詐欺罪で逮捕されたら弁護士に相談すべき理由【弁護士解説】

詐欺罪は10年以下の拘禁刑が科される重大な財産犯です(刑法246条)。共犯事件・特殊詐欺・組織的事件は、初犯であっても実刑判決のリスクが特に高い類型です。本記事では、詐欺事件で弁護士に相談すべき理由・示談と被害弁償の重要性・共犯関係の整理・不起訴や執行猶予を目指す弁護活動を、刑事事件に注力する弁護士が解説します。

ご家族が詐欺の疑いで逮捕された。
あるいは、ご自身が警察から呼び出しを受けている。

突然のことで、頭が真っ白になっていらっしゃるかもしれません。
「これからどうなるのか」「刑務所に入ることになるのか」と、不安な気持ちでいっぱいのことと思います。

詐欺罪は、統計上、通常第一審で有罪とされた方のうち、およそ4割以上が実刑となっています(司法統計年報 令和6年)。
決して軽い犯罪ではありません。

一方で、早期に適切な弁護活動を行えば、執行猶予の獲得や不起訴処分の可能性も十分にあります。
特に受け子・出し子として逮捕された方の場合、取調べの受け方次第で結論が大きく変わる事案も多く、逮捕直後に弁護士を呼ぶこと自体が、最も効果の高い弁護活動だと言っても過言ではありません。

この記事では、詐欺罪の基本的な内容、特殊詐欺(受け子・出し子)や持続化給付金詐欺の量刑傾向、そして弁護士による弁護活動について、できる限り具体的な数値と根拠を示しながらお伝えします。


目次

  1. 詐欺罪とは? 刑法246条の基本
  2. 詐欺罪の構成要件(成立する4つの条件)
  3. 欺罔行為の多様性 — 不作為・挙動・クレジットカード・インターネット詐欺
  4. 詐欺罪で逮捕された後の流れ
  5. 詐欺罪の量刑の実像(司法統計データ)
  6. 詐欺罪の量刑を左右する具体的事情
  7. 特殊詐欺(受け子・出し子)と「故意」の争い方
  8. 受け子・出し子の弁護戦略 — 「知らなかった」が通るケースと通らないケース
  9. 持続化給付金詐欺と補助金詐欺の法的構造
  10. 執行猶予がつく可能性
  11. 逮捕直後の弁護活動 — 最初の72時間で変わること
  12. 弁護士による弁護活動の全体像
  13. よくあるご質問(FAQ)

1. 詐欺罪とは? 刑法246条の基本

詐欺罪は、刑法第246条に定められた犯罪です。

第二百四十六条(詐欺)
1 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

嘘をついて相手をだまし、金銭や物を得れば1項詐欺、役務の提供を受けるなど「財産上の利益」を得れば2項詐欺が成立します。

刑は10年以下の拘禁刑のみで、罰金刑の規定はありません。
有罪となれば、執行猶予がつかない限り、刑務所に収容されます。

詐欺罪の保護法益は、窃盗罪・恐喝罪と同じく財物の占有ですが、被害者の意思決定の自由も含まれる点に特徴があります(城祐一郎『知能犯捜査全書』立花書房2026年・424頁)。
「嘘をついて判断を歪められ、自らの意思で財物を渡してしまった」という点に、詐欺罪の本質があります。

関連する罪

条文 罪名 内容
246条の2 電子計算機使用詐欺 コンピュータに虚偽情報・不正指令を入力して不正な利益を得る行為(10年以下の拘禁刑)
247条 背任 他人のために事務を処理する者が、任務に背いて損害を与える行為
248条 準詐欺 未成年者の知慮浅薄・心神耗弱に乗じて財物等を得る行為
249条 恐喝 脅迫により財物等を交付させる行為(10年以下の拘禁刑)
250条 未遂罪 詐欺・恐喝等の未遂も処罰される

詐欺罪には未遂処罰規定があります。だまそうとしたが気づかれて未遂に終わった場合でも、処罰の対象となります。

また、特殊詐欺事件で警察が仕組む「だまされたふり作戦」で受け子が逮捕されるケースでも、最高裁は詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めています(最決平成29年12月11日刑集71巻10号535頁)。
荷物の中身が現金でなくても、受領行為自体が詐欺を完遂する上で予定された行為である以上、既に始まった詐欺の共犯として責任を問われるという考え方です。


2. 詐欺罪の構成要件(成立する4つの条件)

詐欺罪が成立するためには、以下の4つの要素が連鎖的に必要です。

(1) 欺罔行為(ぎもうこうい)

相手に対して事実と異なることを伝える行為です。
言葉だけでなく、文書や挙動(ふるまい)による欺きも含まれます。

たとえば、支払う意思がないのに商品購入の注文をする行為は、申込み自体が「代金を支払う意思の黙示的な表明」を含むため、作為による欺罔行為と評価されます(最決昭和43年6月6日刑集22巻6号434頁)。

近時の最高裁は、詐欺罪の成立範囲について「交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ったか」というメルクマールを用いています(最決平成22年7月29日、最決平成26年3月28日)。
このため、「嘘の内容が、相手が財物を交付するかどうかの判断にとって決定的なものだったか」が争点になります。

(2) 錯誤(さくご)

欺罔行為によって、相手が事実を誤って認識した状態です。

(3) 処分行為

錯誤に基づいて、相手が自らお金や物を渡す行為です。
暴行・脅迫で奪い取る強盗や、相手に気づかれずに財物を持ち去る窃盗とは、ここが異なります。

(4) 財物・財産上の利益の移転

財物または財産上の利益が、行為者または第三者に移る結果です。

以上の4つが因果関係をもってつながって初めて、詐欺罪が成立します。
欺罔行為があっても錯誤が生じなかった、錯誤が生じても処分行為に至らなかった、などの場合は未遂に留まります。

「故意」が認められなければ成立しない

詐欺罪は故意犯です。
「だますつもりはなかった」という場合、故意が認められなければ詐欺罪は成立しません。

ただし実務では、未必の故意(「詐欺かもしれないと分かっていたが、それでもかまわないと思った」という認識)でも故意が認定されます。
特に特殊詐欺の受け子の事件では、この「未必の故意」の有無が最大の争点となります(詳しくは第7章・第8章)。


3. 欺罔行為の多様性 — 不作為・挙動・クレジットカード・インターネット詐欺

「嘘をつく」というと、相手に何か事実と異なることを言葉で伝える場面を思い浮かべますが、実務上の欺罔行為はそれよりはるかに広範です。

(1) 挙動による欺罔 — 無銭飲食・クレジットカードの不正利用

ひとつの典型例が無銭飲食です。
お金を払う意思も能力もないのに料理を注文する行為は、「料理を注文する」という挙動それ自体が、代金を支払う意思と能力があることを暗黙に表示していると評価されます(城・前掲書515頁以下)。
したがって、お店の人を明示的に騙す言葉を発していなくても、1項詐欺(料理の騙取)が成立します。

クレジットカードの不正利用も同様です。
他人名義のカードを使って加盟店で商品を購入する行為は、「自分はカードの正当な名義人である」という挙動による欺罔であり、たとえ名義人本人から使用を許されていた場合であっても、決済ができないことを認識してカードを使えば詐欺罪が成立します(最決平成16年2月9日刑集58巻2号89頁等)。
加盟店にとって、カードの利用者が名義人本人かどうかは「交付の判断の基礎となる重要な事項」に該当するためです。

(2) 不作為による詐欺 — 告知義務違反

「告げるべきことを告げなかった」ことが詐欺になる場合もあります。

たとえば、すでに重い病気にかかっていることを隠して生命保険契約を締結した場合、告知義務違反によって2項詐欺(財産上の利益としての保険契約締結)が成立し得ます。
生活保護の受給中に収入が発生したことを届け出ない行為、年金受給者の死亡を届け出ずに年金を受領し続ける行為なども、不作為による詐欺として問題となります(城・前掲書440頁以下)。

もっとも実務上は、申請書に虚偽の記載をする作為が介在していることが多く、「不作為による詐欺」として構成するまでもなく、作為の詐欺として立件されるのが通常です。

(3) インターネット詐欺・電子計算機使用詐欺

インターネット通販で商品を注文したが支払う意思がなかった、といった事案は、通常の1項詐欺として扱われます。

これに対し、人を介さずコンピュータに直接虚偽情報を入力して不正に利益を得る行為、たとえば他人の預金口座情報を使ってインターネットバンキングから自分の口座に送金する行為は、刑法246条の2(電子計算機使用詐欺)の対象です(10年以下の拘禁刑)。

QRコード決済・電子マネー・仮想通貨取引など、近年の電子的な財産移転を悪用する類型も、詐欺罪または電子計算機使用詐欺として処罰されます。

(4) 反社会的勢力の取引・口座開設

自分が反社会的勢力に属することを隠して銀行口座を開設する行為は、近時詐欺罪の成立が繰り返し認められています(城・前掲書525頁以下)。
金融機関にとって、申込者が反社会的勢力に該当するかどうかは、口座開設を認めるかの判断の基礎となる重要な事項とされているためです。

この判例の射程は広く、反社会的勢力の関係者による口座開設、融資の申込み、クレジットカードの申込み等でも詐欺罪が成立する余地があります。


4. 詐欺罪で逮捕された後の流れ

詐欺罪で逮捕された場合、以下のような手続きが進みます。

段階 期間の目安 内容
逮捕 最大72時間 警察署に留置。取調べが始まります
勾留(こうりゅう) 原則10日+延長10日 裁判所の決定により身体拘束が続きます
起訴・不起訴の判断 勾留期間中 検察官が裁判にかけるか判断します
公判(裁判) 起訴後1〜3か月程度 裁判所で審理が行われます
判決 有罪・無罪、刑罰の内容が決まります

詐欺罪には罰金刑がないため、起訴されれば原則として正式裁判になります。
略式起訴にはなりません。

また、詐欺事件は証拠隠滅や共犯者との口裏合わせのおそれがあるとして、勾留が認められやすい傾向にあります。
特に共犯者がいる事件では、長期の身体拘束に備える必要があります。

逮捕後の流れの詳細は、「逮捕後の流れ」をご覧ください。


5. 詐欺罪の量刑の実像(司法統計データ)

漠然とした「相場」ではなく、実際の統計から詐欺罪の量刑をご説明します。

司法統計(令和6年版)による実像

令和6年版の司法統計年報(第34表)によれば、全国の地方裁判所で詐欺罪の有罪判決を受けた人員は3,063人で、その内訳は以下のとおりです。

区分 人員 構成比
全部執行猶予 1,700人 55.5%
実刑 1,363人 44.5%

つまり、詐欺罪で起訴されて有罪となった方のうち、約45%が実刑です。
初犯・軽微な事案から多数犯行の組織的詐欺まで全てを平均した数字であるため、事案によって相当の幅があることに注意が必要です。

刑期の分布

有罪判決の刑期を細かく見ると、次のような分布になっています。

刑期 人員 備考
5年超〜10年以下 77人 組織的詐欺・多数犯行等
3年超〜5年以下 337人 実刑確定ライン
3年以下 522人 うち実刑162人、執行猶予360人
2年以上〜3年未満 1,054人 実刑439人、執行猶予615人
1年以上〜2年未満 984人 実刑277人、執行猶予707人
6月以上〜1年未満 66人 実刑49人、執行猶予17人

(全国地方裁判所・令和6年 司法統計年報 第34表)

3年を超える刑は執行猶予を付けることができないため、3年超の刑が言い渡された時点で実刑が確定します。

犯罪白書が示す「特殊詐欺」の厳しい実刑率

法務省の犯罪白書(令和3年版・第8編 詐欺事犯者の実態と処遇)によれば、特殊詐欺事犯者の役割別実刑率は以下のとおりです。

役割 全部実刑率
主犯・指示役 84.2%
かけ子 83.6%
犯行準備役 64.5%
受け子・出し子 54.9%

通常の詐欺事件(地裁令和2年データ)の実刑率が47.2%であるのに対し、特殊詐欺事犯者の実刑率は約67%に達しており、特殊詐欺は通常の詐欺よりもさらに厳しく扱われることが数字上も明らかです。


6. 詐欺罪の量刑を左右する具体的事情

詐欺罪の量刑は、被害金額・役割・被害弁償・前科・動機など、多数の事情を総合して決まります。
ここでは量刑に影響する主な因子を整理します(量刑データ・実務傾向に関する整理は、城下裕二「詐欺罪と量刑」長井圓編『AI時代の詐欺罪』信山社2025年471頁等を参照)。

(1) 被害金額

被害金額は量刑を決定づける最大の因子です。
城下裕二教授が特殊詐欺の裁判例(第一審)を実証的に分析したところ、実刑事案では被害額と刑期の間に次のような緩やかな対応関係が見られます(城下裕二「詐欺罪と量刑」長井圓編『AI時代の詐欺罪』信山社2025年471頁)。

被害額 第一審の刑期レンジ(実刑事案)
100万〜200万円台 拘禁刑1年2月〜3年
300万〜500万円台 拘禁刑2年6月〜3年8月
600万〜900万円台 拘禁刑2年〜5年
1,000万〜4,000万円台 拘禁刑3年〜5年
5,000万〜9,000万円台 拘禁刑4年6月〜6年
1億円台 拘禁刑7年〜12年

他方、執行猶予がついた裁判例では、被害額が100万〜200万円台のほか、600万円台・2,000万円台でも執行猶予が付された例があり、被害額が高額でも他の事情(被害弁償・役割・反省等)から実刑が回避されている場合がある点は、大きな希望です。

一般論として、実務では次のような相場感が共有されています。

  • 数十万円〜100万円程度:初犯・被害弁償済みなら執行猶予が十分視野に入る
  • 数百万円〜1,000万円:被害弁償の有無が実刑/執行猶予の分水嶺
  • 1,000万円超:実刑リスクが大きく高まる
  • 多数犯行・組織的詐欺で数千万〜億単位:実刑が強く予想される

ただしこれは一般論であり、被害弁償の状況・役割・前科によって結論は大きく変わります。

(2) 被害者数と犯行回数

1件の詐欺と、10件・20件と繰り返された詐欺とでは、社会に与える影響が異なります。
特殊詐欺や持続化給付金詐欺のように反復継続性がある事案では、件数が増えるごとに量刑は段階的に重くなり、10件を超えると執行猶予の獲得は相当困難になります。

(3) 組織内での役割

特殊詐欺では、主犯・指示役 > かけ子 > 犯行準備役 > 受け子・出し子の順で量刑が重くなる傾向がありますが、受け子・出し子であっても初犯で実刑率が55%に達している点は先述のとおりです。
「末端だから軽い」とは限らないことは十分認識しておく必要があります。

(4) 被害弁償と示談の有無

詐欺罪で執行猶予を獲得するうえで、被害弁償は量刑上最も大きな影響力を持つ情状と言って差し支えありません。
以下の違いによって量刑は顕著に変わります。

  • 被害弁償が完了し、被害者が宥恕(許し)の意思を示している
  • 被害弁償が完了したが、宥恕までは得られていない
  • 被害弁償の一部が完了している
  • 被害弁償が全く行われていない

同じ被害金額でも、被害弁償の有無で執行猶予/実刑が分かれることは珍しくありません。

(5) 前科・前歴

  • 同種前科(詐欺・窃盗等)があると、量刑は大きく重くなります。
  • 執行猶予期間中の再犯は、執行猶予の取消しを招き、前刑と合算した期間の服役につながります。
  • 前科がない初犯であっても、特殊詐欺のような類型では実刑率が高い点は要注意です。

(6) 動機の酌量可能性

  • やむを得ない事情(家族の病気・多額の借金など)があった場合は、動機面で酌量される余地があります。
  • 他方、遊興費・ギャンブル目的・安易な金儲け目的は、動機面で酌量されにくい傾向があります。

(7) 反省・更生環境

  • 犯行を認めて反省を具体的に示していること
  • 家族・雇用主の監督体制が整っていること
  • カウンセリングや依存症治療など、具体的な再犯防止の取組み
  • 被害弁償のための継続的な原資(就労先・収入)の確保

これらは、被害弁償と並び、情状弁護の中核となる要素です。


7. 特殊詐欺(受け子・出し子)と「故意」の争い方

特殊詐欺の現状

警察庁の公表によれば、令和5年の特殊詐欺の認知件数は19,033件、被害額は約411億円にのぼり、前年比で件数・被害額ともに増加傾向にあります(令和5年・暫定値)。

代表的な手口は以下のとおりです。

  • オレオレ詐欺(家族・親族を装う)
  • 架空料金請求詐欺(未払い料金等と偽る)
  • 還付金詐欺(税金・保険料の還付と偽りATMに誘導)
  • キャッシュカード詐欺盗(警察官等を装いカードを盗取)
  • 預貯金詐欺(金融機関職員等を装う)

受け子・出し子・架け子の役割分担

特殊詐欺は、指示役・架け子・受け子・出し子・回収役・見張り・運転手など、役割分担で組織的に行われます。
それぞれの役割の法的位置づけは、次のように整理できます。

役割 内容 共同正犯性
主犯・指示役 組織全体を指揮し、計画を立てる 当然に共同正犯。最も重い責任
架け子 被害者に電話をかけ欺罔する 実行行為そのもの。共同正犯
受け子 被害者から現金・カードを直接受領する 共同正犯(判例確立)
出し子 振り込まれた現金をATM等で引き出す 電子計算機使用詐欺・窃盗の共同正犯
回収役 受け子から現金を回収する 事前共謀があれば共同正犯(令和2年11月5日東京高判)
見張り・運転手 受け子の周辺警戒・送迎 共同正犯となり得る
リクルーター 受け子等の人員を集める 事案により共同正犯

かつては「受け子は幇助犯にすぎない」とする下級審もありましたが、現在では受け子の行為は詐欺を完成させるうえで構成要件上重要な部分を担うものであり、共同正犯として処罰されることが判例上確立しています。

SNSの「闇バイト」と若年層の被害

逮捕される受け子・出し子の多くは10代後半〜20代の若い世代です。
SNSの「高額日払い」「荷物の受け取りだけ」といった求人に応募し、犯罪と認識しないまま加担してしまうケースが後を絶ちません。

「知らなかった」で通るか — 故意の認定手法

受け子・出し子として逮捕された場合、「詐欺だと知らなかった」という主張は極めて重要ですが、単にそう言うだけでは通りません

実務では、被告人の自白に頼らず、客観的な情況証拠の積み上げから未必の故意が推認される運用が定着しています(東京高判平成27年1月30日、最判平成30年12月11日刑集72巻6号672頁、最判平成30年12月14日刑集72巻6号737頁等)。

裁判所が故意を推認する代表的な事情は以下のとおりです(城祐一郎『知能犯捜査全書』立花書房2026年・608頁以下)。

  1. 被害者が口頭で封筒の中身が現金であることに言及し、受け子がこれを聞いていた
  2. 被害者がほぼ例外なく高齢者であること
  3. 受け子が普段着用しないスーツ等を着て、会社員を装っていること
  4. 偽名を使っていること
  5. 指示する架け子との携帯電話をつなぎっぱなしで被害金を受領していること
  6. 架け子との会話内容と矛盾しないよう被害者と話をスムーズにやり取りしていること
  7. 書類を受け取るだけの仕事にしては日当が異常に高額であること

これらの事情が積み重なれば、「詐欺と認識していた(または、詐欺かもしれないと認識しつつ構わないと思っていた)」と認定されます。

最高裁は、「重要書類を受け取るだけで高額報酬が得られる仕事が存在する可能性は抽象的にはあるとしても、健全な社会常識に照らして、その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合」であれば、この種の弁解は通らないと明言しています(最決平成19年10月16日刑集61巻7号677頁の趣旨)。

「受領するものは何だと思っていたか」と故意の範囲

ここで注意が必要なのは、「現金を受け取るとは知らなかった。DVDや薬物だと思っていた」という弁解でも、必ずしも詐欺の故意が否定されるわけではない、という点です。

大阪高判平成30年1月12日は、「空き部屋に送付された荷物を受け取る」という行為の特性上、受け子が想定し得た犯罪類型として、薬物・わいせつ物だけでなく詐欺の被害金品も当然含まれるとし、「詐欺を排除する特段の事情がない限り」未必の故意が推認されると判示しています。

つまり、「違法なものだとは思っていたが、詐欺の金ではなく別の違法品だと思っていた」という弁解は、多くの場合は未必の故意を否定する材料にならないのです。

複数回関与した場合の「部分的故意認定」

実務上重要な論点として、複数回の受け子行為のうち、途中から詐欺と気づいたケースがあります。
この場合、「最初の1〜2回は故意なしで無罪、途中から有罪」という部分的故意認定がなされることがあります(東京高判平成28年3月11日等)。

弁護活動では、関与時期ごとに被告人の認識状態を丁寧に切り分け、最も早い認識発生時期を裏付ける事情(疑念を抱かせる出来事の不存在等)を立証していきます。

包括的共謀 — 「自分が関与していない被害」も問われる?

特殊詐欺の組織に加担した場合、自分が直接関与していない他の被害者に対する犯行についても、包括的共謀として責任を問われることがあります(東京高判令和5年1月11日等)。

裁判所は以下のような要素を総合して包括的共謀の有無を判断します。

  1. 手口の共通性
  2. 職業的反復性
  3. 道具・情報の共有
  4. 拠点の共有
  5. 協力体制
  6. 収益分配
  7. 経費の共通負担

弁護活動では、組織内での孤立性(他チームの情報から遮断されていた、報酬が他者の成果に依存しない完全歩合であった、犯行拠点・道具が排他的であった等)を客観的事実で立証し、責任範囲の限定を目指すことになります。


8. 受け子・出し子の弁護戦略 — 「知らなかった」が通るケースと通らないケース

受け子・出し子の事件は、故意の有無が最大の争点になります。
以下、実務上「通る」ケースと「通らない」ケースの典型を整理します。

「知らなかった」主張が通りにくい典型的ケース

次のような事情が積み重なっているケースでは、「知らなかった」という弁解は通用しにくいのが実情です。

  • 日当が極端に高額(数時間の作業で数万円以上)
  • スーツ・ネクタイ等の指定、偽名の使用
  • 高齢者宅・空き家・他人名義の部屋での受領
  • 受取中に指示役と携帯電話を常時接続
  • 身分証・運転免許証等の提示を避けるよう指示
  • 「サイン欄には相手の名前を書け」「驚いたふりをしろ」などの具体的指示
  • 現金・荷物を直接受領して即座に指示役・回収役に引き渡す
  • シグナル等の秘匿アプリや「飛ばし携帯」の使用

上記のような要素が複数重なっている場合、「詐欺と気づかないはずがない」という経験則により、未必の故意が強く推認されます

故意否認が成功する可能性のあるケース

他方、以下のような事情を客観的に立証できれば、故意が否定される(または未必の故意すら否定される)余地があります。

  • 依頼者が家族・親族・婚約者など、信頼する合理的理由のある人物
  • 報酬の額に合理的な説明が付く(短期単純労働の相場として認識)
  • 業務の性質について具体的な説明を受けており、通常の回収・配送業務と信じるに足りた
  • 偽名・偽装の指示を受けたことが一度もなく、実名で荷物を受領していた
  • 身分証を堂々と提示していた/受領場所が自宅や自分の職場であった
  • 普段の生活・職業との連続性があり、詐欺を疑う手掛かりが乏しかった

部分的故意認定を目指す戦略

複数回の関与がある事件では、いつ時点で「これは詐欺かもしれない」と気づいたかを丁寧に切り分けることが決定的に重要です。
たとえば、次のような主張構成が考えられます。

  • 1回目:依頼者との関係・業務説明から、違法性を認識する契機がなかった
  • 2回目:1回目と同一の条件で、特段新しい疑念を抱く事情もなかった
  • 3回目以降:受領場所が空き家に変わり、偽名の指示を受けたことから、詐欺であると認識した

裁判所がこの構成を受け入れれば、1・2回目は無罪(または故意なしでの処理)、3回目以降のみ有罪という結論になります。
被害額や量刑への影響は極めて大きく、実刑回避の現実的な戦略として重要です。

取調べ対応の要点 — 捜査側の「間接事実型」立証を意識する

受け子・出し子の事件では、取調べでの供述内容が有罪/無罪を分けることが多々あります。

録音録画時代の取調べ実務を論じた検察幹部の指摘によれば、受け子の取調べは「直接自白を押し込む」のではなく、故意を推認させる間接事実(スーツ着用・偽名使用・高額報酬・引出し行為等)を一つずつ確認していく手法に変化しており、被告人がたとえ最後まで「詐欺とは知らなかった」と否認しても、間接事実が揃えば有罪になるように組み立てられています(山田昌広「特殊詐欺の受け子等──故意に関する取調べ」『録音録画時代の取調べの技術』東京法令出版2021年112頁)。

逆に言えば、間接事実が弱い事案(たとえば偽名を使わず自宅で実名で荷物を受け取っただけ、等)では、「間接事実不十分型」として故意否認が通る余地があります。
弁護側は、捜査が何を積み上げようとしているかを把握した上で、それを崩す事情(認識していなかったことを合理的に説明する客観的事情)を提示することが必要です。

取調べに臨む際、とりわけ注意すべき点は次のとおりです。

  • 取調べで「なんとなく詐欺かもしれないとは思っていた」と安易に認めない
  • 自分の認識状態を、具体的な時点・出来事と結びつけて正確に述べる
  • 誘導的な取調べに対しては、必要に応じて黙秘権を行使する
  • 供述調書の読み聞かせ・署名の際には、自分が述べた内容と一致しているかを必ず確認する
  • 署名後の調書の訂正は極めて困難であるため、納得できない点は必ず訂正を求める

捜査機関側には、組織内の上位者への突き上げ捜査のため、受け子に有利な条件を提示して供述を引き出そうとする場面もあり得ます。
何を認め、何を認めないかの判断を一人で行うことは極めて困難であるため、逮捕された段階で直ちに弁護士と打ち合わせを行うことが必要です。

「だまされたふり作戦」で逮捕された場合

警察が被害者と協力して現金の入っていない荷物を受領させる「だまされたふり作戦」で逮捕されたケースでも、最高裁は詐欺未遂罪の共同正犯の成立を認めています(最決平成29年12月11日刑集71巻10号535頁)。
「現金は入っていなかったから詐欺は成立しない」という理屈は通らず、受領行為自体が詐欺の共犯行為として評価される点に注意が必要です。

この場合でも、故意の有無は別途争点となります。
「荷物の中身が何だと思っていたか」「仕事の依頼経緯はどのようなものだったか」等の事情を丁寧に立証することが、やはり鍵となります。


9. 持続化給付金詐欺と補助金詐欺の法的構造

コロナ禍で設けられた持続化給付金制度を悪用した詐欺事件は、多数が摘発されました。
現在も捜査が続いている案件があり、数年前の行為について警察から呼び出しを受ける方もいらっしゃいます。

(1) 詐欺罪と補助金適正化法違反 — どちらで起訴されるか

補助金を不正に受給した場合、論理的には次の2つの罪名があり得ます。

罪名 法定刑
刑法246条1項(詐欺罪) 10年以下の拘禁刑
補助金適正化法29条1項(補助金等不正受交付罪) 5年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金

この両者の関係について、かつては補助金適正化法が詐欺罪の特別法であり、詐欺罪の成立が排除されるという見解が有力でした。
しかし現在の実務では、佐伯仁志教授(中央大学法科大学院)の見解に基づき、両者の関係は「択一関係」すなわちどちらで起訴してもよい関係と整理されています(佐伯仁志「補助金の不正受給と詐欺罪の関係について」研修700号71頁以下)。

検察実務は、立証の容易さ・両罰規定の適用・罰金刑の存在の可否などを総合考慮して、どちらで起訴するかを選択しています。
近時の実務・判例においても、この佐伯教授の見解を踏まえ、補助金適正化法違反が成立する場合であっても詐欺罪で起訴することが認められています。

実際、持続化給付金の不正受給事案では、法定刑の重い詐欺罪で起訴されるのが通常です。

(2) 犯行件数による量刑の分岐

持続化給付金詐欺の量刑について、神戸地裁本庁・支部等の判決を網羅的に分析した実証研究(安西二郎「持続化給付金詐欺の量刑」判例時報2632号・2024年)によれば、量刑は犯行件数被害弁償の状況によって顕著に分かれます。

犯行件数 量刑傾向
1件(分析対象55件) 大半が拘禁刑1年6月・執行猶予3〜4年。返還未了でも実刑は稀
10件超 原則として実刑。執行猶予獲得には全額返還+被告人負担が利得超過であることがほぼ必須

(3) 実刑ラインの目安

同論文は、著者私見として「未返還額200万円以上、かつ差引利得額100万円以上」の事案では原則として実刑が妥当であるとする厳格基準を提唱しています。

これは絶対の基準ではありませんが、実務家の体感に近い数値であり、未返還額が200万円を超えると実刑リスクが急激に高まるという目安として参照することができます。

(4) 被害金額の認定 — 水増し部分だけでなく全体か

補助金・給付金詐欺では、「水増しした部分だけが詐欺か、それとも申請額全体が詐欺か」という被害金額の認定も重要な争点になり得ます。

広島高判平成30年6月19日は、業務委託料の水増し請求の事案について、欺罔行為により交付意思全体に瑕疵が生じている以上、水増し部分だけでなく支払われた業務委託料全額が詐欺罪の対象となると判示しました。
一方、事案の性質上「水増し部分のみ」に限定される判決例もあり、被害額の認定は弁護活動で争う余地のある論点です。

(5) 執行猶予獲得のポイント

持続化給付金・補助金詐欺で執行猶予を目指す場合、以下の点が重要になります。

  • 給付金の全額返還を完了していること
  • 差引利得額が残っていないこと(手元に不正利益が一切ないこと)
  • 共犯事件では「誰がいくら弁償したか」の帰属が問題となる
  • 超過負担(共犯者の利得分まで被告人が自発的に負担)は有力な情状

被害者が国(行政機関)であるため、民間被害者との示談と異なり、個別の「宥恕」は得にくい反面、返還という客観的行為が量刑に直結します。
行政機関が弁済の受領を拒む場合は、法務局への供託も選択肢となります。


10. 執行猶予がつく可能性

執行猶予とは

執行猶予とは、有罪判決を受けても、一定期間(1〜5年)刑の執行が猶予される制度です。
猶予期間中に新たな犯罪を行わなければ、刑の言渡し自体が効力を失います。

つまり、刑務所に入らずに社会生活を続けられるということです。

執行猶予がつく条件(刑法25条)

執行猶予がつくには、以下の条件が必要です。

  • 言い渡される刑が3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金であること
  • 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがないこと(または、刑の執行終了から5年以上経過していること)

詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑ですが、判決で3年以下の拘禁刑が言い渡されれば、執行猶予がつく可能性があります。

詐欺罪で執行猶予を得るために重要な事情

有利に働く事情 不利に働く事情
被害弁償が完了している 被害弁償がなされていない
被害者が宥恕(許し)している 被害額が高額
初犯である 前科がある
従属的な役割であった 主導的な立場であった
深い反省と更生の意欲がある 組織的・計画的な犯行
再犯防止の環境が整っている 犯行が長期・多数にわたる

前述のとおり、特殊詐欺の受け子・出し子は、初犯でも実刑率が約55%です。
社会的影響の大きさから、裁判所は厳しい姿勢で臨む傾向にあります。


11. 逮捕直後の弁護活動 — 最初の72時間で変わること

詐欺事件、とりわけ特殊詐欺の受け子・出し子事件では、逮捕直後の72時間で結果が大きく変わることが少なくありません。
以下、「何を急ぐべきか」を時系列でご説明します。

(1) 逮捕〜48時間以内 — 取調べ方針の決定

受け子・出し子として逮捕された場合、警察は早期に以下の事項を供述させようとします。

  • 仕事に応募した経緯・報酬額
  • どこまで詐欺と認識していたか
  • 共犯者・指示役との連絡手段
  • 過去の他の犯行への関与

この段階で安易に供述すると、後日になって故意の認定を覆すことが極めて困難になります。
弁護士は、逮捕直後の接見で次のことを確認し、方針を決定します。

  • 身に覚えのある事実と、ない事実の切り分け
  • 黙秘権の行使の要否
  • 認否の方向性(全部否認/一部否認/認める)
  • 供述調書の内容確認の徹底

(2) 48〜72時間 — 勾留阻止の動き

送検後、検察官は裁判所に勾留請求を行います。
勾留されれば、原則10日(延長10日で合計20日)の長期身体拘束が続きます。
弁護人は、次のような活動で勾留阻止・早期解放を目指します。

  • 検察官に対する勾留請求をしない旨の意見
  • 裁判所に対する勾留質問への同席・勾留決定に対する準抗告
  • 身元引受人の確保と監督体制の整備
  • 逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを示す客観資料の提出

(3) 勾留決定後 — 被害弁償・示談の準備

勾留されてしまった場合でも、勾留期間中の被害弁償・示談の進捗は不起訴処分や処分の軽減に直結します。
弁護士は、被害者の連絡先を検察官経由で入手し、速やかに示談交渉を開始します。

(4) 起訴前の20日間 — 不起訴処分獲得の勝負どころ

検察官が起訴・不起訴を判断するのは、原則として勾留期間内です。
この20日間のうちに、以下の準備を整えられるかが、不起訴獲得の分かれ目になります。

  • 被害者との示談成立・宥恕文言の獲得
  • 被害弁償の完了
  • 共犯関係における役割の限定・責任範囲の明確化
  • 再犯防止に向けた環境調整

12. 弁護士による弁護活動の全体像

逮捕直後の対応だけでなく、起訴後の公判段階でもできることは数多くあります。
以下、類型別に主な弁護活動をご説明します。

(1) 身体拘束からの早期解放

詐欺事件は勾留が長期化しやすい傾向にあります。
弁護士は、証拠隠滅・逃亡のおそれがないことを具体的に主張し、勾留の回避保釈の獲得を目指します。

(2) 被害弁償と示談交渉

被害者への弁償は、量刑に最も大きく影響する要素の一つです。
弁護士が間に入ることで、以下のメリットがあります。

  • 適切な弁償額の算定
  • 被害者との円滑な交渉
  • 宥恕(許し)の意思表示を得られる可能性
  • 示談書の適切な作成

持続化給付金詐欺のように被害者が国(行政機関)の場合は、民間被害者との示談と異なり、全額返還が基本となります。
行政機関が弁済の受領を拒む場合は、法務局への供託を検討します。

(3) 故意の争い方(身に覚えがない場合)

「詐欺だとは知らなかった」という場合、弁護士は以下の活動を行います。

  • 取調べへの対応方針の策定(黙秘権の行使を含む)
  • 故意推認の情況証拠(報酬・服装・連絡手段等)に対する反論材料の収集
  • 「なぜ詐欺と気づけなかったのか」を裏付ける客観的証拠の確保
  • 複数回関与事件では、認識発生時期の切り分け(部分的故意認定の主張)
  • 公判での無罪・一部無罪主張の準備

(4) 共犯関係における責任範囲の限定

特殊詐欺事件では、組織内での位置づけや情報アクセス範囲によって、包括的共謀の範囲を限定できる可能性があります。

  • 報酬体系が他者の成果に依存しない独立性
  • 他のチーム・犯行の情報から遮断されていたこと
  • 犯行拠点・道具が排他的であったこと

これらの事情を客観的に立証し、関与した被害事実のみに責任範囲を限定する主張を行います。

(5) 被害額の確定と分割弁済の調整

多数の被害者がいる事件では、被害額の正確な確定自体が争点となることがあります。
弁護士は、検察が主張する被害額の根拠を精査し、過大な認定を防ぎます。

また、被害額が高額で一括返還が困難な場合は、分割弁済の合意を取り付け、裁判までに実質的な弁済実績を積み上げていくことも有力な情状弁護となります。

(6) 不起訴処分を目指す活動

被害弁償の完了、宥恕の意思表示、深い反省などの事情を検察官に伝え、不起訴処分を目指します。

(7) 情状弁護

起訴された場合も、以下のような事情を裁判所に伝え、できる限り軽い処分を目指します。

  • 被害弁償の状況
  • 反省の深さと具体的な更生計画
  • 家族・雇用主の監督体制
  • 犯行に至った経緯(動機の酌量可能性)
  • 共犯事件における役割の限定

13. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 詐欺罪で逮捕されたら、必ず刑務所に入ることになりますか?

必ずしもそうではありません。
司法統計上、詐欺罪で有罪となった方のうち約55%は全部執行猶予を受けています。
初犯で被害額が比較的小さく、被害弁償が完了している場合は、執行猶予がつく可能性があります。
ただし、特殊詐欺の受け子・出し子は初犯でも実刑率が約55%と高く、楽観視は禁物です。
事案の内容によって大きく異なりますので、早めに弁護士にご相談ください。

Q2. 特殊詐欺の受け子として逮捕されました。「詐欺だと知らなかった」は通用しますか?

単に「知らなかった」と言うだけでは、認められにくいのが実情です。
高額報酬、不自然な業務内容、偽名・偽装の指示などの客観的事情から、故意が推認されるためです。
ただし、「なぜ詐欺と気づけなかったか」について具体的な客観的事情(依頼者との信頼関係・業務説明の具体性・実名使用・自宅受領など)を示すことができれば、故意が否定される余地があります。
複数回関与した場合は、最初の1〜2回は無罪・途中から有罪という部分的故意認定が争点となることもあります。
取調べの対応を誤ると後戻りが難しくなるため、できるだけ早期に弁護士と打ち合わせを行うことが重要です。

Q3. 「違法なものだとは思ったが、詐欺ではなく薬物やDVDだと思っていた」と言えば、詐欺の故意は否定されますか?

多くの場合、否定されません。
大阪高判平成30年1月12日は、空き部屋に送付された荷物を受け取るという行為の特性上、受け子が想定し得た犯罪類型として、薬物・わいせつ物だけでなく詐欺の被害金品も当然含まれるとし、「詐欺を排除する特段の事情」がない限り未必の故意が推認されると判示しています。
「違法だとは思ったがジャンルが違う」という弁解は、詐欺の故意を否定する決定打にはなりにくいのが実情です。

Q4. 持続化給付金を不正受給してしまいました。今からでも返還すれば罪は軽くなりますか?

返還は量刑に非常に大きく影響します。
判例分析では、犯行が1件であれば、被害弁償の有無を問わず、拘禁刑1年6月・執行猶予3〜4年が大半です。
他方、犯行が10件を超える場合は原則として実刑となり、執行猶予を得るには全額返還が事実上の必須条件となります。
未返還額が200万円を超えると実刑リスクが急激に高まるとの実務家の指摘もあります。
返還が遅れるほど不利に評価される傾向がありますので、できる限り早期に弁護士へご相談ください。

Q5. 補助金詐欺と補助金適正化法違反は、どう違うのですか?

法律上はどちらの罪も成立し得ますが、検察はどちらで起訴するかを選べます。
補助金適正化法29条1項違反(5年以下の拘禁刑等)と刑法の詐欺罪(10年以下の拘禁刑)は、中央大学の佐伯仁志教授の見解に基づき、どちらで起訴してもよい「択一関係」と整理されています。
検察実務では、立証の容易さや法定刑の重さ等を総合考慮し、多くの場合はより重い詐欺罪で起訴されています。

Q6. 詐欺罪で前科がつくとどうなりますか?

前科がつくと、一定の資格制限を受ける場合があります。
公務員、弁護士、医師、宅建士など、法令上「拘禁刑以上の刑に処せられた者」を欠格事由とする資格は少なくありません。
また、再度犯罪を行った場合に刑が重くなる(累犯加重)こともあります。

Q7. 「だまされたふり作戦」で現金の入っていない荷物を受け取って逮捕されました。詐欺未遂になるのですか?

はい、詐欺未遂罪の共同正犯として処罰されます。
最高裁は、受け子が詐欺組織の実行行為の一部を担っている以上、現金の入っていない荷物であっても詐欺未遂罪が成立すると判断しています(最決平成29年12月11日)。
荷物の中身が現金かどうかにかかわらず、早期に弁護士にご相談ください。

Q8. 窃盗罪(万引き)との違いは何ですか?

相手が「自分の意思で」財物を渡しているかどうかが決定的な違いです。
詐欺罪は、被害者がだまされた結果、自ら処分行為(交付)を行います。
これに対し、窃盗罪は被害者に気づかれないまま財物が持ち去られる罪です。
同じ「物を取った」行為でも、どちらに該当するかで法定刑や弁護戦略が大きく変わります。
窃盗罪については「万引き(窃盗罪)」をご覧ください。


まずは弁護士にご相談ください

詐欺事件は、早期の弁護活動が結果を大きく左右します。

とりわけ受け子・出し子の事件では、逮捕直後の取調べ対応次第で、「部分的故意認定での一部無罪」「不起訴処分」「執行猶予」といった有利な結論を目指せるかが決まります。
被害弁償、示談交渉、取調べへの対応、共犯関係における責任範囲の限定など、逮捕直後からできることは数多くあります。

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レナトス法律事務所は、大宮駅西口徒歩5分の刑事事件に注力する弁護士事務所です。

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免責事項

この記事は、2026年4月時点の法令・統計に基づいて作成しています。
数値は最高裁判所事務総局『司法統計年報』(令和6年)、法務省『犯罪白書』(令和3年版)、警察庁公表資料(令和5年暫定値)等を参照しています。
また、詐欺罪・特殊詐欺・補助金詐欺の解釈については、城祐一郎『知能犯捜査全書 理論と実務の詳解』(立花書房、2026年)、城下裕二「詐欺罪と量刑」長井圓編『AI時代の詐欺罪』(信山社、2025年)471頁、佐伯仁志「補助金の不正受給と詐欺罪の関係について」研修700号、安西二郎「持続化給付金詐欺の量刑」判例時報2632号(2024年)等を参照しています。
法改正や新たな統計公表により内容が変更される場合がありますので、最新情報は弁護士にご確認ください。
また、この記事は一般的な法律情報の提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。
具体的な事案については、必ず弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた人

レナトス法律事務所 代表弁護士/埼玉県弁護士会所属(登録番号 第64945号)
刑事事件と交通事故被害者の民事を中心に、ご相談者おひとりおひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。前職のアトム法律事務所を経て、2026年4月に独立・レナトス法律事務所を開設しました。
取扱分野:刑事弁護/交通犯罪/薬物事件/性犯罪/暴行・傷害/交通事故被害者の民事/犯罪被害者支援(拡大予定)

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