反は、いずれもこの法律で定める「特定性犯罪」に該当します。
特定性犯罪で有罪判決を受けた場合、以下の期間にわたって前科の確認対象となります。
| 処分の種類 | 確認対象となる期間 |
|---|---|
| 拘禁刑(実刑) | 刑の執行終了から20年 |
| 拘禁刑(執行猶予) | 裁判確定日から10年 |
| 罰金 | 刑の執行終了から10年 |
この期間中、学校・保育所・児童養護施設等の教育保育機関や、認定を受けた学習塾・スポーツクラブ等の民間事業者は、対象者を児童と接する業務に従事させることができません。
日本版DBSは刑罰そのものではありませんが、有罪判決に伴う法的効果として、長期にわたりキャリアに影響を及ぼす可能性があります。とりわけ教育・保育関係の職に就いている方、将来就くことを希望している方にとっては、極めて大きな影響があるといえます。
よくある質問(FAQ)
犯罪になる場合があります。撮影罪(性的姿態等撮影罪)は性的部位や下着の撮影を対象としているため、衣服の上からの撮影は直接の対象とならない場合がありますが、迷惑防止条例の「卑わいな言動」に該当し得ます。最高裁も、ズボンの上から臀部を撮影した行為について「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作」として条例違反の成立を認めています(最決平成20年11月10日)。スキニーパンツ越しの臀部撮影なども、迷惑防止条例で処罰されるケースがあります。
リベンジポルノ防止法違反として、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。加えて、性的姿態撮影等処罰法の提供罪や公然陳列罪にも該当し得ます。相手が18歳未満の場合は、児童ポルノ提供罪も成立し得ます。なお、リベンジポルノ防止法は親告罪(被害者の告訴が必要)ですが、撮影罪の提供罪・公然陳列罪は非親告罪です。
主に3つの影響が考えられます。第1に、日本版DBSの施行により、教育・保育関連の職への就業が最大20年間制限される可能性があります。第2に、撮影データの没収・消去制度により、スマートフォンやパソコン等が押収され、データが消去されます。第3に、報道リスクや職場・家庭への影響も無視できません。早い段階で弁護士に相談いただくことで、逮捕の回避や示談交渉など、取り得る選択肢が広がります。詳しくは「逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れと対処法を弁護士が解説」もご覧ください。
まとめ
この記事のポイントを整理します。
- 撮影行為に関する犯罪は5つの法律にまたがり、「何を」「どこで」「誰を」撮影したかで適用される法律が異なる
- 撮影罪(2023年施行)により、盗撮は全国統一の基準で処罰されるようになった。迷惑防止条例は撮影罪で捕捉できない行為の受け皿として機能する
- 児童ポルノ禁止法は18歳未満の児童を対象とし、撮影罪と併せて成立し得る。単純所持も処罰対象
- 1つの撮影行為で複数の罪が成立する場合がある(観念的競合)
- 違法に撮影されたデータは、複写物・二次複写物を含めて没収・消去の対象となる
- 日本版DBSの施行により、有罪判決の影響が刑事処分を超えて長期にわたるキャリアにまで及ぶ時代になった
撮影行為で捜査を受けている場合、早い段階で弁護士に相談することで、適用される法令の見極め、示談交渉、不起訴に向けた活動など、多くの選択肢が生まれます。
レナトス法律事務所では、刑事事件に注力する弁護士が対応しております。撮影行為で捜査を受けている方やそのご家族の方は、お気軽にお問い合わせください。一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
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