示談とは?示談金の相場・交渉の進め方を弁護士が解説

刑事事件を起こしてしまい、被害者との示談を考えている方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、被害者として示談を持ちかけられ、どう対応すればよいか戸惑っている方もいらっしゃるでしょう。

「示談金の相場はいくらなのか」「示談しないとどうなるのか」「弁護士に頼まず自分で交渉できるのか」――こうした疑問を抱えているのは、ごく自然なことです。

この記事では、刑事事件における示談について、以下のポイントをわかりやすく解説します。

  • 示談の意味と和解との違い
  • 罪名別の示談金相場テーブル
  • 示談交渉の具体的な5つのステップ
  • 示談しないとどうなるか(加害者側・被害者側)
  • 示談金が払えない場合の対処法

目次

示談とは?わかりやすく解説

示談(じだん)とは、被害者と加害者が話し合いによって損害賠償の内容を取り決め、紛争を解決することをいいます。

示談は民事上の手続きですが、刑事事件では検察官が起訴・不起訴を判断する際に、示談が成立しているかどうかが大きく考慮されます。そのため、刑事事件の被疑者(ひぎしゃ=犯罪の疑いをかけられている人)にとって、示談の成立は非常に重要な意味を持ちます。

示談の定義 — 当事者間の話し合いによる解決

示談は、裁判所を通さずに当事者同士で合意する手続きです。被害者に対して示談金(損害賠償金)を支払い、被害者から許しを得ることで、民事上の紛争を解決します。

刑事事件における示談のポイントは、以下の2つです。

  • 民事上の解決手段であること(刑事手続きとは別の枠組み)
  • 刑事処分に大きく影響すること(不起訴や量刑の軽減につながりうる)

つまり示談は、民事の話し合いでありながら、刑事事件の結果を大きく左右する手続きといえます。

示談と和解の違い

「示談」と「和解」は似ていますが、厳密には異なります。

項目 示談 和解
意味 裁判外で当事者が合意する 裁判上の和解と裁判外の和解がある
手続き 当事者間(弁護士を通じて)の交渉 裁判上の和解は訴訟手続きの中で行う
法的な位置づけ 裁判外の和解の一種 裁判上の和解は確定判決と同じ効力を持つ(民事訴訟法267条)

示談は裁判外の和解の一種ですが、刑事事件の文脈では一般的に「示談」という言葉が使われます。示談書を作成し、双方が署名・捺印することで合意内容が明確になります。

示談書に盛り込むべき内容

示談が成立した場合は、示談書を作成します。示談書には以下の内容を盛り込むのが一般的です。

  • 当事者の特定: 被害者と加害者の氏名・住所
  • 事件の内容: いつ、どこで、どのような事件が起きたか
  • 示談金額: 合意した金額
  • 支払方法・期限: 一括払いか分割払いか、いつまでに支払うか
  • 宥恕条項(ゆうじょじょうこう): 被害者が処罰を求めない意思を示す条項
  • 清算条項(せいさんじょうこう): 今後、追加の請求をしない旨の条項

特に重要なのが宥恕条項です。「加害者の処罰を求めません」という被害者の意思表示は、検察官が起訴・不起訴を判断する際に非常に大きな考慮要素となります。


【罪名別】示談金の相場一覧

示談金の相場は、罪名や被害の内容によって大きく異なります。以下に、主な罪名ごとの示談金の目安をまとめました。

罪名別示談金相場テーブル

罪名 示談金の相場(目安) 根拠条文 備考
暴行罪 10万〜30万円 刑法208条 怪我がない場合
傷害罪 30万〜100万円 刑法204条 怪我の程度により大幅に変動
窃盗罪(万引きなど) 被害額+α(数万〜20万円) 刑法235条 被害品の返還があれば低くなる傾向
撮影罪(盗撮) 30万〜80万円 性的姿態等撮影処罰法2条 被害者の精神的な苦痛を考慮
不同意わいせつ罪 50万〜200万円 刑法176条 行為態様・被害の程度で変動
不同意性交等罪 100万〜500万円以上 刑法177条 高額になる傾向
詐欺罪 被害額全額+α 刑法246条 被害額の返還が前提
脅迫・恐喝罪 20万〜50万円 刑法222条・249条 金銭被害がある場合は被害額+α
名誉毀損・侮辱罪 10万〜50万円 刑法230条・231条 SNSでの拡散の程度により変動

※ 上記はあくまで一般的な目安であり、個別の事案ごとに金額は大きく異なります。実際の示談金は、被害の程度、加害者の資力、被害者の処罰感情などを総合的に考慮して決まります。具体的な金額については、弁護士にご相談ください。

※ 窃盗罪(万引き)について詳しくは → 万引きで逮捕されたら?初犯の処分と弁護士の役割

※ 撮影罪について詳しくは → 撮影罪(性的姿態等撮影罪)とは?

示談金が高額になるケース・低額になるケース

示談金の金額は、さまざまな要素によって変動します。

高額になりやすいケース

  • 被害が重大である(重傷・後遺症が残る等)
  • 被害者の処罰感情が強い
  • 加害者に前科・前歴がある
  • 事件が社会的に注目されている

低額になりやすいケース

  • 初犯(はじめての犯罪行為)である
  • 被害が比較的軽い
  • 早い段階で誠実に謝罪している
  • 被害品の返還や被害の回復がなされている

いずれの場合も、適正な金額を見極めるために弁護士への相談をおすすめします。


示談交渉の具体的な進め方

刑事事件における示談交渉は、一般的に以下の5つのステップで進みます。弁護士がどのように動くのか、具体的に見ていきましょう。

ステップ1 — 弁護士に依頼する

示談交渉の第一歩は、弁護士に依頼することです。

刑事事件では、加害者本人が被害者に直接連絡を取ることは通常認められません。これは、被害者の安全を守り、威迫(いはく=おどして相手を怖がらせること)などのトラブルを防ぐためです。

弁護士であれば、検察官や警察を通じて被害者の連絡先を開示してもらうことができます。被害者側も「弁護士を通じてなら話をしてもよい」と考えるケースが少なくありません。

ステップ2 — 被害者への連絡と謝罪

弁護士が被害者に連絡を取り、加害者の謝罪の意思と示談の意向を伝えます。

この段階で大切なのは、被害者の心情に配慮した丁寧な対応です。被害者が受けた精神的なダメージは大きく、すぐには話し合いに応じてもらえないこともあります。弁護士は被害者のお気持ちを尊重しながら、慎重に交渉を進めます。

ステップ3 — 条件の交渉

被害者が交渉に応じてくださった場合、具体的な条件の協議に入ります。

  • 示談金額の提示と協議: 被害の内容に見合った金額を提案し、合意を目指します
  • 宥恕条項の交渉: 「処罰を求めない」という意思表示をいただけるか、交渉します
  • 被害者が応じない場合の対応: 被害弁償の供託(きょうたく=法務局にお金を預けること)など、別の方法を検討します

ステップ4 — 示談書の作成・締結

条件がまとまったら、示談書を作成し、双方が署名・捺印します。

示談書には、先ほど説明した宥恕条項や清算条項を含め、法的に有効な内容を盛り込みます。弁護士が作成することで、後日のトラブルを防ぐことができます。

示談書の取り交わし後、合意した示談金を支払います。支払い時期は、示談書の取り交わしと同時に支払う方法(席上示談(せきじょうじだん))もありますが、取り交わし後1〜2週間以内に指定口座へ振り込む形が一般的です。

ステップ5 — 検察官への報告

示談が成立したら、弁護士が示談書の写しを検察官に提出します。あわせて、不起訴処分を求める意見書を提出することもあります。

示談の成立は、検察官の起訴・不起訴判断において非常に重要な考慮要素です。特に被害者のいる犯罪では、宥恕付きの示談が成立していれば、不起訴処分になる可能性が高まります。


示談しないとどうなる?

示談をしない場合、加害者側・被害者側それぞれにどのような影響があるのでしょうか。

加害者側が示談しないリスク

加害者側にとって、示談をしないことには以下のリスクがあります。

  • 起訴される可能性が高まる: 示談が成立していない場合、検察官が起訴に踏み切る可能性が上がります
  • 量刑上の軽減事由がなくなる: 刑事処分は行為の内容に応じた責任(行為責任(こういせきにん))が基本です。示談(特に宥恕)は、この行為責任をベースとした量刑を軽減するための考慮要素です。示談ができなければ量刑が「重くなる」というよりも、軽減事由の一つがなくなることになります
  • 前科がつく: 起訴されて有罪判決を受けると前科がつき、就職や資格取得に影響が出ることがあります

特に初犯の場合、示談の成立は不起訴を獲得するための大きなポイントとなります。

被害者側が示談に応じない場合

被害者には示談に応じる義務はありません。以下の選択肢があります。

  • 刑事処罰を望む場合: 示談に応じず、加害者の厳しい処罰を求めることができます
  • 民事訴訟で損害賠償を請求する: 示談とは別に、裁判所に損害賠償請求の訴えを起こす方法もあります
  • 条件に納得できない場合: 示談金の増額を求めたり、交渉を続けたりすることも可能です

示談に応じるかどうかは、被害者ご自身のお気持ちや状況に応じて判断して構いません。

示談と不起訴の関係 — 示談すれば不起訴になる?

示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありませんが、不起訴の可能性は大きく高まります。

特に被害者のいる犯罪では、宥恕付きの示談(被害者が処罰を求めないという意思表示を含む示談)が成立している場合、検察官は起訴猶予(きそゆうよ=犯罪事実はあるが、情状を考慮して起訴しない判断)を選択する傾向があります。

ただし、以下のような場合は、示談が成立していても起訴されることがあります。

  • 事件が重大である(重傷を負わせた、性犯罪など)
  • 前科がある(繰り返しの犯罪行為)
  • 社会的に影響が大きい事件

示談は不起訴獲得のための最も重要な要素の一つですが、事件の内容や背景によって判断は異なります。


示談金が払えない場合の対処法

「示談金が払えない」と不安に感じている方も少なくありません。しかし、支払いが難しい場合にも対処法はあります。

分割払いの交渉

一括での支払いが難しい場合、分割払いの交渉が可能な場合もあります。弁護士が間に入り、被害者の合意を得た上で、分割払いの条件を示談書に明記します。

ただし、分割払いは極めて例外的なケースであることを理解しておく必要があります。分割払いの場合、被害者に対して回収リスクを一方的に負わせることになるためです。示談が成立して不起訴処分を得た後に、加害者が支払いを止めてしまう危険性があるからです。

そのため、分割払いが認められるのは限られた場合であり、基本的には一括での支払いを前提に交渉が進められます。

金額の減額交渉

提示された示談金が相場と比べて高すぎる場合、弁護士を通じて妥当な金額への減額を交渉することができます。

相場をふまえた適正な金額を提案することで、被害者にも納得してもらいやすくなります。

ただし、示談とは被害者の方にお赦しをいただく要請でもあります。金額面で折り合いがつかない場合、それは金額の問題というよりも、被害者の処罰感情が強く「示談に応じてもらえない場合」に分類されるケースもあります。その場合は、供託など別の方法を検討することになります。

被害弁償の供託

被害者が示談に応じてくれない場合でも、反省と賠償の意思を示す方法があります。

  • 供託(きょうたく): 法務局に損害賠償金を預ける手続きです。被害者が受け取らない場合でも、供託の事実を検察官に報告することで、反省の姿勢を示すことができます
  • 贖罪寄付(しょくざいきふ): 弁護士会などに対して寄付を行い、反省の気持ちを形にする方法です

これらの方法は、不起訴処分の獲得に直結するわけではありませんが、加害者の反省の態度を示す一つの手段として評価されることがあります。


弁護士なしで示談交渉はできる?リスクと限界

「弁護士に頼まず、自分で示談交渉できないか」と考える方もいらっしゃいます。しかし、刑事事件の示談交渉を弁護士なしで行うことには、大きなリスクがあります。

弁護士なしのリスク

弁護士を付けずに示談交渉を行う場合、以下のリスクがあります。

  • 被害者の連絡先が開示されない: 検察官や警察は、加害者本人には被害者の連絡先を教えません。弁護士を通じてのみ開示されるのが一般的です
  • 不利な条件で合意してしまう: 相場を知らないまま、高すぎる金額で合意してしまう危険があります
  • 示談書の不備によるトラブル: 法的に不十分な示談書では、後から追加請求されるなどのリスクがあります
  • 被害者との直接交渉がトラブルに発展する: 被害者の感情を害してしまい、交渉が決裂するおそれがあります

弁護士に依頼するメリット

弁護士に示談交渉を依頼するメリットは、以下のとおりです。

  • 適正な示談金額の算定: 罪名や被害内容に応じた適正な金額を算定できます
  • 被害者との冷静な交渉: 第三者である弁護士が間に入ることで、感情的にならず冷静な交渉がある程度可能です
  • 法的に有効な示談書の作成: 宥恕条項や清算条項を含む、法的に有効な示談書を作成できます
  • 検察官への適切な報告: 示談書の提出と不起訴を求める意見書の作成・提出ができます

刑事事件の示談交渉は、弁護士に依頼することでよりスムーズに進めやすくなる手続きといえます。


よくある質問(FAQ)

Q1: 示談金の相場はいくらですか?

A: 罪名や被害の程度によって大きく異なります。暴行罪で10万〜30万円、傷害罪で30万〜100万円、窃盗罪で被害額+数万〜20万円が一般的な目安です。ただし、個別の事情によって金額は変動しますので、弁護士に相談して適正な金額を把握されることをおすすめします。

Q2: 示談しないと起訴されますか?

A: 示談が成立しなくても不起訴になるケースはあります。しかし、被害者のいる犯罪では、示談の成否が検察官の起訴・不起訴判断に大きく影響します。示談なしでは起訴される可能性が高まるため、早期の示談交渉をおすすめします。

Q3: 被害者が示談に応じてくれません。どうすればよいですか?

A: 被害者に示談に応じる義務はありませんので、無理に応じてもらうことはできません。弁護士を通じて誠実に謝罪と被害弁償の意向を伝え続けることが大切です。それでも応じてもらえない場合は、法務局への供託や贖罪寄付(しょくざいきふ)といった方法で、反省と賠償の意思を示すことが考えられます。

Q4: 示談と和解はどう違いますか?

A: 示談は裁判外で当事者が話し合いによって合意するものです。和解には、裁判上の和解(訴訟の中で行うもの)と裁判外の和解があります。示談は裁判外の和解の一種ですが、刑事事件の文脈では「示談」という用語が一般的に使われます。

Q5: 示談金を分割払いにできますか?

A: 被害者の合意が得られれば、分割払いにすることは可能です。弁護士が間に入って交渉し、分割払いの条件を示談書に明記することで、双方にとって安心できる合意を目指します。


まとめ

この記事のポイントを整理します。

  • 示談とは、被害者と加害者が話し合いで損害賠償の内容を取り決め、紛争を解決する手続き
  • 示談金の相場は罪名により異なる。暴行罪で10万〜30万円、傷害罪で30万〜100万円など(※事案により大きく変動します)
  • 示談交渉は5ステップで進む:弁護士への依頼→被害者への連絡→条件交渉→示談書作成→検察官への報告
  • 示談が成立すると不起訴の可能性が高まるが、事件の重大性等によっては起訴される場合もある
  • 弁護士なしの示談交渉にはリスクが大きい。被害者の連絡先が開示されない場合が多い

刑事事件の示談交渉は、早めの対応が重要です。逮捕後の身柄拘束期間は限られており、その中で示談を成立させることが不起訴獲得の鍵となります。

レナトス法律事務所では、刑事事件の示談交渉に注力する弁護士が、ご相談者さまの状況に寄り添いながらサポートいたします。示談金の相場や交渉の進め方でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。


この記事は2026年3月時点の法令に基づき、一般的な法律知識の提供を目的としたものです。個別の事案についての法的アドバイスではありません。具体的なお悩みについては、弁護士にご相談ください。

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