家族が逮捕されたら何をする?|初回接見の依頼と弁護人選任(私選・当番・国選)

家族が逮捕されたという連絡を受けたとき、ご家族にできる最初の意味ある行動の一つが、初回接見の依頼です。私選で弁護士を依頼する形でも、弁護士会の当番弁護士を呼ぶ形でも、勾留決定後に国選弁護人を選任する形でも、初回接見が果たす役割は本質的に同じです。本記事では、初回接見が何のためにあるのかを、ご家族の判断材料として整理します。


逮捕後72時間の中で「初回接見」が果たす位置づけ

逮捕後の72時間は、弁解録取・取調べ・送致・勾留請求・勾留決定までが進行する時間帯です。本人にとっては警察と検察での聴取・身柄の移動が立て続けに行われ、ご家族にとっては本人がどこにいて何を聞かれているのかほとんど見えない時間帯になります。

逮捕後72時間の手続きの流れの詳細は、当事務所の別記事「刑事手続きの流れ|逮捕から起訴まで」をご参照ください。本記事では、この72時間の中で「初回接見」が何のためにあるのかに焦点を当てます。

ここで一点、率直にお伝えしておきたいことがあります。「初回接見=取調べを止めるサービス」というイメージを持たれることがありますが、実情は少し違います。多くの捜査運用では逮捕の前段階で任意同行による事情聴取が行われていることが多く、逮捕の時点で既に供述調書が一定程度作成されている場合もあります。また、弁護人ができるのは取調べへの本人の心構えを整え対応方針を伝えるところまでで、取調べそのものを止める権限を弁護人は持ちません。

だからこそ、初回接見の意味は別のところにあります。


初回接見が果たす4つの機能

実務に即して整理すると、初回接見が果たす役割は、おおよそ次の4つに分けられます。これは私選・当番・国選のいずれの選任形態であっても、本質的には共通する機能です。

① 本人から事実関係の詳細を聴く

捜査機関は原則として起訴まで証拠を開示しません。家族が警察や検察に問い合わせても、教えてもらえる情報には限りがあります。

何が起きているかを把握する最初の情報源は、本人の話そのものになります。弁護人は接見室で、逮捕に至った経緯、警察で告げられた被疑事実(本人が何の容疑で逮捕されているか)、本人の言い分、すでに警察に話した内容を、できるだけ詳細に聴き取ります。これが防御の出発点です。

② 見通しを立てる

聴き取った事実関係をもとに、弁護人は、起訴・不起訴の可能性、勾留が認められる可能性、想定される処分の幅を整理します。

この時点では捜査機関の手元にある証拠が分からないため、確定的なことは言えません。それでも、「何が起こりうるか」の枠組みが手元にあること自体が、本人にもご家族にも意味を持ちます。展開しうる幅を把握できれば、その後の判断の足場ができます。

③ 本人に手続きの概観と弁護方針を伝える

逮捕直後の本人は、自分が今どの手続きにいるのか、次に何が来るのかを十分には把握していないことがほとんどです。

弁護人は、逮捕から勾留決定、その先の起訴・不起訴、裁判までの全体像と、それぞれの段階で本人がどう振る舞えるかを、平易な言葉で説明します。さらに、取調べでの対応方針——どこは話してよいか、どこは慎重になるべきか、黙秘という選択肢があること、その意味と効果——を、本人の状況に合わせて伝えます。

本人が手続きの全体像と取りうる対応を理解していること自体が、その後の供述・防御に直接影響します。

④ 家族との連絡経路を確立する

逮捕段階では、捜査機関は家族の連絡先を積極的に共有するとは限りません。本人がどの警察署にいて、いつ送致され、いつ勾留決定が出るのか、家族側からは見えにくい時間帯が続きます。

弁護人が接見の場で本人から家族の連絡先を直接聴き取れば、連絡経路をその場で確立できます。本人の状況・見通し・ご家族にお願いしたい段取りを、弁護人から家族へ直接お伝えできる関係ができます。家族との連絡経路の組み込まれ方は選任形態ごとに違いますが(後述)、初回接見が「本人と外側との回路を開く」起点であることに変わりはありません。


被疑者ノートを差し入れる ── 本人が自分の取調べを記録する手段

初回接見と並んで意義が大きいのが、初回接見の場で「被疑者ノート」を本人に交付することです。供述調書は捜査機関側がまとめる記録ですが、本人側に残せる同時記録の手段が、この被疑者ノートです。

被疑者ノートとは ── 日弁連が用意した本人用の記録ノート

被疑者ノートは、日本弁護士連合会(日弁連)が編集・発行している、被疑者本人配布用のノートです。日弁連は刑事司法改革の取り組みの一環として、被疑者本人が自分の手元で取調べ状況を記録できるよう、このノートを公開・配布しています。

冊子は単なる白紙のノートではなく、(ア)逮捕から起訴・裁判までの刑事手続の流れの解説、(イ)取調べに臨むうえでの心がまえと被疑者の権利の説明、(ウ)取調べ1回分を1見開きで記録する記入用紙、(エ)記載例、の4要素が1冊にまとまった構成です。本人が手続きの中で迷ったときに開ける「手元の手引き」と、取調べを記録する「日誌」を兼ねた性格を持っています。

本人への交付は、弁護人が接見の際に持参して交付するのが標準的な運用です。ご家族から直接本人に届ける物品ではなく、弁護人を経由する点を押さえておいていただければ十分です。

何を書くのか ── 記録項目の構造

ノートの記入用紙は、見開き2ページで1日分の取調べを記録する構造になっています。チェック式と自由記載を組み合わせた設計です。

左ページは取調べの客観的状況を記録する側で、日付、各回の開始終了時刻と場所、取調官の氏名、取調事項、黙秘権告知の有無、取調べが録画されていたか(全部録画か一部録画か)、そして取調官による暴行・脅迫・侮辱・利益誘導の有無とその内容を記載します。

右ページは、本人の対応と心境を記録する側です。本人が黙秘・否認・一部否認・自供のいずれの対応をしたかをチェックし、供述調書が何通作成されたか、調書を本人が自分で読めたかどうか、訂正を申し入れたか、訂正に応じてもらえたか、署名押印に応じたか拒否したかを記録します。あわせて、その日の体調を書く欄もあります。

書き方には日弁連自身の基本的な注意があります。ボールペンを使うこと、ありのままに記録すること、できれば当日か翌日までに書くこと、ページごとに「記入した日」の日付を入れて署名すること、一度日付を書いたページには後から書き加えないことです。これらは、後にノートが資料として参照される場合に「あとから書き足したのではないか」という疑いを避けるための工夫でもあります。

なぜ重要か ── 4つの機能

被疑者ノートの意義について、日弁連自身がノート冒頭でまとめている整理を踏まえると、機能は次の4つに整理できます。

第一に、不当な取調べに対する抑止です。本人が取調べの状況を記録しているという事実があるだけで、取調官の側にも一定の自制が働きやすくなる、という指摘が日弁連自身によって示されています。

第二に、密室の中の取調べを弁護人が理解する手がかりです。取調べには弁護人の立会いが認められていないため、外側からは何が起きているかが見えません。本人がノートに記録を残し、接見の際にそのノートを見せながら状況を説明できると、弁護人は次回以降の取調べに備えた具体的な助言を行いやすくなります。黙秘権・署名押印拒否権・増減変更申立権をどの場面で行使したかも、ノートを介して可視化されます。

第三に、公判で取調べ状況が問題になったときの本人側の同時記録としての価値です。供述調書は本人の発言を捜査機関が整理して文章化したものなので、本人の意図やニュアンスと完全には一致しないことがあります。取調べ全過程の録音録画は、現行制度上、裁判員裁判対象事件や検察官独自捜査事件等の限られた範囲で義務化されているにとどまり(2016年の刑事訴訟法等一部改正、2019年6月1日施行)、それ以外の事件では取調べの実態を後から確認する手段が限られます。被疑者ノートはその手段の一つです。

第四に、本人にとっての心の支えです。自分の側に記録があり、その記録は弁護人と共有される――この手応えは、日弁連自身がノートの意義として明示しているもので、軽視できない要素です。

秘密交通権で守られる ── 取調官に見せる必要はない

被疑者ノートは、弁護人と被疑者の間のコミュニケーション手段にあたるため、秘密交通権(刑訴法39条1項)の保護下にあるとされています。記載されるのは、接見で受けたアドバイスや本人の主張・認識など、弁護方針に直結する情報だからです。

このため、ノートを留置担当者や取調官に見せる必要はなく、見せるべきではない、というのが日弁連自身の指導です。取調べ室には持ち込まず、居室で記入することが推奨されています。実際、取調べ中に捜査官が被疑者ノートを持ち去り内容を閲覧した行為が黙秘権(憲法38条1項)と秘密交通権の侵害にあたるとして国家賠償が争われた事案も報告されています。

接見禁止(刑訴法81条)が付されている場合でも、弁護人と本人との接見・物品授受は弁護人接見交通権(憲法34条・刑訴法39条1項)として保障されているため、弁護人経由での被疑者ノートの差し入れは妨げられません。差し入れのタイミングは、初回接見と同時か、それに近い時期が望ましいとされています。


弁護人選任の3つの仕組み ── どの形でも初回接見の意義は同じ

ここまで述べてきた初回接見の4機能と被疑者ノートの差し入れは、私選・当番・国選のいずれの選任形態でも基本的に同じように果たされます。「私選だから上、国選だから下」という関係ではなく、3つは別々の仕組みで、ご家族の状況に応じて選んでいただくものです。

まず時系列上の位置付けを表で全体像として整理します。

弁護人選任の時系列マップ(私選・当番・国選)
図:弁護人選任の時系列マップ。軸の上は家族側の選択肢(私選)、軸の下は制度上の選択肢(当番・国選)。

※ 同じ内容を時系列表で示すと以下のとおり。

手続きの段階 私選 当番 国選
任意同行・事情聴取(逮捕前) ご家族の依頼で就任可 制度の対象外 制度の対象外
逮捕直後〜送致前(最大48時間) 就任可 1回限りの接見申込が可能 制度の対象外
送致後〜勾留請求まで(24時間以内) 就任可 接見可 制度の対象外
勾留決定後(最大20日間) 就任可 任務終了 請求により原則選任(資力要件50万円未満)

当番弁護士 ── 逮捕段階で1回、無料で接見できる

当番弁護士は、各都道府県の弁護士会が運営する制度で、逮捕段階の被疑者またはご家族の依頼により、1回に限り弁護士が接見に派遣されます。費用は弁護士会が負担します。ご家族が依頼する場合は、本人が留置されている警察署を管轄する弁護士会に連絡します。「まずは1回、弁護士に会わせて状況を把握したい」場面で活用できる仕組みです。1回の接見が任務であり、継続を希望する場合は私選契約か、勾留決定後の国選選任への切り替えとなります。

国選弁護人 ── 勾留決定後に、国の費用で選任される

国選弁護人は、勾留決定後に、本人の請求または裁判所の職権で、国の費用で選任される制度です。2018年の改正により、被疑者勾留のすべての事件が国選請求の対象になっており、勾留決定後に請求があれば原則として選任されます(資力要件50万円未満)。費用負担なく弁護人を確保できる点が核心で、刑事弁護を受ける権利を実質化する趣旨の制度です。構造上、勾留決定までの初動段階は対象外ですが、選任後は上で述べた初回接見の4機能を果たすことに変わりはありません。

私選弁護人 ── どの段階からでも、家族が直接依頼できる

私選弁護人は、家族(または本人)が直接選び、契約して費用を負担する選任形態です。逮捕直後、あるいは前段階の任意同行段階から動ける点が構造上の特徴で、家族と直接の契約関係に立つため家族との連絡経路が最初から組み込まれます。一方、費用が発生し、その構造は事務所により異なるため、依頼前に確認することが大切です。

どう選ぶか ── ご家族の状況に応じて

3つの仕組みは、どれが優れているかではなく、状況に応じてどれが適しているかという話です。「まずは1回、弁護士に会わせたい」なら当番弁護士、「費用負担が難しい」なら勾留決定後の国選、「逮捕直後から継続的に動いてほしい」なら私選、というご家族の優先順位次第の選択になります。いずれを選ばれても、初回接見が本人にとって持つ意義は同じです。


レナトス法律事務所での初回接見の流れ(参考)

もし私選で初回接見をご検討される場合の参考として、当事務所での流れをご紹介します。

  1. ご連絡:電話またはお問い合わせフォームで、本人のお名前、逮捕日時、警察署、被疑事実(分かっている範囲で)、ご家族のご連絡先をお伺いします。
  2. 弁護士が警察署で初回接見:上で述べた4つの機能を実施し、被疑者ノートの差し入れの段取りを行います。
  3. ご家族への状況報告:本人の状況・見通し・必要な手当てをご家族にご報告し、ここで初めて私選契約に進むかをご判断いただきます。

初回接見の段階で必ず私選契約に進む必要はありません。接見結果を踏まえ国選への切り替えや当番弁護士の利用を選ばれるご家族もいらっしゃいます。私選・当番・国選のどれを選ばれても、本人にとって初回接見が持つ意義は同じという前提でご相談に応じています。

より具体的なやり取りのイメージは、痴漢(否認)を題材にした会話形式の実例記事「初回接見の流れ実例|痴漢(否認)のケースで会話形式の実例を弁護士が解説」を併せてご参照ください。


まとめ ── 家族にできる最初の一歩は、初回接見の依頼

家族が逮捕されたという連絡を受けたとき、ご家族にできる最初の意味ある行動の一つが、初回接見の依頼です。

初回接見は、本人から事実関係を聴き、見通しを立て、手続きの全体像と弁護方針を本人に伝え、家族との連絡経路を確立する場です。あわせて、本人側の同時記録である被疑者ノートを本人の手元に届ける場でもあります。これらは、私選で依頼しても、当番弁護士を呼んでも、勾留決定後に国選弁護人が選任されても、本質的に同じように果たされます。

どの選任形態を選ぶかは、ご家族の状況・費用・優先順位次第です。「逮捕直後から動いてほしい」のか、「まずは1回会わせたい」のか、「費用負担が難しいので勾留決定後の国選で構わない」のか。情報をもって判断することが、ご家族にできる支えの一つだと考えています。

ご家族の状況をご整理いただいたうえで、当事務所への私選依頼をご検討される場合は、下記のお問い合わせ先までご連絡ください。当番弁護士・国選弁護人のご利用をお考えの場合は、本人が留置されている警察署を管轄する弁護士会への連絡が最初の一歩となります。


お問い合わせ

レナトス法律事務所では、初回接見のご相談を承っております。電話またはお問い合わせフォームよりご連絡ください。対応時間等の詳細は当事務所ホームページをご参照ください。


参考

本記事は2026年5月時点の制度・運用を前提に記述しています。法改正・運用変更に応じて随時更新します。

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この記事を書いた人

レナトス法律事務所 代表弁護士/埼玉県弁護士会所属(登録番号 第64945号)
刑事事件と交通事故被害者の民事を中心に、ご相談者おひとりおひとりに丁寧に向き合うことを大切にしています。前職のアトム法律事務所を経て、2026年4月に独立・レナトス法律事務所を開設しました。
取扱分野:刑事弁護/交通犯罪/薬物事件/性犯罪/暴行・傷害/交通事故被害者の民事/犯罪被害者支援(拡大予定)

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