公訴時効とは|罪名別の時効一覧とシミュレーション|2023年改正対応

公訴時効とは、犯罪が起きてから一定期間が過ぎると、検察官がその事件を起訴できなくなる制度です刑訴法250条)。本記事では、罪名別の時効期間一覧と、ご自身のケースで時効完成日を試算できるシミュレーションを、刑事事件を重点的に扱う弁護士が解説します。2023年改正による性犯罪の時効延長と18歳未満加算にも対応しています。

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⚠️ 本ツールは一般的な情報提供のみを目的としており、個別のご事案については必ず弁護士にご相談ください。法改正により内容が変わる場合があります(最終更新: 2026-04-23)。

上記の項目を選択すると、公訴時効期間・起算点・根拠条文が表示されます

【一覧表】犯罪ごとの公訴時効期間

公訴時効の期間は、犯罪の法定刑に応じて定められています。以下の3つの区分に分けて整理します。

表1: 人を死亡させた罪の時効(刑事訴訟法250条1項)

法定刑 時効期間 主な犯罪例
死刑に当たる罪 時効なし(廃止) 殺人、強盗殺人
無期拘禁刑に当たる罪 30年 不同意わいせつ等致死、強盗致死(未遂)
長期20年の拘禁刑に当たる罪 20年 傷害致死、危険運転致死
その他の拘禁刑に当たる罪 10年 業務上過失致死、過失運転致死

注意: 殺人未遂は、被害者が死亡していないため「人を死亡させた罪」に該当しません。殺人未遂の時効は、下の「一般の罪」の表が適用されます。

逮捕後の流れについて詳しくはこちらをご覧ください。

表2: 一般の罪の時効(刑事訴訟法250条2項)

法定刑 時効期間 主な犯罪例
死刑に当たる罪 25年 現住建造物等放火
無期拘禁刑に当たる罪 15年 強盗致傷
長期15年以上の拘禁刑に当たる罪 10年 傷害
長期15年未満の拘禁刑に当たる罪 7年 窃盗、業務上横領、詐欺未遂
長期10年未満の拘禁刑に当たる罪 5年 住居侵入、脅迫
長期5年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪 3年 暴行、器物損壊
拘留・科料に当たる罪 1年 侮辱

執行猶予とは過失運転致傷・救護義務違反の記事も参考にしてください。

表3: 性犯罪の時効(刑事訴訟法250条3項)

罪名 改正後の時効期間 改正前
不同意わいせつ等致傷、強盗・不同意性交等 20年 15年
不同意性交等、監護者性交等(各未遂含む) 15年 10年
不同意わいせつ、監護者わいせつ(各未遂含む)、児童福祉法60条1項 12年 7年

性犯罪については2023年改正で一律5年延長されました。改正の詳細・遡及適用・18歳未満加算は次節で解説します。

殺人罪の時効はなぜ廃止されたのか

2010年(平成22年)の法改正により、殺人罪など人を死亡させた罪で死刑に当たるものは、公訴時効の対象から除外されました。つまり、何年が経過しても起訴することが可能です。

この改正の背景には、「殺人犯が時間の経過だけで処罰されなくなるのは不当だ」という国民の意識の広がりがあります。

改正のポイントは次のとおりです。

  • 対象: 殺人罪のほか、強盗殺人罪なども含まれる
  • 遡及適用: 改正法施行日(2010年4月27日)時点で時効が完成していなかった事件にも適用される
  • 合憲判断: 最高裁平成27年12月3日判決は、この遡及適用が憲法39条(遡及処罰の禁止)に違反しないと判断しました。公訴時効は訴訟法規であり、行為時の違法性評価を遡って変更するものではないとの理由です

性犯罪の時効延長 — 2023年改正のポイント

なぜ延長されたのか

性犯罪は、被害者が羞恥心や自責感から被害を申告しづらいという特性があります。その結果、被害が潜在化しやすく、訴追が事実上可能になる前に公訴時効が完成してしまうという不当な事態が生じていました。

こうした問題を解消するため、令和5年法律第66号により、性犯罪の公訴時効期間が延長されました。なお、同法の本体(不同意性交等罪の新設等)の施行日は2023年7月13日ですが、公訴時効の延長については公布日の2023年6月23日から先行施行されています。

具体的にどう変わったか

各罪名ごとに5年間延長されています。

  • 不同意わいせつ: 7年 → 12年
  • 不同意性交等: 10年 → 15年
  • 不同意わいせつ等致傷等: 15年 → 20年

性犯罪の公訴時効 早見表(2026年4月現在)

「自分のケースは時効が完成しているのか」を確認するための早見表です。

罪名 時効期間 この日以降の犯行なら時効未完成
不同意わいせつ等致傷・強盗不同意性交等 20年 2008年6月24日以降
不同意性交等・監護者性交等 15年 2013年6月24日以降
不同意わいせつ・監護者わいせつ 12年 2016年6月24日以降

※上記の境界日は、旧法の時効期間が2023年6月23日(改正施行日)時点で未完成となる犯行日を逆算したものです。この日以降の犯行には改正後の時効期間が適用されます。

被害時に18歳未満だった場合、犯行終了時から被害者が18歳に達する日までの期間がさらに加算されます(刑事訴訟法250条4項)。加算期間は被害者の年齢により異なりますので、個別のケースは弁護士にご相談ください。

境界付近の日付は1日の差で結論が変わります。必ず弁護士にご確認ください。

撮影罪の詳細撮影行為に関する犯罪の全体像も併せてご確認ください。

改正前の犯罪にも適用される(附則の重要ポイント)

この点は非常に重要です。 改正法附則5条2項により、改正法施行前に犯した罪でも、施行日(2023年6月23日)時点で時効が完成していなければ、改正後の新しい時効期間が適用されます。

具体例で考えてみましょう。

: 2016年6月25日に不同意わいせつ行為が行われたケース

  • 旧法の時効期間は7年 → 時効完成日は2023年6月24日
  • 改正法施行日は2023年6月23日 → この時点で時効はまだ完成していない
  • したがって、新法の時効期間12年が適用される
  • 時効完成日は2028年6月24日に延長

一方、2016年5月25日に同じ行為が行われた場合は、旧法の時効完成日が2023年5月24日となり、改正法施行日よりも前に時効が完成しています。この場合は新法の適用はありません。

なお、平成16年改正(平成17年1月1日施行)で法定刑が引き上げられた際の附則は異なります。この改正では、施行前の犯罪には改正前の時効期間が適用されると定められていました(附則3条2項)。2つの改正で附則のルールが異なる点には注意が必要です。

被害者の方へ: 「もう時効だ」と諦めていた方も、改正により実は間に合う可能性があります。まずは警察や弁護士にご相談ください。

図解:改正附則による時効延長の境界線

2005年・2023年の二度の改正附則により、犯行日によって適用される時効期間が変わります。3つのケースで境界線を視覚化します。

不同意わいせつ罪の公訴時効タイムライン。Case A(2003/4/1犯行)は旧旧法5年で2008/3/31時効到来。Case B(2016/6/25犯行)は附則5条2項で新法12年が遡及適用され2028/6/24完成。Case C(2024/5/1犯行)は新法12年が直接適用され2036/4/30完成。
図1: 不同意わいせつ罪の公訴時効タイムライン(Case Aは旧旧法5年で時効到来、Case Bは附則5条2項で新法12年が遡及適用、Case Cは新法直接適用)
注1: Case Bは限界事例 — 1日早い犯行(2016/6/24)なら旧法7年で改正前完成・新法不適用。本件は改正法施行(2023/6/23)時点で未完成のため、附則5条2項により新法12年が遡及適用され2028/6/24完成となる。
注2: Case Aは改正1(2005/1/1)施行前の犯行のため旧旧法5年が適用され2008/3/31完成(その後の改正は不影響)。
図1のデータ表(テキスト版・3ケース比較)
ケース犯行日適用法時効完成日結論
Case A2003年4月1日旧旧法5年(改正1前のため改正の影響なし)2008年3月31日訴追不可
Case B2016年6月25日新法12年(旧法7年の完成日2023/6/24が改正法施行日2023/6/23時点で未完成のため、附則5条2項で新法12年が遡及適用)2028年6月24日訴追可能
Case C2024年5月1日新法12年(改正法施行後の犯行のため直接適用)2036年4月30日訴追可能

18歳未満の被害者はさらに延長される

刑事訴訟法250条4項により、被害者が犯罪行為終了時に18歳未満だった場合、通常の時効期間にさらに期間が加算されます。

加算されるのは、「犯罪行為が終了した時から被害者が18歳に達する日までの期間」です。

計算例: 12歳で不同意わいせつの被害を受けたケース

  1. 不同意わいせつ罪の時効期間: 12年
  2. 犯行終了時から被害者が18歳に達する日までの期間: 約6年
  3. 合計: 12年 + 約6年 = 約18年

若年の被害者は、心身の未成熟や知識・経験の不足から、被害を申告することがより困難です。この規定は、そうした実態を踏まえた立法措置です。

図解:加算後の時効完成日の計算

具体的な事案で、基本期間12年と加算期間を組み合わせた時効完成日を視覚化します。

不同意わいせつ罪の18歳未満加算の計算図。2024年9月1日犯行・被害者12歳3ヶ月のケース。基本12年で延長前完成は2036年8月31日、加算期間5年9ヶ月を加えて最終完成は2042年5月31日。
図2: 18歳未満被害者加算の計算例(2024年9月1日犯行・被害者12歳3ヶ月のケース:基本12年+加算5年9ヶ月=17年9ヶ月、時効完成日は2042年5月31日)
注1: 刑訴法250条4項により、被害者が犯罪行為時に18歳未満の場合は18歳到達日までの期間を加算(改正後事案のため遡及適用問題は生じない)。
注2: 年齢計算法により「18歳に達する日 = 誕生日の前日」/加算期間は犯行翌日起算(刑訴法55条1項本文・初日不算入)/時効期間は犯行日初日算入(刑訴法55条1項ただし書)
図2のデータ表(テキスト版・計算ステップ)
項目日付・期間根拠
犯行日2024年9月1日事案設定(被害者12歳3ヶ月、生年月日2012年6月2日)
基本時効期間12年不同意わいせつ罪・刑訴法250条3項
延長前の完成日2036年8月31日犯行日+12年−1日(刑訴法55条1項ただし書・初日算入)
18歳到達日2030年6月1日年齢計算法(誕生日2012/6/2の前日)
加算期間5年9ヶ月(犯行翌日2024/9/2〜2030/6/1)刑訴法250条4項・55条1項本文(初日不算入)
最終的な時効完成日2042年5月31日犯行日+17年9ヶ月−1日(基本12年+加算5年9ヶ月)

公訴時効はいつから始まる?起算点の基本ルール

「犯罪行為が終了したとき」が起算点

公訴時効は、犯罪行為が終了したときから進行を開始します(刑事訴訟法253条1項)。

犯罪の類型によって、起算点は次のように異なります。

  • 結果犯(殺人等): 結果が発生した時(例: 被害者が死亡した時)から起算
  • 継続犯(監禁等): 犯罪行為の最終行為が終了した時から起算
  • 共犯がある場合: 最後の行為が終了した時から、全ての共犯について起算(同条2項)

初日算入ルール

公訴時効の期間計算では、犯罪行為が終了した日を1日目として算入します(刑事訴訟法55条1項ただし書)。これは通常の「初日不算入」原則の例外であり、被疑者・被告人の利益のために設けられた規定です。

また、時効期間の末日が休日に当たる場合でも、そのまま期間に算入されます(同条3項ただし書)。

公訴時効が停止する3つのケース

一定の事由がある場合、公訴時効の進行は停止します。停止している間は時効期間が進みません。

1. 公訴の提起(起訴)

検察官が公訴を提起(起訴)すると、その時点で公訴時効の進行が停止します(刑事訴訟法254条1項)。

管轄違いや公訴棄却の裁判が確定した場合は、残りの時効期間が再び進行を始めます。また、共犯の一人に対する起訴は、他の共犯に対しても時効停止の効力があります(同条2項)。

2. 犯人が国外にいる場合

犯人が国外にいる期間中は、公訴時効の進行が停止します(刑事訴訟法255条1項)。

注目すべきは、一時的な海外渡航であっても時効が停止するという点です(最高裁平成21年10月20日決定)。捜査機関が犯人を知っているかどうかも問いません。帰国後に残りの時効期間が進行を再開します。

3. 犯人が逃げ隠れている場合

犯人が逃げ隠れているために有効に起訴状謄本の送達ができなかった場合も、時効の進行が停止します(刑事訴訟法255条1項)。

「国外にいる場合」とは異なり、この場合は起訴状謄本の送達が不能であることが要件とされています。たとえば、家族にも所在を知らせずに知人宅に隠れ住んでいるようなケースが該当します。

制度の趣旨・効果と他制度との違い

公訴時効が設けられているのは、主に証拠の散逸(時間の経過により証拠が失われ真実発見が難しくなる)と、社会の処罰感情の減少(時間の経過により犯罪に対する非難感情が薄れる)の2点が理由とされています。

公訴時効が完成すると、裁判所は免訴判決(刑事訴訟法337条4号)を言い渡します。「時効が成立した=無罪」ではなく、「もはや起訴できない」という意味である点に注意してください。

似た名前の制度に「刑の時効」(刑法31条)がありますが、こちらは有罪判決が確定した後に刑の執行権が消滅するものです。公訴時効とは別の制度ですので、混同しないようにしましょう。

なお、公訴時効の完成により刑事事件としての起訴はできなくなりますが、民事上の損害賠償請求権が別途残っている場合もあります。詳しくは不起訴処分とはの記事もご参照ください。

よくある質問(FAQ)

Q1: 公訴時効と民事の時効は何が違いますか?

公訴時効は、検察官が刑事事件として起訴できる期間の制限です。これに対し、民事の消滅時効は、被害者が加害者に損害賠償を請求できる期間の制限です。刑事の公訴時効が完成しても、民事の損害賠償請求権が残っている場合があります。

Q2: 海外に逃亡すれば時効は進みますか?

いいえ。犯人が国外にいる期間は公訴時効の進行が停止します。一時的な海外渡航であっても同様です(最高裁平成21年決定)。帰国後に残りの時効期間が進行を始めます。

Q3: 「拘禁刑」とは何ですか?以前の懲役や禁錮とは違うのですか?

2022年の刑法改正(2025年6月1日施行)により、従来の「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されました。刑の内容としては大きな変更はなく、名称が変わったものとお考えください。本記事では改正後の「拘禁刑」の表記を使用しています。

ご相談について

被疑者の方へ

ご自身の事件について時効の成否が気になる方は、お気軽にご相談ください。公訴時効の判断は、適用される法律の改正時期や犯罪の類型によって複雑になるケースがあります。

被害者の方へ

過去の被害について「もう時効だ」と諦めている方も、法改正により間に合う可能性があります。おひとりで悩まずに、まずはお話をお聞かせください。

レナトス法律事務所は、刑事事件に注力する弁護士が在籍しています。時効に関するご相談も承っておりますので、示談で不起訴を目指す方法と併せてご検討ください。

免責事項: この記事は2026年4月11日時点の法令に基づき、一般的な法律知識の提供を目的としたものです。個別の事案についての法的アドバイスではありません。具体的なお悩みについては、弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた人

レナトス法律事務所 代表弁護士/埼玉県弁護士会所属(登録番号 第64945号)
刑事事件と交通事故被害者の民事を中心に、ご相談者おひとりおひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。前職のアトム法律事務所を経て、2026年4月に独立・レナトス法律事務所を開設しました。
取扱分野:刑事弁護/交通犯罪/薬物事件/性犯罪/暴行・傷害/交通事故被害者の民事/犯罪被害者支援(拡大予定)

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