酒気帯び運転の罰金は25〜40万円が相場|初犯の量刑・免許・弁護活動
酒気帯び運転で検挙されました――そう告げられた瞬間から、「逮捕されるのか」「罰金はいくらになるのか」「免許はどうなるのか」という不安が次々と押し寄せてくるかと思います。仕事への影響、家族への説明、これからの手続きの流れ。頭が真っ白になる方も多いでしょう。
検挙直後は情報が乏しいまま取り調べに臨まなければならないケースも多く、何を話すべきか、何を話してはいけないかが分からないまま事態が進んでいくことがあります。また、「軽い違反だから大した問題ではない」と楽観的に考えているうちに、対応が遅れて結果が悪化することも現実にあります。
この記事では、酒気帯び運転の法的定義から、刑事罰の相場・免許への影響・逮捕の有無・弁護活動のポイントまでを、刑事弁護に注力する大宮・レナトス法律事務所の視点でわかりやすく解説します。早い段階で正確な情報を得ることが、その後の結果を大きく左右します。
1. 酒気帯び運転とは — 法的定義
道路交通法上の位置づけ
道路交通法65条1項は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定め、飲酒運転を一切禁止しています。しかし、刑事罰の対象となるかどうかは、飲酒の程度によって異なります。
刑事罰が科されるのは、次の2類型です。
| 類型 | 定義 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 酒気帯び運転(政令基準以上) | 呼気1リットルにつき0.15mg以上または血液1mlにつき0.3mg以上のアルコールを保有した状態での運転 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 酒酔い運転 | アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転 | 5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
本記事で扱う「酒気帯び運転」は、上の表の1行目——道路交通法117条の2の2第3号、道路交通法施行令44条の3に定める「政令酒気帯び運転」です。
基準値は「呼気0.15mg以上」
具体的な基準は道路交通法施行令44条の3に規定されており、
- 呼気1リットルあたり0.15mg以上
- 血液1mlあたり0.3mg以上
のいずれかを満たすと、刑事罰の対象となる酒気帯び運転が成立します。
「酔っていなくても」成立する
重要なのは、酒気帯び運転は「酔っているかどうか」ではなく、「体内のアルコール濃度が基準値以上かどうか」で判断される点です。主観的に「まったく酔った感覚はなかった」と思っていても、呼気検査で0.15mg以上が検出されれば、犯罪は成立します。
ただし、「酒気帯び運転であること」を認識していなければ故意が否定されるのではないかという点については、最高裁判所昭和52年9月19日の判決が明確に答えています。判決は、アルコールを身体に保有しながら運転することの認識があれば足り、具体的に政令の数値まで認識している必要はないと判示しています。「高い数値が出るとは思わなかった」「この程度なら大丈夫だと思っていた」という主張は故意の成否に影響しません。
取り調べでこうした弁解をした場合、故意が否定される根拠にはなりませんが、一方で「処罰されるほどの飲酒量ではなかった」という趣旨に受け取られ、供述の信用性を損なう可能性があります。取り調べ時の発言内容については、弁護士に相談したうえで臨むことが望ましいです。
2. 「刑事罰なし」の酒気帯びという論点
道路交通法65条1項の禁止規定に違反するすべての飲酒運転が刑事罰の対象となるわけではありません。
呼気0.15mg未満で、かつ酒酔い状態でもない場合は、道路交通法上の禁止規定(65条1項)には違反しますが、刑事罰は科されません。これを実務では「不可罰の酒気帯び」と呼ぶことがあります。
ただし、この「不可罰」は刑事罰がないというだけで、道徳的・社会的に許容されるという意味ではありません。道交法上の禁止規定違反として記録に残り、交通行政上の問題が生じる可能性もあります。
また、0.15mg未満であっても「酔っている」状態であれば、酒酔い運転として処罰される可能性があります。この場合は数値ではなく、言動・歩行状況・運転状況などを総合して酔いの程度が認定されます。
弁護実務上意味を持つのは、測定値が0.15mgに近い場合です。呼気検査の方法・器具の精度・うがいの有無・測定時の状況などを検証することで、真の数値が基準値を下回る可能性を検討できる場合があります。ただし、これはあくまで事実関係の争いであり、争えるケースは限られます。また、ウィドマーク式計算法(体重・飲酒量・経過時間から体内アルコール量を概算する計算式)を用いて、被疑者が申告した飲酒量と検知結果の整合性を検証することも、捜査機関・弁護人双方の実務で活用されています。
3. 酒気帯び運転の量刑相場
実証データが示す全体像
城祐一郎編著『裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断』(立花書房)には、平成19年の道路交通法改正後に宣告された酒気帯び運転の判決64件が収録・分析されています。その内訳は次のとおりです。
- 罰金刑: 7件
- 執行猶予付き懲役(現・拘禁刑): 50件
- 実刑: 7件
件数だけ見ると「ほとんどが執行猶予付き拘禁刑(旧・懲役)」のように映りますが、これには注意が必要です。弁護人が選任されたいわゆる公判事件を収録しているため、略式命令(罰金)で処理された事件は大半が収録されていません。同書も指摘するように、道路交通法違反では略式命令による罰金処理が圧倒的多数を占めます(犯罪白書令和2年版〔2020年〕時点のデータによると、公判請求の約17倍が略式命令)。したがって、実際の処理全体で見れば、初犯・人身事故なし・物損なしの事案は罰金で終わるケースが多数あることに留意してください。
実務における一般的な処理の傾向
事案の内容によって処理は大きく異なりますが、実務の一般的な傾向をまとめると以下のとおりです。
初犯で人身事故を伴わない場合は、略式命令による罰金処理となることが多く、罰金額は25万円から40万円程度が中心となっています。法定刑の上限は50万円ですが、同書の検討対象では50万円の事案は少数です(罰金刑が報告集に少ないという収録上の限界もあります)。
初犯であっても人身事故が生じた場合は、公判請求(正式裁判)される可能性が高まります。公判となった場合の求刑は拘禁刑5月・7月・10月が中心で、執行猶予付き判決となるのが大半です。執行猶予期間は3年または5年が多く設定されます。
再犯や常習的な飲酒運転、同種前科が複数ある場合は、公判請求のうえ実刑リスクが増します。
実刑になるのはどんな場合か
実刑事案を分析すると、次のパターンが見えてきます。
一つ目は、累犯前科がある場合です。前の刑事裁判で懲役刑(現・拘禁刑)の実刑を受け、その刑の執行が終わってから5年以内に再び犯した場合は、刑法上の累犯となり、執行猶予を付けることができません。
二つ目は、執行猶予期間中の犯行です。執行猶予が付いた判決を受けた後、その猶予期間中に再び酒気帯び運転をした場合です。法律上、再度の執行猶予も不可能ではありませんが、同種犯行であれば再度の執行猶予はまず認められません。
三つ目は、同種前科が多数ある場合です。累犯や執行猶予期間中でなくても、同種前科が4件・5件と積み重なっている場合は、交通法規への遵法精神の欠如が重くみられ、実刑と判断される類型があります。
量刑は個別の事案の事情によって異なります。上記はあくまで一般的な傾向であり、ご自身の事案がどのように処理されるかは、具体的な事情を踏まえて弁護士に相談することをお勧めします。
4. 免許への影響(行政処分)
基礎点数と行政処分の内容
酒気帯び運転で検挙されると、刑事処分とは別に、公安委員会による行政処分を受けます。行政処分の基準となる基礎点数は次のとおりです。
| 呼気アルコール濃度 | 基礎点数 | 行政処分(前歴なし・累積点なし) |
|---|---|---|
| 0.15mg以上0.25mg未満 | 13点 | 免許停止(90日) |
| 0.25mg以上 | 25点 | 免許取消(欠格期間1年) |
前歴(過去3年以内の行政処分歴)がある場合や、他の違反点数が加算されている場合は、これより重い処分となります。たとえば、前歴が1回ある場合に13点が加算されると免許取消になる可能性があり、また事故点数が加算されれば欠格期間が延びることもあります。
刑事処分と行政処分は別々に進む
大切なのは、刑事処分(罰金・拘禁刑など)と行政処分(免許停止・取消)は独立した手続きとして、それぞれ別の機関が判断するという点です。刑事事件で不起訴となっても、行政処分が取り消されるわけではありません。また、刑事処分の結論が出る前に、行政処分の手続きが先行することもあります。
意見の聴取(公開聴聞)について
免許取消に相当する処分が予定される場合、公安委員会は「意見の聴取」(行政手続法上の聴聞に相当)の機会を設けます(道路交通法施行令39条)。これは処分を受ける前に自分の事情や意見を述べられる機会です。聴取の期日・場所は文書で通知されます。
この手続きに弁護士が同席できる場合もありますので、行政処分に不服がある場合や軽減の余地を検討したい場合は、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
5. 逮捕されるケース・されないケース
「酒気帯び運転なら逮捕されない」は誤り
「酒酔い運転は逮捕されるが、酒気帯び運転なら逮捕されない」という誤解があります。しかし、これは正確ではありません。
酒気帯び運転でも、次のような場合は現行犯逮捕されることがあります。
- 検問で呼気検査を実施し、基準値超過が確認されたとき
- 交通事故(物損・人身)が発生し、現場に警察官が臨場したとき
- アルコール濃度が著しく高いとき
- 逃走・抵抗など逮捕の必要性がある行動をとったとき
逮捕されるかどうかは、アルコール濃度・事故の有無・前科の有無・逃走の危険性などを総合的に判断した捜査機関の裁量によるところが大きく、「数値がこの程度なら逮捕されない」という絶対的な基準はありません。
後日呼び出し(在宅事件)のケース
事故がなく、現場での逮捕を免れた場合でも、後日、警察または検察から呼び出しを受けることがあります。これが「在宅事件」と呼ばれる扱いで、逮捕されずに捜査が進む形式です。
在宅事件の場合は、任意の取り調べに応じながら日常生活を続けることができます。ただし、捜査が終結すると検察官に事件が送られ(書類送検)、その後の処分が決まります。
在宅事件であっても、取り調べへの対応や供述内容は最終的な処分に影響を与えます。特に、初回の取り調べで供述調書が作成された内容は、後から訂正することが難しくなります。呼び出しを受けた段階で弁護士に相談し、取り調べへの対応方針を決めておくことを強くお勧めします。
6. 弁護活動のポイント
事実を争うケース
事実関係を争うのは、測定値が0.15mgに近く、測定手続に問題がある可能性がある場合に限られます。具体的には、呼気検査前のうがいの有無、検知管の校正・封印状況、測定時刻と飲酒時刻の関係などを検討します。ただし、多くの酒気帯び運転事案では、測定値に争いの余地がないため、情状弁護が中心となります。
情状弁護が中心——具体的に何をするか
情状弁護とは、犯罪事実を認めたうえで、量刑を有利な方向に導くための活動です。酒気帯び運転の情状弁護では、次のような活動が考えられます。
人身事故がある場合は、被害者への誠実な謝罪と損害賠償・示談の締結が最重要です。検察官や裁判官は、被害者との示談が成立しているかどうかを重視します。
飲酒習慣に問題がある場合は、アルコール依存症の専門医療機関への通院・治療を開始し、その事実を立証します。アルコールとの決別に向けた具体的な行動は、「再犯のおそれが低い」という評価につながります。
車両の処分・免許の自主返納といった再犯防止に向けた行動も、情状として考慮される場合があります。
家族による監督誓約書や、職場での地位など、社会的な更生環境が整っていることを示す書面の提出も有効です。
「飲み裏」捜査への対応
検察官は、被疑者が申告した飲酒量と呼気検査の数値に大きなかい離がある場合、飲食店に赴いて実際の飲酒量を確認する「飲み裏」捜査を行うことがあります。これは被疑者供述の信用性を吟味し、検知結果の正確性を確認するための捜査です(城祐一郎ほか編著『検察官から見た交通捜査の要点解説』より)。
飲み裏捜査では、検察官または警察官が当日の飲食店に赴き、注文記録・領収書・店員の記憶などから飲酒の種類・量・時間帯を特定します。そのうえでウィドマーク式計算法により呼気アルコール濃度を試算し、検知結果と照合します。
弁護人の立場からは、この捜査の存在を前提に、依頼者から正確な飲酒量の申告を受け、供述の信用性を維持することが重要です。事実と異なる飲酒量の申告は、後から証拠で覆された場合に心証を大きく損ないます。不正確な申告をしてしまった場合は、早急に弁護士に相談することが先決です。
不起訴・略式起訴の見通し
初犯で人身事故がなく、反省の態度が明確である場合、略式命令(罰金)で終わるケースが多数あります。弁護士が選任され、上述のような情状弁護の活動が功を奏した場合、不起訴(起訴猶予)となる可能性もゼロではありません。ただし、不起訴が保証されるものではなく、結果はあくまで事案の内容と捜査機関・検察官の判断によります。
7. よくある質問(FAQ)
Q: 酒気帯び運転の初犯で前科はつきますか?
刑事処分の内容によって異なります。罰金の略式命令で終わった場合でも、前科(罰金前科)はつきます。不起訴処分(起訴猶予)となった場合は前科にはなりませんが、前歴(捜査機関への照会で判明する記録)は残ります。「前科がつかない」ためには不起訴を目指す弁護活動が重要です。
Q: 罰金と裁判(公判)はどう違いますか?
罰金は「略式命令」という書面上の手続きによって決まります。法廷での公判は開かれず、被疑者が書面で略式手続に同意したうえで、検察官が裁判所に請求します。これに対して、公判請求(正式裁判)は法廷で審理が行われ、拘禁刑の有無や執行猶予の可否が判断されます。検察官は、事案の内容に応じてどちらで処理するかを決定します。
Q: 免許取消になるのはどんな場合ですか?
呼気0.25mg以上のアルコール濃度が検出された場合は、基礎点数が25点となり、前歴や他の違反点数がなくても免許取消(欠格期間1年)となります。また、0.15mg以上0.25mg未満でも、他の違反点数や前歴との合算で基準を超えれば取消になる場合があります。欠格期間は前歴がある場合は延びることがあります。
Q: 翌朝、アルコールが残っているまま運転してしまったのですが…
いわゆる「翌朝の飲酒運転」です。前日の飲酒から時間が経っていても、体内にアルコールが残っていれば酒気帯び運転が成立します。体重・飲酒量・時間経過によっては十分なアルコールが残留することがあり、「十分に寝たから大丈夫」という感覚は危険です。この場合も刑事事件として扱われ、処理の流れは検挙された場合と同じです。早急に弁護士に相談することをお勧めします。
8. まとめ・ご相談のご案内
酒気帯び運転は、「呼気1リットルあたり0.15mg以上」という数値基準が成立要件であり、主観的に「酔っていない」と思っていても犯罪は成立します。刑事罰は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、初犯・人身事故なしの場合は略式命令(罰金)で終わるケースが多い一方、再犯・執行猶予期間中・前科多数の場合は実刑リスクが生じます。行政処分(免許停止・取消)は刑事処分とは別に進行します。
弁護活動において重要なのは、早期の相談です。取り調べへの対応・証拠の確保・被害弁償や示談の進め方・情状立証の準備(断酒証明・アルコール治療の開始・車両処分など)は、いずれも時間が命です。また、初回の取り調べで不利な供述調書が作成されてしまうと、後から覆すことが難しくなります。検挙・逮捕・呼び出しを受けた段階で、できるだけ早く弁護士に相談することが、その後の結果を大きく左右します。
刑事弁護に注力する大宮・レナトス法律事務所では、酒気帯び運転をはじめとする交通犯罪の相談に対応しています。「このまま罰金で終わるのか」「仕事への影響はどのくらいか」「免許取消を避けられないか」という段階からご相談ください。初回相談で方針をお伝えします。
監修: 代表弁護士 横山遼
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