不起訴とは?種類・確率・獲得するための弁護活動を解説

刑事事件の被疑者(ひぎしゃ=犯罪の疑いをかけられている人)となり、「起訴されたらどうなるのか」「前科がついてしまうのか」と大きな不安を感じている方は少なくありません。

ご家族が逮捕・勾留(こうりゅう=裁判官の判断で身柄を拘束される手続き)されている場合も、「何とか不起訴にならないか」と必死に情報を探されていることでしょう。

この記事では、不起訴処分について、以下のポイントをわかりやすく解説します。

  • 不起訴処分の3つの種類と違い
  • 不起訴になる確率(検察統計データ)
  • 不起訴と前科の関係
  • 不起訴を獲得するための具体的な弁護活動

目次

不起訴とは?基本をわかりやすく解説

不起訴(ふきそ)とは、検察官が被疑者を刑事裁判にかけないと判断することをいいます。

不起訴処分を受けた場合、刑事裁判は行われません。そのため、前科がつくこともありません

不起訴処分の意味

刑事事件では、起訴するかどうかの判断権限は検察官だけが持っています。これを起訴独占主義(きそどくせんしゅぎ)といいます(刑事訴訟法247条)。

検察官は、捜査の結果を総合的に判断し、起訴するか不起訴にするかを決定します。不起訴になれば、裁判は行われず、事件はそこで終結します。

起訴猶予処分の判断基準について、検察講義案では次のように説明されています。

起訴猶予処分に付すべきかどうかを決するに当たっては、個々の具体的事件につき諸般の事情を考慮すべきであって、その基準を一様に定めることは困難であるが、要は、刑罰を課さないことが、犯人の社会復帰を著しく容易にするかどうか、また、刑罰を課さなくても、社会秩序の維持を図ることができるかどうか、に重点をおき、刑事政策的配慮の下に決すべきである。

――令和3年版 検察講義案 110頁

起訴と不起訴の違い

起訴と不起訴の違いを整理しましょう。

項目 起訴 不起訴
裁判 行われる 行われない
前科 有罪なら前科がつく つかない
日本の有罪率 99%以上

日本の刑事裁判は有罪率が99%以上です。司法統計(令和6年)によれば、第一審の終局総人員47,558人中、有罪総数は45,529人であり、有罪率は約95.7%に達しています(出典:裁判所 司法統計)。つまり、一度起訴されると有罪判決を受ける可能性が極めて高いということです。

だからこそ、「起訴される前に不起訴を獲得すること」が、刑事弁護において非常に重要な目標となります。


不起訴処分の3つの種類

不起訴処分には、大きく分けて3つの種類があります。それぞれ理由が異なりますので、違いを確認しましょう。

起訴猶予

起訴猶予(きそゆうよ) は、不起訴処分の中で最も多いパターンです。

犯罪の事実は認められるものの、被疑者の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の状況などを考慮して、あえて起訴しないという判断です(刑事訴訟法248条)。

起訴猶予になりやすい要素としては、以下のようなものがあります。

  • 被害者との示談が成立している
  • 被害弁償(ひがいべんしょう=損害を金銭で埋め合わせること)が済んでいる
  • 初犯(はじめての犯罪行為)である
  • 犯行を認め、深く反省している
  • 犯罪の程度が比較的軽い

嫌疑不十分

嫌疑不十分(けんぎふじゅうぶん) は、犯罪の疑いはあるものの、有罪を立証するための証拠が足りない場合の不起訴処分です。

たとえば、以下のようなケースが該当します。

  • 被疑者の供述以外に犯罪を裏付ける証拠が乏しい
  • 目撃者の証言に矛盾がある
  • 客観的な証拠が犯罪事実と結びつかない

弁護士が証拠を精査し、捜査機関の主張に対して反論を行うことで、嫌疑不十分による不起訴を獲得できるケースもあります。

嫌疑なし

嫌疑なし(けんぎなし) は、そもそも犯罪の疑いがないと判断された場合の不起訴処分です。

たとえば、誤認逮捕であったり、真犯人が別にいることが判明した場合などが該当します。3つの不起訴処分の中では、最も少ないケースです。

3種類の比較表

種類 犯罪事実 証拠 主な理由
起訴猶予 あり 十分 情状を考慮して起訴しない
嫌疑不十分 疑いあり 不十分 有罪の立証が困難
嫌疑なし なし そもそも犯罪の疑いがない

いずれの種類であっても、不起訴処分を受ければ前科はつきません


不起訴になる確率は?検察統計データで解説

「不起訴になる確率はどのくらいなのか」は、多くの方が気になるポイントです。検察統計のデータをもとに見ていきましょう。

全体の不起訴率

令和5年(2023年)のデータでは、以下の結果となっています。

  • 起訴: 23万8,145人
  • 不起訴: 50万7,221人
  • 不起訴率: 約68%

(出典:令和6年版 犯罪白書 2-1-1図

つまり、日本の刑事事件の約7割が不起訴になっているのです。この数字は、決してまれなケースではないことを示しています。

罪名別の不起訴率の傾向

不起訴率は、罪名によっても傾向が異なります。

  • 窃盗・暴行・傷害など比較的軽い犯罪:不起訴率が高い傾向
  • 殺人・強盗・性犯罪など重大犯罪:起訴率が高い傾向
  • 被害者のいる犯罪:示談の成立が不起訴率に大きく影響

不起訴率を高める要素

不起訴処分を得るために重要な要素を整理します。

  • 示談の成立: 特に被害者のいる犯罪では最も重要な要素
  • 初犯であること: 前科・前歴がないことはプラスの考慮要素
  • 犯行後の反省・更生の意思: 反省文の作成や再犯防止策の実施
  • 被害が軽い: 結果が重大でないことは起訴猶予の判断に影響
  • 身元引受人の確保: 家族や勤務先による監督体制があること

不起訴になると前科はつかない

不起訴処分と前科の関係は、正確に理解しておくことが大切です。

不起訴と前科の関係

前科(ぜんか) とは、有罪判決を受けた記録のことです。

不起訴処分の場合、刑事裁判そのものが行われません。そのため、前科はつきません

ただし、捜査対象となった記録は前歴(ぜんれき) として捜査機関に残ります。前歴は前科とは異なり、一般に公開されるものではありません。就職などの場面で問題になることは通常ありません。

前科がつくと生活にどう影響するか

もし前科がついた場合には、生活にさまざまな影響が生じる可能性があります。

  • 就職への影響: 履歴書の賞罰欄への記載が必要になる場合があります
  • 資格取得への影響: 一定の前科があると、弁護士・医師・教員など一部の資格が制限されることがあります
  • 海外渡航への影響: 一部の国では、前科があるとビザの取得が困難になることがあります

だからこそ、不起訴処分を獲得し、前科を防ぐことが重要なのです。


不起訴を獲得するための弁護活動

不起訴処分を獲得するために、弁護士はさまざまな弁護活動を行います。具体的に見ていきましょう。

被害者との示談交渉

被害者のいる犯罪では、示談の成立が不起訴獲得において非常に重要な要素です。

弁護士は、被害者に対して加害者の謝罪の意思を伝え、示談金の交渉を行います。特に、宥恕(ゆうじょ=被害者が処罰を求めない意思表示) 付きの示談書を取得できれば、不起訴の可能性が大きく高まります。

検察官への意見書提出

弁護士は、被疑者に有利な事情をまとめた意見書を検察官に提出します。

意見書には、以下のような内容を盛り込みます。

  • 示談が成立している事実
  • 被疑者の反省の態度
  • 再犯防止のための具体的な取り組み
  • 被疑者の生活環境や社会復帰の見通し

処分が決定される前のタイミングで提出することが重要です。勾留期間中に弁護士がスピーディーに動くことが求められます。

身元引受人の確保・環境調整

検察官に「この人は社会復帰の基盤がしっかりしている」と示すことも大切です。

  • 家族による身元引受書: 家族が被疑者を監督する意思を書面で示す
  • 職場の身元引受書: 勤務先が復職を受け入れる旨の書面
  • 環境調整: カウンセリングの受診や依存症治療プログラムへの参加など、再犯を防ぐための具体的な取り組み

これらの書面を弁護士が準備し、意見書とあわせて検察官に提出します。

証拠の検討・反論(嫌疑不十分を目指す場合)

犯行を否認している場合や、冤罪(えんざい=無実の人が犯人とされること)の疑いがある場合は、嫌疑不十分による不起訴を目指します。

  • 被疑者本人からの聴き取り: 弁護士は起訴前の段階では捜査書類(供述調書など)にアクセスできません。そのため、取調べでどのようなやり取りがあったかは、被疑者ご本人の記憶が頼りです。取調べの内容をしっかり覚えておくことが非常に大切です
  • 被疑者本人の記憶に基づいて、客観的な証拠と供述内容の矛盾を検討する
  • 弁護士による独自の証拠収集を行う

弁護士が被疑者から丁寧に事情を聴き取り、捜査機関の主張に対して反論を行うことで、不起訴を獲得できるケースがあります。


よくある質問(FAQ)

Q1: 不起訴処分になったら前科はつきますか?

A: つきません。不起訴処分の場合、刑事裁判自体が行われないため前科はつきません。ただし、捜査対象となった記録(前歴)は捜査機関に残ります。前歴は一般に公開されるものではなく、就職などの場面で問題になることは通常ありません。

Q2: 不起訴になる確率はどのくらいですか?

A: 検察統計によると、日本の刑事事件の約68%が不起訴処分となっています(令和5年データ、出典:令和6年版 犯罪白書)。ただし、罪名や事件の内容によって大きく異なります。示談の成立、初犯であること、反省の態度などが不起訴率を高める要素となります。

Q3: 起訴猶予と嫌疑不十分の違いは何ですか?

A: 起訴猶予は「犯罪事実はあるが、情状を考慮して起訴しない」という判断です。嫌疑不十分は「犯罪の疑いはあるが、有罪を立証する証拠が足りない」という判断です。どちらも不起訴処分であり、前科はつきません。

Q4: 不起訴処分に納得がいかない場合(被害者側)はどうすればよいですか?

A: 被害者やその遺族は、検察審査会(けんさつしんさかい) に審査を申し立てることができます。検察審査会が「起訴すべき(起訴議決)」を2回行った場合、強制起訴(指定弁護士による起訴)がなされます。手続きの詳細については、弁護士にご相談ください。

Q5: 不起訴処分の通知はどのように届きますか?

A: 被疑者が不起訴処分の告知を請求した場合、検察官から速やかに通知されます(刑事訴訟法259条)。弁護士が付いている場合は、弁護士を通じて結果を確認できます。在宅事件(たいざいじけん=逮捕されず自宅にいたまま捜査が進む事件)の場合は、処分結果の連絡がないまま時間が経過することもありますので、弁護士に確認を依頼されることをおすすめします。


まとめ

この記事のポイントを整理します。

  • 不起訴処分を受ければ前科はつかない — 裁判そのものが行われません
  • 不起訴の種類は3つ — 起訴猶予・嫌疑不十分・嫌疑なし
  • 日本の刑事事件の約68%が不起訴 — 約7割が不起訴になっています(令和5年データ)
  • 示談の成立が不起訴獲得の鍵 — 特に被害者のいる犯罪では最も重要
  • 弁護士による弁護活動が不起訴獲得の可能性を高める — 示談交渉・意見書提出・環境調整

不起訴処分を獲得するためには、早い段階で弁護士に相談することが大切です。勾留期間中は時間が限られており、その中で示談交渉や意見書の準備を進める必要があります。

レナトス法律事務所では、不起訴処分の獲得に向けた弁護活動に注力しています。逮捕・勾留されている方やそのご家族は、お早めにご相談ください。止まってしまった時間を、前に進めるお手伝いをさせてください。


この記事は2026年3月時点の法令に基づき、一般的な法律知識の提供を目的としたものです。個別の事案についての法的アドバイスではありません。具体的なお悩みについては、弁護士にご相談ください。

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